営業の最前線では、日々、顧客との対話を通じて価値を届け、ビジネスを拡大するための努力が続けられています。その重要な場面で、営業担当者の言葉を補い、提案内容を具体的に示すのが「提案書」や「サービス資料」です。これらは、商談を成功に導くための強力な「武器」となる可能性を秘めています。
しかし、現場からはこんな声が聞こえてくることも少なくありません。「時間をかけて資料を作ったけれど、どうも顧客に響いていない気がする」「デザインに自信がなくて、見せるのが少し恥ずかしい」「結局、資料は補助的なもので、口頭での説明がほとんどになってしまう…」。
もし、貴社の提案書やサービス資料が、その本来持つべき力を十分に発揮できていないとしたら、それは目に見えない大きな「機会損失」を生んでいる可能性があります。顧客の心を掴み、営業担当者が自信を持って提示でき、そして着実に成果へと繋がる。そんな「伝わる」資料とは、一体どのようなものなのでしょうか。
なぜ今、提案書・サービス資料の「デザイン」が重要なのか?
「デザイン」と聞くと、単に「見た目をきれいにすること」と捉えられがちですが、提案書やサービス資料におけるデザインの役割は、それだけにとどまりません。ビジネスの成果に直結する、いくつかの重要な理由があります。
資料は「会社の顔」:第一印象を決める力
顧客が提案書やサービス資料を最初に手に取った瞬間、それは貴社の「顔」として認識されます。情報が溢れる現代において、人は無意識のうちに、その資料が「読むに値するかどうか」を一瞬で判断しています。
整理されておらず、雑然とした印象の資料は、それだけで内容を読む前に「信頼できない」「プロフェッショナルではない」というネガティブな印象を与えかねません。逆に、洗練されたデザインの資料は、企業としての信頼性や専門性を視覚的に伝え、顧客の期待感を高める効果があります。
「わかる」から「記憶に残る」へ:情報伝達効率の向上
人間の脳は、文字情報よりも視覚情報の方が早く、そして深く理解し、記憶に留めやすいと言われています。複雑なサービス内容や、データに基づいた提案も、図やグラフ、適切なレイアウトといったデザインの力を借りることで、格段に分かりやすく伝えることができます。
分かりやすい資料は、商談中の理解を助けるだけでなく、商談後に顧客の手元に残った際にも、内容を正確に思い出させ、他社との比較検討において有利に働く可能性があります。
営業担当者の「武器」となる:モチベーションと自信の向上
営業担当者にとって、自信を持って顧客に提示できる資料は、強力な「武器」となります。分かりやすく、見栄えの良い資料は、それだけで営業担当者の説明にも熱が入り、自信を持って商談に臨むことができます。
資料が顧客の理解をスムーズに促せば、商談の進行も円滑になり、より本質的な対話に時間を割くことができます。顧客からの「分かりやすいですね」といったポジティブな反応は、営業担当者のモチベーションをさらに高める好循環を生み出します。
属人化からの脱却:標準化されたメッセージの発信
営業担当者ごとに資料の作り方やデザインが異なると、企業として伝えたいメッセージにばらつきが生じたり、資料作成のスキルによって提案の質が変わってしまったりする可能性があります。
デザインが統一されたテンプレートを用いることで、誰が資料を作成・使用しても、一定レベルの品質を保ち、企業としての一貫したブランドイメージとメッセージを発信することが可能になります。これは、営業部門全体の底上げにも繋がります。
ただ「きれい」なだけじゃない!「伝わる」デザイン 5つの原則
では、具体的にどのようなデザインが「伝わる」のでしょうか。それは、単に見た目が美しいだけでなく、情報を効果的に伝え、読み手の行動を促すための「コミュニケーション設計」に基づいている必要があります。ここでは、その核となる5つの原則を見ていきましょう。
原則1:誰に、何を伝えたいか?「ターゲット明確化」
デザインを始める前に、最も重要なのは「誰に、何を伝えたいか」を明確にすることです。
- 読み手の属性:役職、部署、業界、ITリテラシー、抱えているであろう課題などを具体的に想定する
- 専門用語の調整:相手の知識レベルに合わせて、専門用語を使いすぎない、あるいは注釈を入れるなどの配慮
- 響く言葉の選択:相手の関心事や課題に寄り添い、メリットが具体的にイメージできる言葉を選ぶ
- 資料の目的設定:この資料を通じて相手にどうなってほしいのか(情報理解、課題認識、興味喚起、比較検討、意思決定など)を明確にする
