デザインは「コスト」ではなく「戦略的投資」です

御社では「デザイン」をどのように捉えていますか?

単なる「見た目を飾るもの」「あれば良いけれど、なくても困らないもの」「よくわからないけど費用がかかるもの…」もし、このように考えているとしたら、それは大きな機会損失かもしれません。

実は、デザインは企業の利益率を左右する重要な経営資源であり、戦略的な「投資」なのです。
なぜなら、顧客が商品やサービスを選ぶとき、無意識のうちに「見た目」から多くの情報を得て判断しているからです。

この記事では、デザインがいかにして企業の「儲け」に繋がるのか、その具体的な法則と、中小零細企業が実践できるポイントを、専門的な視点から分かりやすく解説していきます。
「うちみたいな小さな会社には関係ない」
「デザインにお金をかける余裕はない」
と思っている経営者の方、マーケティング担当者の方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。

多くの企業経営者や担当者の方が、日々の業務に追われ、デザインの優先順位を後回しにしてしまう気持ちもよく分かります。特に中小零細企業においては、限られた予算と人員の中で、目の前の売上を確保することが最優先課題となるのは当然のことでしょう。

しかし、少し視点を変えてみてください。その「目の前の売上」に、デザインが貢献できるとしたらどうでしょうか?
例えば、分かりにくい案内表示のせいで、せっかく興味を持ってくれたお客様が離脱してしまっているかもしれません。あるいは、競合他社よりも魅力的な商品を持っているのに、その価値が伝わるパッケージになっていないために、選んでもらえていないのかもしれません。

デザインを見直すことは、単に費用をかけることではなく、これまで取りこぼしていたかもしれない利益を拾い上げ、さらなる成長の種を蒔く行為なのです。
この記事を通して、「デザイン」という言葉に対する認識をアップデートし、経営戦略の一部として捉え直すきっかけを提供できればと考えています。

なぜ「見た目」が利益に繋がるのか?デザインの持つ力

「見た目が良い」だけで、本当に利益が上がるのでしょうか?経験則として理解はできても、その具体的なメカニズムを説明するのは難しいかもしれません。しかし、デザインが利益創出に貢献する理由は、決して感覚的なものだけではありません。心理学的な側面や、マーケティング戦略上の効果など、明確な根拠が存在します。
ここでは、デザインが持つ具体的な力を5つの側面から掘り下げてみましょう。

1. 顧客の第一印象を決定づける:0.5秒の勝負

Webサイトであれば訪問から数秒、商品パッケージであれば棚の前で一瞬。顧客が企業や商品に対して抱く第一印象は、驚くほど短時間で決まります。

この「第一印象」において、視覚情報、すなわちデザインが与える影響は絶大です。
考えてみてください。初めて訪れたWebサイトのデザインがごちゃごちゃしていて情報が見つけにくかったら?あるいは、手に取った商品のパッケージが安っぽく、魅力的に見えなかったら?

おそらく多くの人が、その時点で「この会社は大丈夫だろうか?」「この商品は本当に良いものなのだろうか?」という不安や不信感を抱き、詳しく知ろうとする前に離脱してしまうでしょう。

逆に、洗練されていて分かりやすいデザインは、顧客に「信頼できそう」「センスが良い」「使いやすそう」といったポジティブな印象を与え、その先の行動(続きを読む、商品をカートに入れる、問い合わせるなど)へとスムーズに誘導します。

第一印象で顧客の心を掴むことができれば、その後のビジネス展開は格段に有利になります。デザインは、そのための最も効果的な手段の一つなのです。

2. 商品やサービスの価値を高める:価格以上の価値を伝える

中身が同じでも、盛り付け方や器によって料理の値段が変わるように、商品やサービスもデザインによって顧客が感じる価値は大きく変動します。

例えば、地方の小さな農園で作られたこだわりのジャムがあるとします。そのジャムを、何の変哲もない瓶に入れ、手書きのラベルを貼って販売するのと、素材の良さや作り手の想いが伝わるような、洗練された瓶とラベルデザインで販売するのとでは、どちらが高くても買いたいと思ってもらえるでしょうか?

