そのデザイン、本当に「効いて」いますか?
企業の顔とも言えるWebサイト、日々の情報発信を担うSNS、顧客との接点となるパンフレットやチラシ。ビジネスの様々な場面で「デザイン」は欠かせない要素です。
しかし、時間とコストをかけて制作したデザインが、期待したほどの効果を発揮しない、あるいは全く成果に繋がらない…そんな経験をお持ちの中小零細企業の経営者様、マーケティング担当者様、ホームページ運用責任者様は少なくないのではないでしょうか。
「見た目は綺麗なのに、なぜか問い合わせが増えない」
「リニューアルしたのに、アクセス数が伸び悩んでいる」
「競合他社と比べて、どうも見劣りする気がする」
こうしたデザインに関する悩みは尽きません。一体なぜ、デザインは失敗してしまうのでしょうか? センスの問題? デザイナーの力量不足? もちろん、それらが要因となるケースもあります。しかし、多くのデザイン失敗の裏には、もっと根深く、そして見過ごされがちな「根本原因」が潜んでいるのです。
本記事では、デザインが失敗に終わる真の理由、その根底にある「〇〇不足」を徹底的に分析し、中小零細企業がデザインで成功を掴むための具体的なヒントを探ります。この記事を読み終える頃には、自社のデザイン戦略を見直し、より効果的な一手を打つための視点が得られるはずです。
デザイン失敗の典型的なパターン:あなたの会社は大丈夫?
まずは、デザインが失敗したと判断される、よくある状況をいくつか見てみましょう。これらに心当たりがある場合、根本的な原因解決が必要かもしれません。
見た目は良いが、中身が伴わない
プロのデザイナーが手がけた美しいデザイン。しかし、肝心の情報が分かりにくかったり、ユーザーが求めるコンテンツにたどり着けなかったりするケースです。デザインが先行しすぎて、本来伝えるべきメッセージや機能性が損なわれている状態と言えます。いくら見た目が良くても、ユーザーの目的達成を助けなければ、ビジネス上の成果には繋がりません。
ターゲットに響かないデザイン
デザインの対象となる顧客層、つまりターゲットの嗜好や価値観を無視して作られたデザインも失敗の典型例です。例えば、若年層向けのサービスなのに、落ち着きすぎた堅いデザインを採用してしまったり、逆に富裕層向けの高級商材なのに、チープで親しみやすすぎるデザインにしてしまったり。ターゲットの心に響かないデザインは、興味を持ってもらうどころか、ブランドイメージの毀損に繋がる可能性すらあります。
目的が曖昧なまま作られたデザイン
「なんとなく古くなったからリニューアルしたい」「競合がやっているからうちも」といった、曖昧な動機でデザイン制作を進めてしまうケースです。このデザインによって何を達成したいのか、どんな課題を解決したいのかという具体的な目的が設定されていないため、効果測定もできず、結果的に「作って終わり」になりがちです。方向性が定まらないままでは、デザイナーも最適な提案をすることが困難になります。
効果測定と改善が行われない
デザインは作って終わりではありません。特にWebサイトやLP(ランディングページ)などは、公開後のアクセス状況やコンバージョン率などを分析し、改善を繰り返していく必要があります。しかし、効果測定の仕組みがなかったり、分析結果を次の施策に活かせていなかったりする場合、デザインの効果を最大化することはできません。せっかくのデザイン投資が無駄になってしまう可能性もあります。
デザインに一貫性がない
Webサイト、パンフレット、名刺、SNSアカウントなど、企業が発信する様々な媒体でデザインのトーン&マナーがバラバラな状態です。これでは、顧客に統一されたブランドイメージを伝えることができず、信頼性の低下や認知度の分散を招きます。部分最適でデザインを進めた結果、全体としての統一感が失われてしまうのです。
ある地方の老舗和菓子店。伝統ある味を守りつつ、新しい顧客層を開拓しようとWebサイトのリニューアルを決意しました。最新のトレンドを取り入れたスタイリッシュなデザインを、若手デザイナーに依頼。しかし、完成したWebサイトは、老舗の持つ温かみや信頼感とはかけ離れた、どこか無機質な印象になってしまいました。
既存顧客からは「お店の雰囲気に合わない」と戸惑いの声が上がり、新規顧客の獲得にも繋がりませんでした。これは、見た目の新しさばかりを追い求め、お店が本来持つ価値やターゲット顧客への配慮が欠けていた典型的な失敗例と言えるでしょう。
デザイン失敗の根本原因:その正体は「〇〇不足」
さて、ここまで見てきたようなデザイン失敗のパターン。これらの背景には、共通する根本的な原因が存在します。それは一体何でしょうか?
