企業のウェブサイトを運営されている経営者様、マーケティング担当者様、ウェブサイト運営責任者の皆様。自社のウェブサイトを見直す際、ナビゲーションメニューの表記について深く考えたことはありますでしょうか。「会社案内」「事業内容」「製品情報」「お問い合わせ」など、定番の項目が並ぶ中で、特に英語表記を用いる際に「Service」と「Services」のどちらを使うべきか、迷われた経験はないでしょうか。
一見すると些細な違いに見えるかもしれません。「s」が付くか付かないか、単数形か複数形かだけの違いです。しかし、この細かな表記の違いが、実は企業の姿勢や提供価値に対するメッセージ性を持ち、ユーザー体験にも影響を与える可能性があるとしたら、どうでしょうか。
多くのウェブサイト制作の現場では、提供する役務が複数ある場合は「Services」、単一もしくは包括的な概念を指す場合は「Service」を使うのが一般的、という程度の認識で使い分けられていることが多いかもしれません。しかし、それで本当に十分なのでしょうか。
今回は、プロの視点から、企業の公式サイトにおける「Service」と「Services」の使い分けについて、その背景にある意味合いや、どちらを選択することがより効果的なのかを深掘りしていきます。ウェブサイトという企業の顔であり、顧客との重要な接点において、言葉一つひとつが持つ力を最大限に引き出すヒントとなれば幸いです。
「Service」と「Services」:基本的な意味の違い
まず、基本に立ち返りましょう。英語における「Service」と「Services」の違いは、単数形か複数形か、という点にあります。
「Service」(単数形)が持つ意味合い
- 特定の、単一の役務や業務:「Webサイト保守サービス」など、具体的な一つのサービスメニューを指す場合
- 概念としての奉仕や貢献、おもてなし:「Customer Service」(顧客サービス、顧客対応)のように、行為そのものや品質、精神性を指す場合
- 公共事業や設備:「Gas Service」(ガス事業)、「Bus Service」(バス運行)など、社会的なインフラや機能を指す場合
このように、「Service」は、具体的な一つのメニューを指すこともありますが、より抽象的で、品質や概念、あるいは特定の機能全体を包括的に示すニュアンスで使われることも多いのが特徴です。
「Services」(複数形)が持つ意味合い
- 複数の、多岐にわたる役務や業務の総称:「Webデザイン」「システム開発」「マーケティング支援」など、企業が提供する具体的なサービスメニューが複数ある場合、それらをまとめて示す際に使われます
- 提供される業務内容の一覧:ウェブサイトのナビゲーションメニューで「Services」とあれば、ユーザーは「ここをクリックすれば、この会社が提供している具体的な業務内容の一覧が見られる」と直感的に理解します
一般的に、企業のウェブサイトのグローバルナビゲーション(主要なメニュー)で「事業内容」や「提供サービス」に相当する項目を英語で表記する場合、多くの場合「Services」が用いられるのは、この「複数の具体的な業務内容」を示す意味合いが最もユーザーに伝わりやすいからです。
ウェブサイトのナビゲーションにおける使い分けのポイント
基本的な意味の違いを踏まえた上で、実際のウェブサイト制作・運営において、どのように使い分けるのがより適切で、効果的なのでしょうか。いくつかの視点から考えてみましょう。
1. 提供する役務の数と性質
最も基本的な判断基準です。
- 複数の独立したサービスを提供している場合:「Web制作」「アプリ開発」「保守・運用」など、明確に区別されるサービスラインナップがある企業の場合、ナビゲーションには「Services」を使うのが自然です:ユーザーに対して、提供価値の幅広さや多様性を明確に伝えることができます
- 単一のコアサービスに特化している場合:例えば、「特定の業界向け経営コンサルティング」のみを提供しているような企業であれば、「Service」という表記も考えられます:ただし、その場合でも、将来的な事業拡大の可能性や、ユーザーの一般的な期待値を考慮すると、「Services」としておき、詳細ページでその中身を説明する方が誤解が少ないかもしれません