多くの場合、後者でしょう。優れたデザインは、商品やサービスが持つ「目に見えない価値」(品質へのこだわり、作り手の情熱、独自性など)を視覚的に表現し、顧客に伝えます。

顧客は、単に機能やスペックだけでなく、デザインから感じ取れる「価値」に対しても対価を支払うのです。

これにより、単なる価格競争から脱却し、付加価値に基づいた価格設定が可能となり、結果的に利益率の向上に繋がります。安売りせずとも選ばれる存在になるために、デザインは不可欠な要素と言えるでしょう。

3. ブランドイメージを構築し、差別化を図る:記憶に残る存在へ

現代市場は、モノやサービスで溢れています。その中で、自社の商品やサービスを選んでもらうためには、顧客の記憶に残り、「〇〇といえばこの会社」と思い出してもらえるような、強いブランドイメージを構築することが重要です。

ロゴマーク、コーポレートカラー、Webサイトのデザイン、広告表現、店舗の雰囲気…これら全てのデザイン要素が、一貫したメッセージを発信し続けることで、独自のブランドイメージが形作られていきます。

一貫性のある優れたデザインは、顧客に対して信頼感や専門性を伝え、競合他社との明確な差別化を可能にします。
例えば、「あの赤いロゴの会社」「あのシンプルでおしゃれなサイトのサービス」といったように、デザインがブランドの記号として機能し始めると、顧客の心の中に確固たるポジションを築くことができます。

強いブランドは、価格競争に巻き込まれにくく、顧客のロイヤリティを高め、長期的なファンを育成します。これは、安定した収益基盤を築く上で非常に大きなアドバンテージとなります。

4. 情報伝達をスムーズにし、顧客体験を向上させる:ストレスフリーな関係構築

どんなに優れた商品やサービスも、その情報が顧客に正しく、そして分かりやすく伝わらなければ意味がありません。

Webサイトのナビゲーション、パンフレットの構成、申込用紙のフォーマット、製品マニュアルの説明図など、デザインは情報伝達の効率と質を大きく左右します。

「どこをクリックすれば目的のページに辿り着けるのか分からない」
「説明書を読んでも使い方が理解できない」
「申込書の記入項目が多すぎて面倒くさい…」
このようなストレスは、顧客満足度を著しく低下させ、購買意欲を削ぎ、最悪の場合、顧客離れを引き起こします。

顧客視点に立ち、情報を整理し、直感的に理解・操作できるように設計されたデザインは、スムーズで快適な顧客体験(CX)を提供します。

ストレスなく情報を得られ、目的を達成できた顧客は、企業やブランドに対して好感を持ち、リピーターやファンになってくれる可能性が高まります。顧客との良好な関係を築き、維持していく上で、分かりやすいデザインは欠かせない要素なのです。

5. 従業員のモチベーションと誇りを高める:インナーブランディング効果

デザインの効果は、社外の顧客だけに向けられたものではありません。社内で働く従業員に対しても、ポジティブな影響を与えます。

自社のロゴが入ったスタイリッシュな名刺、使いやすくデザイン性の高い社内ツール、美しく整えられたオフィス空間、そして何より、顧客から高く評価されている自社の商品やサービスの洗練されたデザイン。

これらは、従業員にとって「自分はこの会社の一員である」という誇りや愛着(エンゲージメント)を高める要因となります。
従業員が自社のブランドやデザインに誇りを持てるようになると、仕事へのモチベーションが向上し、より質の高いサービスを提供しようという意識が生まれます。

また、優れたデザインは、採用活動においても優秀な人材を引きつける魅力となります。
従業員のエンゲージメント向上は、生産性の向上、離職率の低下、顧客サービスの質の向上に繋がり、巡り巡って企業の業績向上に貢献します。デザインへの投資は、社内活性化への投資でもあるのです。

儲かる見た目の法則:利益を生み出すデザインの共通点

では、具体的にどのようなデザイン要素に気を配れば、「儲かる見た目」を実現できるのでしょうか?単に流行を追ったり、見た目の派手さを求めたりするだけでは、本質的な成果には繋がりません。利益を生み出すデザインには、いくつかの普遍的な法則が存在します。ここでは、特に重要な5つの法則を解説します。

法則1:ターゲット顧客に深く響くデザイン:誰のためのデザインか?