様々な要因が考えられますが、多くのケースで本質的な問題となっているのは、「コミュニケーション不足」です。
「え? コミュニケーション?」と意外に思われるかもしれません。しかし、デザイン制作は、発注者である企業と、制作者であるデザイナー(あるいは制作会社)との共同作業です。この両者の間で十分な意思疎通、情報共有、認識合わせが行われていないことが、最終的なデザインの失敗を招く最大の要因となるのです。
考えてみてください。発注者である企業側は、自社のビジネスや課題、ターゲット顧客について最も深く理解しています。一方、デザイナーはデザインの専門家であり、課題を視覚的に解決するための知識やスキルを持っています。この両者の知識や視点が適切に共有され、融合されて初めて、本当に効果のあるデザインが生まれます。
コミュニケーションが不足すると、以下のような問題が発生します。
- 企業の目的や課題がデザイナーに正確に伝わらない
- ターゲット顧客のイメージが共有されない
- デザインに期待する具体的な成果が不明確になる
- 発注者とデザイナーの間で認識のズレが生じる
- 結果として、方向性が定まらず、手戻りが多発する
- 最終的に期待外れの成果物ができあがり、時間とコストが無駄になる
つまり、デザインの質は、コミュニケーションの質に大きく左右されると言っても過言ではないのです。
「コミュニケーション不足」を分解する:6つの具体的な「不足」
「コミュニケーション不足」と一言で言っても、その内実は様々です。デザイン制作のプロセスにおいて、具体的にどのような「不足」が失敗を引き起こすのか、6つの側面から深掘りしてみましょう。
1. 情報共有不足:伝えるべきことを伝えきれていますか?
デザインは、与えられた情報に基づいて形作られます。必要な情報が不足していたり、誤った情報が伝えられたりすれば、当然ながら適切なデザインは生まれません。デザイナーが的確な判断を下し、効果的な提案をするためには、以下のような情報が不可欠です。
- 企業の現状:事業内容、強み、弱み、経営理念、ブランドイメージ、抱えている課題
- 事業の目的・目標:デザインを通じて何を達成したいのか(短期・中期・長期的な視点)
- ターゲット顧客の詳細:年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観、ニーズ、デザインの好みなど、具体的なペルソナ像
- 競合他社の状況:競合のデザイン戦略、市場でのポジショニング
- デザインへの期待:具体的な役割(認知向上、問い合わせ増、ブランディング強化など)、期待する効果
- 予算や納期:現実的な制約条件の共有
- 過去の経緯:これまでのデザイン制作の経験、成功・失敗事例、その理由
- その他:使用する素材(写真、ロゴデータなど)、レギュレーション(規定)の有無
これらの情報を、発注者側が「言わなくてもわかるだろう」「デザイナーなら当然知っているはず」と思い込んでしまう、あるいは忙しさにかまけて伝えきれないことが、失敗の第一歩となります。特に企業の内部事情やビジネス戦略に関する深い情報は、デザイナーにとって宝の山です。積極的に共有する姿勢が求められます。
以前、ある製造業の会社からコーポレートサイトのリニューアル依頼がありました。打ち合わせでは「とにかくカッコよく、信頼感が出るように」という要望が中心でした。しかし、制作を進める中で、実はその会社が特定の技術で業界トップクラスのシェアを誇り、ニッチな市場で高い専門性を持っていることが判明。当初のデザイン案は一般的な製造業のイメージを踏襲していましたが、その事実を知ってからは、専門性と技術力の高さを前面に押し出すデザインへと方向転換。結果的に、ターゲットとする専門家層から高い評価を得ることができました。もし最初の情報共有が不十分なまま進んでいたら、当たり障りのない、埋もれてしまうサイトになっていたかもしれません。
2. 目的意識の共有不足:そのデザインで、何を成し遂げたいですか?