- サービスの「質」や「概念」を強調したい場合:「Our Service」といった表現で、企業理念や顧客への姿勢を示すセクション名として用いるのは効果的です:これはナビゲーションメニューのラベルというよりは、コンテンツ内の見出しなどに適しています
2. ターゲットユーザーの期待値と理解度
ウェブサイトを訪れるユーザーが、ナビゲーションメニューに何を期待しているかを考慮することも重要です。
- 一般的なユーザーの行動:多くのユーザーは、企業が「何をしてくれるのか」を知りたいとき、まず「Services」やそれに類する言葉(日本語なら「事業内容」「サービス」など)を探します:この期待に応えるためには、提供する役務が複数ある場合は「Services」とするのが最も分かりやすいでしょう
- 業界の慣習:特定の業界、特にITやコンサルティングなどの分野では、「Services」が「提供業務一覧」を指す言葉として広く定着しています:業界標準から逸脱した表記は、ユーザーに無用な混乱を与える可能性があります
3. 企業のブランドイメージとメッセージ
単なる文法上の正しさだけでなく、企業としてどのようなメッセージを発信したいか、という視点も大切です。
- 多様性と専門性のアピール:「Services」という表記は、多様なニーズに応えられる企業であること、幅広い専門知識や技術を持っていることを示唆します
- シンプルさと焦点の明確化:あえて「Service」を選ぶ(ただし、提供内容が本当に単一である場合に限る)ことで、特定の分野における深い専門性や、一点集中の強みをアピールできる可能性もあります:しかし、これはユーザーの誤解を招くリスクも伴うため、慎重な判断が必要です
- 細部へのこだわり:「Service」と「Services」の適切な使い分けは、企業がコミュニケーションの細部にまで配慮していること、丁寧な仕事をする姿勢の表れと受け取られることもあります:逆に、提供実態と異なる表記(例:複数サービスがあるのに「Service」)は、詰めの甘さや、場合によっては英語力への疑問を感じさせる可能性すらあります
中小零細企業が陥りがちな「Service」表記の罠
多くの中小零細企業様のウェブサイトを拝見していると、複数の事業やサービスを展開しているにも関わらず、ナビゲーションメニューで「Service」(単数形)が使われているケースに遭遇することがあります。これはなぜでしょうか。
考えられる理由としては、
- 単純な英語の知識不足や誤解:単数形と複数形の違いを意識していなかった
- ウェブサイト制作者への指示不足:デザイナーや開発者にお任せで作ってもらった結果、意図せずそうなっていた
- 「サービス」という日本語の感覚の引きずり:日本語では「サービス」という言葉で、単数・複数の区別なく使うことが多い(例:「弊社では様々なサービスを提供しています」)ため、その感覚で英語表記を決めてしまった
- デザイン上の都合:単語が短い方が収まりが良い、といった視覚的な理由
などが挙げられます。
しかし、これらの理由で「Service」表記が使われている場合、本来伝えたいはずの事業の幅広さや提供価値が、ユーザーに正しく伝わっていない可能性があります。ユーザーは「Service」というメニューを見て、「この会社は一つのことしかやっていないのかな?」あるいは「顧客対応に関するページかな?」と誤解してしまうかもしれません。結果として、本来であれば関心を持ったはずの潜在顧客が、情報を見つけられずに離脱してしまうリスクも考えられます。
「Services」を選択するメリットの再確認
ここまで見てきたように、特に複数の事業や役務を提供する企業にとって、ウェブサイトのナビゲーションで「Services」を採用することには、多くのメリットがあります。
- 明瞭性:ユーザーに対して、提供している業務内容が複数あることを一目で伝えられる
- 期待値との一致:ユーザーが「事業内容一覧」を探す際の一般的な期待に応えられる
- 網羅性の表現:企業のケイパビリティ(できること)の幅広さを示唆できる
- プロフェッショナリズム:言語的な正確さを含め、細部まで配慮が行き届いている印象を与えられる