デザインを考える上で最も重要な出発点は、「誰に届けたいのか?」を明確にすることです。

優れたデザインは、ターゲットとなる顧客層の属性(年齢、性別、職業、年収など)、ライフスタイル、価値観、抱えている悩みや願望などを深く理解し、彼らの心に「刺さる」ように設計されています。

例えば、健康志向のシニア層に向けた商品であれば、安心感や信頼感を伝える落ち着いた色調と、読みやすい大きな文字を使ったデザインが適しているでしょう。一方、最新テクノロジーに関心のある若者向けサービスであれば、未来的で洗練された、動きのあるデザインが効果的かもしれません。

ターゲット顧客が普段どのような情報に触れ、どのようなデザインテイストを好み、どのような言葉に反応するのかを徹底的にリサーチし、分析することが不可欠です。

  • ペルソナ設定:具体的なターゲット顧客像を詳細に設定する
  • 共感マップ作成:ターゲット顧客の思考や感情を理解する
  • ユーザーインタビュー:直接顧客の声を聞き、ニーズを探る

これらの手法を用いてターゲット理解を深め、「自分たちのための商品・サービスだ」と直感的に感じてもらえるような、共感を呼ぶデザインを目指しましょう。

法則2:ブランドの世界観が一貫しているデザイン:点ではなく線で伝える

ロゴマーク、Webサイト、名刺、パンフレット、店舗デザイン、SNSの投稿画像…これら顧客が触れる可能性のある全ての接点(タッチポイント)において、デザインの印象がバラバラだと、顧客は何の会社なのか、どのような価値を提供しているのかを正しく認識することができません。

「儲かるデザイン」は、ブランドが持つ独自の個性や価値観(ブランドパーソナリティ)を、一貫したデザイントーン&マナー(色使い、フォント、写真のスタイル、レイアウトの規則など)で表現しています。

これにより、どのタッチポイントで接触しても、顧客は「あの会社だ」と認識でき、ブランドイメージが効率的に蓄積・強化されていきます。

  • ブランドガイドラインの策定:ロゴの使用ルール、指定書体、配色などを明確に定め、関係者間で共有する
  • デザインテンプレートの活用:Webサイトや資料作成において、統一されたテンプレートを用いる
  • 定期的なデザインレビュー:各タッチポイントのデザインが一貫性を保っているかを確認する

一貫性のあるデザインは、プロフェッショナルな印象を与え、顧客からの信頼を獲得する上でも極めて重要です。「しっかりした会社だな」と感じてもらうための、基本的な土台となります。

法則3:伝えたい情報が「一瞬」で伝わるデザイン:分かりやすさは正義

情報は、ただそこにあれば良いというものではありません。顧客が必要な時に、ストレスなく、そして正確に理解できるように「伝わる」形で提示されて初めて価値を持ちます。
特にWebサイトやアプリなど、インタラクティブな媒体においては、情報の分かりやすさ(ユーザビリティ)が顧客体験を大きく左右します。
「儲かるデザイン」は、情報を効果的に伝えるために、様々な工夫が凝らされています。

  • 情報構造の設計(IA):情報を論理的に分類・整理し、顧客が迷わない導線を作る
  • 視覚的な階層化:見出し、本文、キャプションなどの重要度に応じて、文字の大きさや太さ、色などを変え、情報の優先順位を明確にする
  • 適切な余白(ホワイトスペース):要素を詰め込みすぎず、適度な余白を設けることで、視認性を高め、洗練された印象を与える
  • 図解やインフォグラフィックの活用:複雑な情報やデータを、視覚的に分かりやすく表現する
  • 簡潔で明瞭な言葉遣い:専門用語や曖昧な表現を避け、ターゲット顧客に合わせた平易な言葉を選ぶ

デザインは、情報を美しく見せるだけでなく、情報を「理解しやすくする」ための技術でもあります。顧客の認知負荷を軽減し、スムーズな情報取得をサポートするデザインを心がけましょう。

法則4:信頼性と専門性を感じさせるデザイン:安心感が選択を後押し

特に、購入前の検討期間が長い高額商品や、専門的な知識・スキルが求められるサービス(士業、コンサルティング、医療など)においては、顧客が「この会社は信頼できるか?」「本当に専門性があるのか?」という点を非常に重視します。
デザインは、言葉以上に雄弁に、企業の信頼性や専門性を物語ることがあります。
例えば、