「何のためにデザインを作るのか?」という目的意識が、発注者とデザイナーの間で明確に共有されていないケースも非常に多く見られます。
- 目的の曖昧さ:「とりあえず作る」「見た目を良くする」だけでは不十分
- ゴールの不一致:発注者内(経営層、担当者間)でも目的が異なっている、デザイナーが認識している目的とズレている
- KPIの欠如:デザインの成果を測るための具体的な指標(Key Performance Indicator)が設定されていない
- 課題認識の齟齬:デザインによって解決すべき本質的な課題が何なのか、共通認識が持てていない
目的が曖昧なままでは、デザインの方向性を定めることができません。「売上を上げたい」のか「ブランドイメージを高めたい」のか「採用を強化したい」のかによって、最適なデザインアプローチは全く異なります。「このデザインは、〇〇という目的を達成するために、△△というターゲットに対して、□□というメッセージを伝えるものである」という共通認識を持つことが極めて重要です。
目的が曖昧なままWebサイトのリニューアルを進めた結果、「デザインは綺麗になったけれど、以前より問い合わせが減ってしまった」という相談を受けることがあります。よくよく話を聞くと、リニューアルの目的が社内で明確に共有されておらず、担当者レベルでは「デザイン刷新によるイメージアップ」、経営層は「問い合わせ数の増加」を期待していた、といったケースでした。目的が明確でなかったため、デザインは見た目重視となり、ユーザーが問い合わせに至るまでの導線設計が考慮されていなかったのです。
3. ターゲット理解不足:誰に届けたいデザインですか?
デザインは、それを見る人、使う人、つまり「ターゲット」が存在して初めて意味を持ちます。そのターゲットに対する理解が浅い、あるいは間違っていると、独りよがりなデザインになってしまいます。
- ターゲット像の不明確さ:「すべての人」に向けたデザインは、結局誰にも響かない
- ターゲットのニーズ無視:ターゲットが本当に求めている情報や体験を提供できていない
- ターゲットへの共感欠如:ターゲットの心に響く言葉遣いやビジュアル表現ができていない
- 思い込みによる誤解:発注者側の「きっとこうだろう」という思い込みでターゲット像を設定してしまう
- ペルソナ設定の甘さ:具体的な人物像としてペルソナを設定せず、抽象的なターゲット設定にとどまっている
ターゲットを深く理解するためには、アンケート調査やインタビュー、アクセス解析などのデータ分析が有効です。デザイナーも、ターゲットになりきってデザインを考える視点が求められます。「このデザインを見たターゲットは、どう感じ、どう行動するだろうか?」という問いを常に持つことが大切です。
ある健康食品の通販サイト。メインターゲットは50代以上の女性でしたが、担当者が若かったためか、Webサイトのデザインは20代〜30代向けの明るくポップな雰囲気になっていました。写真素材も若いモデルばかり。これでは、本来のターゲット層である50代以上の女性は「自分向けのサイトではない」と感じてしまい、離脱に繋がります。ターゲットの年齢層、価値観、普段見ているメディアなどを考慮した、適切なデザイン表現を選択する必要がありました。
4. 期待値調整不足:デザインは魔法ではありません
デザインに対して、過度な期待を抱いてしまうことも失敗の原因となります。「このWebサイトを作れば、すぐに売上が倍増するはずだ」「このロゴに変えれば、一気に有名企業になれる」といった、魔法のような効果を期待してしまうケースです。
- デザインの役割誤認:「デザイン=万能薬」という誤解
- プロセスへの無理解:成果が出るまでには、デザイン以外の要素(商品力、マーケティング戦略、営業活動など)も重要であり、時間もかかることへの理解不足
- デザイナーへの過剰要求:実現不可能な要求や、予算・納期に見合わない要求