- 機会損失の防止:ユーザーが求める情報(具体的なサービス内容)へスムーズに誘導し、離脱を防ぐ
もちろん、デザイン全体のトーン&マナーや、他のナビゲーション項目とのバランスも考慮する必要はありますが、機能性と情報伝達の正確性という観点からは、「Services」が優れている場面が多いと言えるでしょう。
「Service」が活きる場面:ナビゲーション以外での活用
では、「Service」(単数形)はウェブサイト上では不要なのでしょうか。そんなことはありません。ナビゲーションメニューの主要項目としてではなく、別の文脈で効果的に活用できる場面があります。
例えば、
- 顧客サポートに関するページ:「Customer Service」や「Support Service」といったページタイトルやセクション名
- 企業の理念や品質方針を示すページ:「Our Service Philosophy」や「Commitment to Service」といった見出し
- 特定の主力サービスを紹介する詳細ページ:「〇〇〇〇 Service」のように、そのサービス名を冠したページタイトル
これらの場面では、「Service」が持つ「概念」「品質」「特定の単一機能」といったニュアンスが活きてきます。重要なのは、文脈に応じて単数形と複数形を的確に使い分ける意識を持つことです。
ウェブサイトは「言葉」でできている:コピーライティングの重要性
今回の「Service」と「Services」の議論は、ウェブサイトにおける言葉選びの重要性を象徴しています。ウェブサイトは、デザインや機能だけでなく、「言葉」によってユーザーとコミュニケーションをとるメディアです。
ナビゲーションのラベル一つ、見出し一つ、説明文の一文一文が、企業のブランドイメージを形成し、ユーザーの行動を左右します。
特に、中小零細企業様にとっては、限られたリソースの中で最大限の効果を発揮するために、ウェブサイト上のあらゆる要素を戦略的に設計する必要があります。
デザイン制作を発注される際も、単に見た目の美しさだけでなく、
- ターゲット顧客に的確にメッセージが伝わるか
- 企業の強みや提供価値が分かりやすく表現されているか
- ユーザーが迷わず目的の情報にたどり着けるか
といった、コミュニケーション戦略の視点を持つことが不可欠です。そして、その核となるのが、コピーライティング、すなわち「言葉の力」なのです。
「Service」か「Services」か。この小さな問いは、自社のウェブサイトが、そしてコミュニケーション全体が、本当に届けたい相手に、届けたいメッセージを正しく伝えられているか、という大きな問いへと繋がっていきます。
細部へのこだわりが、信頼と成果を生む
企業のウェブサイトにおける「Service」と「Services」の使い分け。多くの場合、複数の具体的な役務を提供している企業にとっては、ナビゲーションメニューには「Services」を用いるのが、ユーザーにとって最も分かりやすく、企業の提供価値を正確に伝える上で効果的です。
一方で、「Service」は、顧客対応の品質や概念、あるいは特定の単一サービスを指す文脈で有効活用できます。
重要なのは、単数形か複数形かという表面的な違いだけでなく、
- 自社が提供している価値は何か
- それをユーザーにどう伝えたいか
- ユーザーはどのような情報を期待しているか
を深く考え、最も適切で効果的な言葉を選択するという姿勢です。
ウェブサイト上の言葉一つひとつにまで気を配ること。それは、顧客に対する誠実さの表れであり、プロフェッショナルとしての信頼感を醸成し、ひいてはビジネスの成果へと繋がる重要な要素です。
ぜひこの機会に、自社のウェブサイトのナビゲーション表記や、コンテンツ内の言葉遣いを改めて見直してみてはいかがでしょうか。もしかしたら、思わぬ改善点や、新たなコミュニケーションのヒントが見つかるかもしれません。
ウェブサイト制作やリニューアルをご検討の際は、見た目のデザインだけでなく、こうした言葉の細部にまでこだわり、マーケティング効果を最大化する視点を持ったパートナーを選ぶことをお勧めします。
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