  • プロが撮影した高品質な写真の使用:素人っぽい写真やフリー素材の多用は、安っぽい印象を与えがち
  • 整理され、細部まで配慮されたレイアウト:雑然としたレイアウトは、仕事ぶりも雑なのではないかと思われかねない
  • 最新の情報と正確な記述:古い情報や誤字脱字は信頼性を著しく損なう
  • 顧客の声や実績の提示:第三者からの評価は、客観的な信頼性の証となる
  • セキュリティ認証マーク等の表示:個人情報などを扱う場合、安全性を視覚的に示す

安っぽさや素人感を排除し、細部にまでこだわった丁寧なデザインは、顧客に「この会社なら安心して任せられる」という無意識のメッセージを送ります。この安心感が、最終的な選択を後押しする重要な要因となるのです。

法則5:感情に訴えかけ、行動を促すデザイン:心を動かし、背中を押す

人は、論理的な比較検討だけで購買を決定するわけではありません。「なんとなく好き」「使っている自分を想像するとワクワクする」「この商品で悩みが解決できそう」といった感情的な要素が、最終的な意思決定に大きな影響を与えます。

「儲かるデザイン」は、ターゲット顧客の感情に巧みに働きかけ、「欲しい」「試したい」「問い合わせてみたい」という欲求を喚起し、具体的なアクションへと導く仕掛けが施されています。

  • ストーリーテリング:商品開発の背景や顧客の成功事例などを物語として伝え、共感や憧れを生み出す
  • ベネフィットの訴求:単なる機能説明ではなく、その商品やサービスを利用することで得られる「嬉しい未来(ベネフィット)」を具体的にイメージさせる
  • 色彩心理の活用:色の持つイメージ(例:赤=情熱、青=信頼、緑=安心)を利用し、与えたい印象や感情を演出する
  • 魅力的な写真や動画:理想的な利用シーンや、使用後のポジティブな変化を視覚的に訴える
  • 明確なCTA(Call to Action):顧客に取ってほしい行動(「資料請求はこちら」「無料相談を予約する」「今すぐ購入」など)を、分かりやすく目立つボタンなどで提示する

顧客の心を動かし、次のステップへとスムーズに誘導する。デザインは、そんな「そっと背中を押す」役割も担っているのです。

デザイン変更で失敗しないために:陥りがちな落とし穴と対策

デザインの重要性を理解し、いざ改善に取り組もうとしても、やり方を間違えると時間とコストを浪費するだけで、期待した成果が得られないことがあります。それどころか、以前よりも状況が悪化してしまうケースすらあります。ここでは、デザイン変更プロジェクトでよく見られる失敗例と、それを避けるための具体的な対策について解説します。

失敗例1:目的が曖昧なままデザインを変えてしまう:「リニューアルのためのリニューアル」の罠

「最近、競合のサイトがかっこよくなったから、うちも何とかしないと」「今のデザイン、なんとなく古臭く感じるんだよね」…こうした漠然とした動機だけでデザイン変更を進めてしまうのは、最も陥りやすい失敗パターンです。

デザインはあくまで目的を達成するための「手段」です。その目的が明確でなければ、どのようなデザインが良いのか判断基準がなく、デザイナーも的確な提案ができません。結果として、見た目は新しくなったけれど、ビジネス上の課題は何も解決しない、あるいは新たな問題が発生するといった事態を招きかねません。

対策:デザイン変更に着手する前に、必ず「KGI(重要目標達成指標)」と「KPI(重要業績評価指標)」を設定しましょう。

  • KGIの例:Webサイト経由の売上を1年間で1.5倍にする、新規顧客からの問い合わせ件数を月間20件増やす
  • KPIの例:Webサイトの直帰率を10%改善する、特定ページのコンバージョン率を5%向上させる、資料ダウンロード数を月間100件にする

具体的な数値目標を設定することで、デザインの方向性が明確になり、関係者間の意思統一も図りやすくなります。そして何より、変更後の効果を客観的に評価し、次の改善に繋げることが可能になります。

失敗例2:経営者の好みだけでデザインを決めてしまう:ターゲット不在のデザイン

デザインはアート作品ではありません。ビジネスにおけるデザインは、ターゲット顧客に価値を伝え、行動を促すためのコミュニケーションツールです。

しかし、特に中小企業においては、最終的なデザイン決定権を持つ経営者の個人的な好みや美意識が強く反映されすぎてしまうことがあります。「私の好きな色を使ってほしい」「もっと派手にして目立たせたい」「このタレントを起用したい」といった要望が、必ずしもターゲット顧客に響くとは限りません。