- リスク説明の不足:デザイナー側から、デザインの限界や潜在的なリスクについて事前に説明がなされていない
デザインは、あくまでビジネスを成功させるための一つの「手段」です。デザインだけで全ての課題が解決するわけではありません。発注者とデザイナー双方が、デザインで「できること」と「できないこと」、そして成果が出るまでのプロセスや期間について、現実的な期待値を共有しておくことが重要です。デザイナーは、依頼内容に対して、専門家として実現可能性や代替案、懸念点などを正直に伝える責任があります。
「とにかくインパクトのあるデザインを!」という要望を受け、非常に奇抜でアーティスティックなWebサイトを制作したケース。確かに見た目のインパクトは絶大でしたが、使い勝手が悪く、情報も探しにくいため、ユーザーからは不評でした。発注者は「デザインが良ければ注目されるはず」と期待していましたが、実際には使いやすさ(ユーザビリティ)という重要な要素が犠牲になっていました。事前に「インパクト」と「使いやすさ」のバランスについて、期待値のすり合わせを行っておくべきでした。
5. 意思決定プロセスの共有不足:誰が、いつ、どうやって決めるのか?
デザイン制作は、様々な段階で「意思決定」が必要となります。方向性の決定、デザイン案の選択、修正内容の判断など。この意思決定プロセスが不明確だったり、関係者間で共有されていなかったりすると、プロジェクトは混乱し、停滞します。
- 決裁者の不在・不明確さ:誰が最終的なGOサインを出すのかが曖昧
- フィードバックの混乱:複数の担当者からバラバラな意見が出て、デザイナーが混乱する
- 承認プロセスの遅延:「確認します」のまま時間が過ぎ、スケジュールが遅れる
- 関係部署間の連携不足:デザインに関わるべき部署(営業、マーケティング、開発など)との連携が取れていない
- 「ちゃぶ台返し」の発生:最終段階になって、上位者から全く異なる指示が出る
プロジェクト開始前に、誰がどの段階で何を決定するのか、フィードバックはどのように集約して誰が最終判断するのか、承認に必要な期間はどれくらいか、といったルールを明確に定めておくことが、スムーズな進行の鍵となります。デザイナー側も、意思決定に必要な情報を適切なタイミングで提示する必要があります。
デザイン案を提出した際、担当者Aからは「もっとシンプルに」、担当者Bからは「もっと情報を盛り込んで」、上司からは「競合の〇〇みたいな感じで」と、三者三様のフィードバックが返ってくる…。これはデザイナーにとって悪夢のような状況です。誰の意見を優先すべきか分からず、修正も迷走します。事前に社内で意見を集約し、窓口担当者が責任を持ってフィードバックを伝える体制が必要です。
6. デザイナーへの理解不足:デザイナーは「魔法使い」でも「作業者」でもない
最後に、発注者側がデザイナーという存在やその仕事内容を正しく理解していないことも、コミュニケーション不足の一因となります。
- デザイナー=絵描きという誤解:デザイナーは単に見た目を整えるだけでなく、課題解決のために思考し、設計する役割を担う
- 専門性への不理解:デザイナーの思考プロセスや提案の意図を軽視してしまう
- 一方的な指示:「こうしてほしい」という具体的な指示ばかりで、デザイナーの提案を引き出そうとしない
- 対話の欠如:デザイナーを単なる「作業者」として扱い、対等なパートナーとして対話しようとしない
- 制作費への誤解:デザイン費を単なる「作業費」と捉え、その背景にある調査、分析、思考、スキルに対する価値を理解しない
デザイナーは、発注者の課題を解決するために、専門的な知識とスキルを駆使して最適な答えを導き出そうとします。その提案には必ず理由があります。なぜこのデザインなのか、その意図を理解しようと努め、疑問があれば積極的に質問し、対話を重ねることで、より良い関係性と成果物を生み出すことができます。デザイナーを信頼し、良きパートナーとして協働する姿勢が重要です。