ターゲットと目的が明確であれば、伝えるべき情報の取捨選択や、デザインの方向性も自ずと定まってきます。
原則2:情報は整理して、道筋を示す「構造化」
どれほど有益な情報でも、整理されていなければ読み手は混乱し、途中で読むのをやめてしまうかもしれません。情報を分かりやすく構造化し、スムーズな理解を促す工夫が必要です。
- 結論ファースト:忙しい相手に配慮し、最も伝えたい結論や要点を最初に提示する
- 論理的な展開:PREP法(Point:結論 → Reason:理由 → Example:具体例 → Point:結論の再強調)や、SDS法(Summary:概要 → Details:詳細 → Summary:まとめ)などのフレームワークを活用し、説得力のある流れを作る
- ストーリーテリング:単なる情報の羅列ではなく、課題発見から解決、そして未来への期待といった物語性を持たせることで、共感を呼び、記憶に残りやすくする
- ナビゲーション:目次、ページ番号、各セクションの見出しなどを効果的に配置し、読み手が全体像を把握し、今どの部分を読んでいるのかを常に意識できるようにする
情報を構造化することは、思考を整理し、抜け漏れを防ぐ上でも役立ちます。
原則3:一目で理解を促す「視覚的要素の最適化」
「百聞は一見に如かず」というように、視覚的な要素は情報伝達において非常に強力なツールです。文字情報だけでなく、図解や画像などを効果的に活用しましょう。
文字情報:読みやすさへの徹底的なこだわり
資料の基本となる文字情報は、読みやすさが命です。
- フォント選択:奇抜なフォントは避け、可読性の高いゴシック体や明朝体を選ぶ(本文はゴシック体が見やすい場合が多い)
- 文字サイズ:小さすぎると読みにくく、大きすぎると間延びする。本文、見出し、キャプションなど、役割に応じた適切なサイズ設定
- 行間・文字間:行間(行送り)や文字と文字の間隔(字送り・カーニング)を適切に調整するだけで、驚くほど読みやすさが向上する
- 強調表現:箇条書きでポイントを整理したり、太字や色文字で重要なキーワードを目立たせたりする(ただし、強調の使いすぎは逆効果になるため注意)
- 1文の長さ:長すぎる文章は読みにくいため、適度な長さで句読点を打ち、改行も効果的に使う
図解・グラフ:複雑な情報をシンプルに
文章だけでは説明が難しい関係性、プロセス、数値データなどは、図解やグラフで示すことで、直感的な理解を助けます。
- 図解の活用:組織図、相関図、フローチャート、ベン図などを使い、物事の関係性や構造を視覚的に表現する
- 適切なグラフ選択:伝えたい内容に応じて、最も適したグラフ形式を選ぶ(例:割合→円グラフ、比較→棒グラフ、推移→折れ線グラフ、分布→散布図)
- シンプルデザイン:グラフ内の要素(タイトル、軸ラベル、凡例、データラベルなど)は必要最低限に留め、情報を詰め込みすぎず、シンプルで見やすいデザインを心がける
- 色分け:項目ごとに色分けする場合は、色の違いが明確に分かり、かつ全体の色数を抑える
画像・イラスト:イメージを喚起し、感情に訴える
画像やイラストは、具体的なイメージを伝えたり、資料全体の雰囲気を和らげたり、読み手の感情に訴えかけたりする効果があります。
- イメージの具体化:抽象的なサービスやコンセプトを、具体的な写真やイラストで表現する
- 感情へのアピール:顧客の成功事例を笑顔の写真で示す、課題を象徴的なイラストで表現するなど、感情的な共感を生む使い方
- 素材の品質:解像度の低い画像や、素人っぽいイラストは資料全体の質を下げてしまうため、高品質な素材を選ぶことが重要
- 著作権・肖像権:フリー素材サイトを利用する場合も、利用規約をよく確認し、著作権や肖像権に配慮する。可能であれば、オリジナルの写真やイラストを使用すると独自性が出せる
- 配置とサイズ:文章との関連性が分かるように配置し、適切なサイズで挿入する。文章の邪魔にならないように配慮も必要
原則4:印象を左右し、情報を整理する「配色」
色は、資料全体の印象を大きく左右するだけでなく、情報の見やすさや、読み手の心理にも影響を与えます。
- ブランドカラーの活用:企業のロゴやウェブサイトで使用しているブランドカラーを基調とすることで、企業イメージの統一感を出す
- 色数の制限:使用する色は、ベースカラー(背景など)、メインカラー(主要な要素)、アクセントカラー(強調したい箇所)の3~4色程度に絞ると、まとまりのある洗練された印象になる
- 役割の明確化:それぞれの色に意味(例:赤は注意、青は信頼感)を持たせ、一貫して使用することで、情報の理解を助ける