対策:デザインの意思決定プロセスに、客観的な視点を取り入れましょう。

  • ターゲット顧客調査:アンケートやインタビューを通じて、ターゲット顧客がどのようなデザインを好み、どのような情報に関心があるかを把握する
  • 競合調査:競合他社がどのようなデザイン戦略をとっているかを分析し、自社のポジショニングを明確にする
  • データ分析:Webサイトのアクセス解析データなどから、ユーザーの行動パターンや離脱ポイントを把握し、デザイン改善のヒントを得る
  • デザインのABテスト:複数のデザイン案を用意し、実際にターゲット顧客に近い層に見てもらったり、Webサイトでテスト配信したりして、どちらがより効果的かを検証する

経営者の想いやビジョンをデザインに反映することは重要ですが、それが独りよがりにならないよう、常にターゲット顧客の視点と客観的なデータに基づいて判断することが求められます。

失敗例3:デザイナーに丸投げしてしまう:認識のズレが生む悲劇

「デザインのことはよく分からないから、プロにお任せします」というスタンスは、一見、専門家を尊重しているように見えますが、実は良い結果に繋がらないことが多いです。
デザイナーはデザイン制作のプロフェッショナルですが、御社のビジネスの背景、強み、課題、ターゲット顧客の詳細、そして今回のデザイン変更で達成したい具体的な目標について、最初から全てを理解しているわけではありません。

情報共有が不十分なまま「いい感じに作ってください」と依頼してしまうと、デザイナーは限られた情報の中で推測しながら制作を進めるしかなく、結果として意図したものと全く違うデザインが出来上がってしまったり、何度も修正が必要になったりして、時間もコストも余計にかかってしまいます。

対策:デザイナーを「パートナー」として捉え、積極的に情報共有とコミュニケーションを行いましょう。

  • オリエンテーションの実施:プロジェクト開始時に、ビジネスの概要、目的、ターゲット、競合、ブランドイメージ、予算、スケジュールなどを詳細に伝える場を設ける
  • 参考資料の提供:既存のデザイン資産、競合のデザイン、参考にしたいデザイン事例などを共有する
  • 定期的な進捗確認とフィードバック:制作の途中で定期的に進捗を確認し、認識のズレがないかを確認しながら、具体的かつ建設的なフィードバックを行う
  • 意思決定プロセスの明確化:誰が最終的なデザインを承認するのか、フィードバックは誰が取りまとめるのかを事前に決めておく

デザイナーとの良好なパートナーシップを築くことが、プロジェクト成功の鍵となります。

失敗例4:効果測定を行わず、やりっぱなしにしてしまう:学びのない投資

時間とコストをかけてデザインをリニューアルし、「これで良くなったはずだ」と満足して、その後の効果検証を全く行わないケースも少なくありません。

しかし、デザイン変更は「ゴール」ではなく、あくまでビジネス目標を達成するための「プロセスの一部」です。その施策が実際に目標達成にどれだけ貢献したのか、あるいはしなかったのかを検証しなければ、投資対効果を判断することも、次の改善策を考えることもできません。

対策:デザイン変更を実施する前に、効果測定の方法と期間を計画しておきましょう。

  • 測定指標の決定:目的(KGI/KPI)に基づいて、何を測定するかを具体的に決める(例:Webサイトのアクセス数、滞在時間、離脱率、コンバージョン率、問い合わせ件数、売上高、顧客アンケートの満足度など)
  • 測定ツールの準備:WebサイトであればGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールを設定する。必要に応じてアンケート調査などを準備する
  • 比較対象の設定:デザイン変更前のデータを必ず取得しておき、変更後のデータと比較できるようにする
  • 測定期間の設定:デザイン変更直後だけでなく、一定期間(例:1ヶ月、3ヶ月、半年)データを収集し、傾向を見る
  • 結果の分析と共有:測定結果を分析し、何が改善され、何が課題として残ったのかを明確にし、関係者間で共有する

効果測定を通じて得られた学びは、次のデザイン改善やマーケティング施策に活かせる貴重な財産となります。PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回し続けることが、デザイン投資の効果を最大化する道です。