「うちの業界のことは素人には分からないから、言われた通りに作ってくれればいい」というスタンスで依頼された場合、デザイナーは持てる能力を十分に発揮できません。もちろん業界知識は発注者の方が詳しいでしょう。しかし、デザイナーは客観的な視点や、異なる業界での経験から、新たな気づきやアイデアをもたらすことができます。互いの専門性を尊重し、意見交換を活発に行うことが成功への近道です。
コミュニケーション不足を解消し、デザインを成功に導く5つのステップ
デザイン失敗の根本原因である「コミュニケーション不足」。これを解消し、プロジェクトを成功に導くためには、発注者・制作者双方が意識的に取り組むべきステップがあります。
Step 1: 事前準備を徹底する(発注者側の責務)
デザイナーに依頼する前の準備段階が、実は非常に重要です。ここでしっかりと土台を固めておくことで、その後のコミュニケーションが格段にスムーズになります。
- 社内での意思統一:デザインの目的、解決したい課題、ターゲット像について、関係者間で十分に議論し、合意形成を図る
- オリエンテーションシートやRFP(提案依頼書)の作成:上記の合意内容や、背景、要望、予算、納期などを文書化してデザイナーに提示する
- 参考資料の収集:自社の強みを示す資料、競合他社の情報、イメージに近い参考デザインなどを集めておく
- 担当者と決裁者の明確化:誰が窓口となり、誰が最終決定権を持つのかを明確にし、デザイナーに伝える
- 質問事項の準備:デザイナーに確認したいこと、懸念点などをリストアップしておく
この事前準備を丁寧に行うことで、発注者側の考えが整理され、デザイナーもプロジェクトの全体像を正確に把握しやすくなります。
Step 2: ヒアリングを重視する(発注者・制作者双方の努力)
オリエンテーションや最初の打ち合わせでのヒアリングは、プロジェクトの方向性を決定づける重要なプロセスです。
- 時間をかけた丁寧な対話:表面的な要望だけでなく、「なぜそう考えるのか?」「背景には何があるのか?」を深く掘り下げる
- 本質的な課題の探求:発注者の言葉の裏にある、本当の課題やニーズを引き出すための質問を重ねる(デザイナー側)
- オープンな情報提供:自社の状況や課題について、可能な限りオープンに、具体的に伝える(発注者側)
- 分かりやすい言葉での対話:専門用語を避け、お互いが理解できる言葉でコミュニケーションを図る
- 認識合わせの徹底:打ち合わせの内容は議事録にまとめ、双方で確認し、認識のズレがないかを確認する
ヒアリングは、単なる情報収集の場ではなく、相互理解を深め、信頼関係を築くための第一歩です。
Step 3: 定期的な進捗共有と建設的なフィードバック
制作が始まってからも、コミュニケーションは途切れさせてはいけません。定期的な進捗確認と、質の高いフィードバックが不可欠です。
- マイルストーンの設定:プロジェクトを段階に分け、節目ごとに進捗報告会やレビューの機会を設ける
- デザイン意図の説明:デザイナーは、制作物の意図や考え方を丁寧に説明する
- 具体的で建設的なフィードバック:「なんとなく違う」ではなく、「〇〇の目的を考えると、△△の部分は□□の方が良いのでは?」のように、理由と代替案を添えて具体的に伝える(発注者側)
- フィードバックの一元化と記録:社内の意見を集約し、窓口担当者から伝える。フィードバック内容と対応方針を記録に残す
- 迅速なレスポンス:問い合わせや確認依頼には、できるだけ速やかに対応する
このプロセスを繰り返すことで、認識のズレを早期に発見・修正し、最終的なイメージの乖離を防ぐことができます。