- 可読性の確保:背景色と文字色のコントラスト(明度差)を十分に確保し、文字が読みにくくならないように注意する(特に淡い色同士、濃い色同士の組み合わせは避ける)
- 色の心理的効果:色が持つ一般的なイメージ(例:緑は安心感、オレンジは活気)も考慮に入れ、伝えたいメッセージに合わせて色を選ぶ
原則5:見やすさと洗練性を生む「レイアウトと余白」
各要素(文字、図、画像など)をどのように配置するか(レイアウト)も、資料の見やすさや伝わりやすさに大きく影響します。そして、レイアウトにおいて非常に重要なのが「余白」の扱いです。
- 視線誘導:人間の視線は、左上から右下へ(Zの法則)、あるいは左上から下に読み進み、興味のある箇所で右へ移動する(Fの法則)傾向がある。これを意識して重要な情報を配置する
- グルーピング:関連性の高い情報は近くにまとめ(近接)、関連性の低い情報は離すことで、情報の構造を視覚的に分かりやすくする
- 整列:要素の左端、右端、中央などを揃えることで、整然とした安定感のある印象を与える
- 余白の重要性:情報を詰め込みすぎず、要素の周囲やページ全体に適切な余白(ホワイトスペース)を設けることが重要。余白は、情報を際立たせ、視線の流れをスムーズにし、圧迫感をなくし、洗練された印象を与える効果がある。「余白はデザインの一部」と考える
- 一貫性:ページごとにレイアウトのルール(マージン、見出しの位置など)を統一することで、安定感と読みやすさを確保する
実践!「伝わる」資料への改善ステップ
これらの原則を踏まえ、実際に提案書やサービス資料を改善していくための具体的なステップを見ていきましょう。
Step 1:現状を知る「既存資料の分析と課題特定」
まずは、現在使用している資料がどのような状態にあるのかを客観的に把握することから始めます。
- 資料の棚卸し:どのような資料が存在し、それぞれがどのような目的で使われているかリストアップ
- 客観的な評価:デザインの原則に照らし合わせ、「良い点」「改善が必要な点」を洗い出す(自己評価だけでなく、複数の視点から評価することが望ましい)
- 営業担当者へのヒアリング:実際に資料を使っている営業担当者から、「使いにくい点」「説明しにくい箇所」「顧客からの反応(ポジティブ・ネガティブ)」「追加してほしい情報」などを具体的に聞き取る
- 競合比較:可能であれば、競合他社がどのような資料を使っているかを調査し、自社の資料の強み・弱みを相対的に把握する
Step 2:ゴールを描く「目的とターゲットの再定義」
現状分析で見えてきた課題を踏まえ、改めて「この資料で何を達成したいのか」「誰に届けたいのか」を明確にします。
- 目的の具体化:単に「分かりやすくする」だけでなく、「〇〇という課題を持つ顧客に、△△のメリットを理解してもらい、□□という次のアクションに繋げる」のように、具体的なゴールを設定する
- ターゲット像の深化:既存顧客の分析やペルソナ設定などを通じて、ターゲット像をより具体的にイメージできるようにする
- 情報プライオリティ:設定した目的とターゲットにとって、最も重要度の高い情報は何かを考え、伝えるべき情報の優先順位をつける(全てを盛り込もうとしない)
Step 3:設計図を作る「構成案(ストーリー)の作成」
目的とターゲット、そして伝えるべき情報が決まったら、それらをどのような順番と流れで提示するか、資料全体の設計図(構成案)を作成します。
- 全体の流れ(ストーリーライン):読み手の興味を引きつけ、理解を深め、最終的に納得・共感してもらえるような、論理的で説得力のあるストーリーを組み立てる(例:「共感(課題提起)」→「問題特定(原因分析)」→「解決策提示(自社サービス)」→「効果・信頼性(実績・事例)」→「行動喚起(ネクストアクション)」)
- ページ構成:全体の流れを具体的なページに落とし込み、各ページで伝えるべきメッセージ(キーメッセージ)と、そのために必要な要素(テキスト、図、グラフ、画像など)を洗い出す
- 情報の精査:構成案を作成する過程で、情報が重複していないか、話が脱線していないか、論理の飛躍がないかなどをチェックし、情報を整理・精査する
この構成案が、後のデザイン作業の土台となります。
Step 4:土台を固める「デザインテンプレートの整備」
毎回ゼロから資料を作成するのは非効率であり、デザインの質にもばらつきが出やすくなります。そこで、統一されたデザインテンプレートを作成・活用することが非常に有効です。