中小零細企業が「儲かる見た目」を実現するためのステップ

「デザインの重要性は分かったけれど、うちのようなリソースの限られた会社では、なかなか本格的な取り組みは難しい…」と感じている経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。
確かに、潤沢な予算や専門部署を持つ大企業と同じようにはいかないかもしれません。しかし、諦める必要は全くありません。工夫次第で、中小零細企業でも「儲かる見た目」を実現し、ビジネスを成長させることは十分に可能です。ここでは、そのための具体的なステップを5段階でご紹介します。

ステップ1:現状のデザイン資産を棚卸しする:「我が社の見た目」を客観視

まずは、自社が現在どのような「見た目」を顧客や社会に向けて発信しているのかを把握することから始めましょう。

  • ロゴマーク:名刺、Webサイト、製品などで統一されているか? デザインは古臭くないか?
  • 名刺・封筒:記載情報は最新か? ブランドイメージに合っているか?
  • 会社案内・パンフレット・チラシ:情報は分かりやすいか? デザインに一貫性はあるか? ターゲットに響く内容か?
  • Webサイト:スマートフォン表示に対応しているか? 情報は更新されているか? 問い合わせしやすいか? デザインは魅力的か?
  • SNSアカウント:プロフィール画像やカバー画像は設定されているか? 投稿内容とデザインのトーンは合っているか?
  • 店舗・オフィス(該当する場合):看板や外観は魅力的か? 内装や案内表示は分かりやすいか? 清潔感はあるか?
  • 商品パッケージ(該当する場合):商品の魅力が伝わるデザインか? 競合製品の中で埋もれていないか?

これらのデザイン要素を一つひとつリストアップし、「ブランドイメージとの一貫性」「ターゲットへの訴求力」「情報の分かりやすさ」「品質感・信頼性」といった観点から、冷静に評価してみてください。可能であれば、従業員や取引先、顧客など、第三者の意見も聞いてみると、客観的な課題が見えてきやすくなります。
この棚卸しを通じて、「どこに課題があり」「どこから手をつけるべきか」という改善の優先順位が見えてきます。

ステップ2:改善の目的とターゲットを再定義する:「何のために」「誰のために」

ステップ1で見えてきた課題の中から、特に優先度の高いものについて、「なぜそれを改善したいのか(目的)」そして「そのデザインは誰に向けたものなのか(ターゲット)」を改めて具体的に定義します。

例えば、「Webサイトのデザインが古く、スマートフォンで見づらい」という課題が見つかった場合、目的は「スマートフォンユーザーからの問い合わせを増やしたい」、ターゲットは「移動中や休憩中に情報収集するビジネスパーソン」といった具合です。

あるいは、「商品パッケージが地味で、店頭で目立たない」という課題であれば、目的は「新規顧客のトライアル購入を促進したい」、ターゲットは「健康や美容に関心のある30代女性」などと設定できるでしょう。

目的とターゲットを明確にすることで、デザインの方向性が定まり、デザイナーへの依頼や社内での意思決定がスムーズになります。「なんとなく良くしたい」ではなく、「〇〇を達成するために、△△な人に響くデザインにする」という具体的な指針を持つことが重要です。

ステップ3:スモールスタートで試してみる:小さく始めて大きく育てる

限られた予算と時間の中で、いきなり大規模なデザインリニューアルに着手するのは現実的ではありませんし、リスクも伴います。
そこでおすすめなのが、「スモールスタート」です。まずは、比較的小さな範囲、低コストで始められる部分からデザイン改善に着手し、その効果を見ながら徐々に範囲を広げていくというアプローチです。
スモールスタートに適した取り組みの例:

  • 名刺デザインの刷新:比較的低コストで、会社の第一印象を大きく変えることができる
  • 特定のキャンペーン用ランディングページ制作:Webサイト全体を改修するより手軽に、特定の目的達成に特化したページを作成できる
  • SNS用テンプレート作成:投稿画像のデザインを統一し、ブランドイメージ向上と制作効率化を図る
  • 資料請求や問い合わせフォームの改善:入力項目を見直したり、デザインを分かりやすくしたりすることで、コンバージョン率向上を目指す
  • 既存パンフレットの部分的な改訂:全面リニューアルではなく、表紙や特に重要なページのデザイン・情報を更新する