あるWeb制作プロジェクトでは、週に一度、30分程度の定例ミーティングを設定しました。デザイナーが進捗状況と現時点でのデザイン案を画面共有で見せ、発注者側はその場で質問したり、フィードバックを伝えたりします。短い時間でも顔を合わせて対話することで、メールやチャットだけでは伝わりにくいニュアンスも共有でき、スムーズにプロジェクトを進めることができました。こうした定期的な接点が、信頼関係の醸成にも繋がりました。
Step 4: 共通言語を持つ努力
発注者とデザイナーは、それぞれ異なる知識や経験を持っています。スムーズな意思疎通のためには、お互いが歩み寄り、「共通言語」を増やしていく努力が必要です。
- 基礎知識の習得(発注者側):デザインの基本的な考え方や、マーケティングに関する基本的な用語を理解しておくと、デザイナーの提案意図を理解しやすくなる
- 業界・ビジネス理解(制作者側):発注者の属する業界の特性や、ビジネスモデル、専門用語などを積極的に学び、理解を深める
- 参考事例の活用:言葉だけでは伝わりにくいイメージは、「こんな雰囲気」「このサイトのような感じ」といった参考事例を用いて具体的に示す
- 抽象的な表現を避ける:「いい感じに」「かっこよく」「よしなに」といった曖昧な言葉ではなく、できるだけ具体的な言葉で要望や評価を伝える
お互いの領域に対するリスペクトを持ちつつ、理解を深めようと努める姿勢が、より質の高いコミュニケーションを生み出します。
Step 5: パートナーシップを築く
理想的なのは、発注者とデザイナーが単なる「発注者」と「受注者」という関係性を超え、ビジネスの成功という共通の目標に向かって共に歩む「パートナー」となることです。
- 信頼関係の構築:短期的な損得だけでなく、長期的な視点で互いを尊重し、信頼し合える関係を目指す
- 対等な立場での対話:一方的な指示や要求ではなく、対等な立場で意見交換を行う
- 成功と失敗の共有:プロジェクトの結果を共有し、成功要因や改善点を分析し、次の取り組みに活かす文化を育む
- 継続的な関係性:一度きりの取引で終わらせず、継続的に相談できる関係性を築くことで、より深いレベルでの連携が可能になる
デザイナーは、企業のビジネス成長に貢献できる可能性を秘めた存在です。良きパートナーとして長期的な関係を築くことができれば、デザインはより強力な経営資源となり得ます。
良いデザインは、良いコミュニケーションから生まれる
本記事では、「なぜデザインで失敗するのか?」という問いに対し、その根本原因が「コミュニケーション不足」にあることを詳しく解説してきました。
情報共有、目的意識の共有、ターゲット理解、期待値調整、意思決定プロセスの共有、そしてデザイナーへの理解。これらのいずれか、あるいは複数が不足することによって、デザインは本来持つべき力を発揮できず、期待外れの結果に終わってしまうのです。
逆に言えば、発注者と制作者が意識的にコミュニケーションを密にし、互いを理解し尊重し合う努力をすれば、デザインの成功確率は格段に高まります。 事前準備を徹底し、丁寧なヒアリングを行い、定期的に進捗を共有し、建設的なフィードバックを交わし、共通言語を持ち、そして信頼に基づいたパートナーシップを築くこと。これらが、効果的なデザインを生み出すための重要な鍵となります。
デザインは、単なる色や形の問題ではありません。企業の課題を解決し、ビジネス目標を達成するための戦略的なツールです。そして、そのツールを最大限に活かすためには、人間同士の丁寧なコミュニケーションが不可欠なのです。
良いデザインは、良いコミュニケーションから生まれます。
この記事が、皆様のデザインに関する取り組みを見直し、より良い成果を生み出すための一助となれば幸いです。まずは、自社のデザイン制作プロセスにおけるコミュニケーションのあり方を、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
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