- ルール策定:使用するフォントの種類とサイズ、ブランドカラーの規定、ロゴの配置場所とサイズ、見出しや箇条書きのスタイル、余白の取り方など、デザインの基本ルールを定める
- テンプレート作成:定めたルールに基づき、表紙、目次、中ページ(数パターン)、裏表紙などの基本的なページレイアウトをテンプレートとして作成する(プレゼンテーションソフトのマスター機能などを活用)
- ガイドライン化:作成したテンプレートの使い方やデザインルールをまとめた簡単なガイドラインを作成し、社内で共有することで、誰でも一定品質の資料を作成できるようになる
テンプレートは、資料作成の効率化、品質の標準化、そしてブランドイメージの統一に大きく貢献します。
Step 5:進化し続ける「継続的な改善とフィードバック」
資料は一度作ったら終わりではありません。ビジネス環境や顧客のニーズは常に変化するため、資料もそれに合わせて進化させていく必要があります。
- 効果測定:作成・改善した資料を実際に営業現場で使用してもらい、商談での顧客の反応や、成約率の変化などを観察・記録する
- フィードバック収集:営業担当者から定期的に使用感や改善点のフィードバックをもらう仕組みを作る
- 定期的な見直し:収集したフィードバックや市場の変化を踏まえ、定期的に(例:半年に一度、年に一度など)資料の内容やデザインを見直し、改善していく
- バージョン管理:資料を改訂した場合は、版数管理を徹底し、常に最新版が利用されるように周知する
継続的な改善サイクルを回すことで、資料は常に「使える武器」であり続けることができます。
デザイン改善がもたらす、確かなビジネス効果
提案書やサービス資料のデザイン改善は、決して単なる「お化粧直し」ではありません。それは、ビジネスの成果に直結する、具体的で確かな効果をもたらします。
最も期待される効果は、商談の質の向上と成約率のアップです。分かりやすく、説得力のある資料は、顧客の理解を深め、疑問や不安を解消し、意思決定をスムーズに後押しします。結果として、商談時間の短縮や、より確度の高い受注に繋がる可能性が高まります。
また、質の高い資料は、顧客満足度の向上にも貢献します。自社の課題に対する的確な提案が分かりやすく示されていれば、顧客は「この会社はよく理解してくれている」「信頼できるパートナーだ」と感じ、長期的な関係構築の礎となります。
営業担当者にとっても、メリットは計り知れません。自信を持って提案できる資料は、精神的な支えとなり、モチベーションを高めます。資料作成にかかる時間が短縮されれば、顧客との対話や、他のコア業務により多くの時間を割くことができるようになります。
そして、洗練されたデザインの資料は、個々の商談の成果だけでなく、企業全体のブランドイメージ向上にも貢献します。資料を通じて一貫したプロフェッショナルな姿勢を示すことで、「しっかりした会社だ」「細部までこだわっている」という印象を与え、企業の信頼性や価値を高めることに繋がるのです。
「伝わる」デザインは、未来への投資
提案書やサービス資料は、単なる説明のための紙ではありません。それは、企業の考えや価値を顧客に届け、心を動かし、ビジネスを前進させるための、極めて重要なコミュニケーションツールです。
その「伝わる力」を最大限に引き出すために、「デザイン」の視点は不可欠です。情報を整理し、視覚的に分かりやすく表現し、読み手の感情に訴えかける。こうしたデザインの力は、営業活動の成果を大きく左右します。
提案書・サービス資料の「デザイン改善」は、目先のコストではなく、売上向上、顧客満足度向上、業務効率化、そしてブランド価値向上に繋がる、未来への戦略的な「投資」であると捉えるべきです。
まずは、今お使いの資料を改めて見直し、「もっと伝わるようにするにはどうすれば良いか?」と考えてみることから始めてはいかがでしょうか。この記事でご紹介した原則やステップが、そのヒントとなれば幸いです。
もし、「自社だけでは何から手をつければいいか分からない」「より戦略的で、プロフェッショナルな資料を作成したい」とお考えであれば、デザインの専門家の知見を借りることも、有効な選択肢の一つです。客観的な視点と専門的なスキルによって、自社では気づかなかった課題の発見や、より効果的な改善策の提案が期待できます。
営業担当者が自信を持って顧客に提示でき、ビジネスの成果に貢献する「武器」としての資料を手に入れること。それは、貴社の未来をより明るく照らすための一歩となるはずです。
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