小さな成功体験は、デザイン改善へのモチベーションを高め、社内での理解や協力を得る上でも効果的です。まずは無理のない範囲から、着実に一歩を踏み出しましょう。

ステップ4:専門家の力を効果的に活用する:餅は餅屋、ただし丸投げは禁物

デザインに関する知識やスキルが社内に不足している場合、外部の専門家(デザイナー、デザイン会社、Web制作会社など)の力を借りるのが賢明です。

しかし、その際も「丸投げ」は避けなければなりません。ステップ2で明確にした目的とターゲット、そして自社の強みや想いをしっかりと伝え、デザイナーをビジネスパートナーとして巻き込んでいく姿勢が重要です。

専門家を効果的に活用するためのポイント:

  • 複数の候補から比較検討する:実績や得意分野、コミュニケーションの相性などを考慮し、自社に合ったパートナーを選ぶ
  • 予算と納期を明確に伝える:最初に条件をクリアにしておくことで、後のトラブルを防ぐ
  • 目的とターゲットを正確に伝える:なぜデザインを変えたいのか、誰に届けたいのかを具体的に説明する
  • フィードバックは具体的に:抽象的なダメ出しではなく、「ここの色をもう少し明るくしてほしい」「この部分の文字を大きくしてほしい」など、具体的に伝える
  • クラウドソーシングの活用:ロゴやバナーなど、特定のデザインパーツのみを依頼する場合、比較的低コストで利用できるクラウドソーシングサービスも選択肢の一つ

コストだけで選ぶのではなく、自社のビジネスを深く理解しようと努め、目的達成のために最適な提案をしてくれる専門家を見つけることが、費用対効果の高いデザイン投資に繋がります。

ステップ5:効果測定と継続的な改善:デザインを育て続ける

デザイン改善は、一度実施したら終わりではありません。市場環境や顧客のニーズは常に変化していますし、一度で完璧なデザインが完成することは稀です。

重要なのは、実施したデザイン変更が、設定した目的(KGI/KPI)に対してどのような効果をもたらしたのかを客観的に測定・評価し、その結果に基づいてさらなる改善を継続していくことです。

  • 効果測定の実施:変更前後のデータを比較し、目標達成度を評価する(アクセス解析、アンケート、売上データなど)
  • 結果の分析:何がうまくいき、何が課題だったのかを分析し、改善点を見つける
  • 改善策の実施:分析結果に基づき、さらなるデザインの修正や新たな施策を実行する

この「実行→測定→分析→改善」のサイクル(PDCAサイクル)を回し続けることで、デザインは常に最適化され、ビジネスへの貢献度を高めていくことができます。「儲かる見た目」は、一度作って完成するものではなく、継続的な努力によって育て上げていくものなのです。

デザインを経営の武器にする

これまで見てきたように、デザインは単なる「お化粧」や「飾り」ではありません。

それは、顧客との最初の接点を作り出し、商品やサービスの価値を高め、ブランドイメージを構築し、情報を分かりやすく伝え、従業員の士気を高める…といった、企業のあらゆる活動に影響を与え、最終的には利益率をも左右する、極めて重要な経営要素です。

特に、情報が溢れ、顧客の選択肢が無限に広がる現代において、「見た目」の力、すなわちデザイン戦略の重要性はますます高まっています。

中小零細企業においては、「デザインにまで手が回らない」という声も聞かれます。しかし、むしろリソースが限られているからこそ、デザインの力を効果的に活用し、競合との差別化を図り、顧客に選ばれる理由を明確に打ち出す必要があるのではないでしょうか。

今回ご紹介した「儲かる見た目」の法則や、中小企業が実践できるステップを参考に、ぜひ自社の「見た目」を見直してみてください。

  • デザインはコストではなく、未来への「投資」である
  • ターゲット顧客の心に響くデザインこそが「儲かる見た目」の基本
  • 一貫性、分かりやすさ、信頼性、感情への訴求が重要
  • 目的を明確にし、専門家と協力し、効果測定を怠らない
  • スモールスタートで、継続的に改善していく

これらのポイントを意識し、デザインを単なる制作物としてではなく、「経営戦略の一部」として捉え直すこと。
それが、厳しい競争環境を勝ち抜き、持続的な成長を遂げるための、確かな一歩となるはずです。
この記事が、御社にとってデザインの価値を再認識し、利益に繋がる「見た目」づくりに取り組むきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。


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