現代社会において、企業の役割は単に利益を追求するだけにとどまらず、社会全体の持続可能性に貢献することが求められるようになりました。特に、SDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されて以降、その流れは加速しています。

環境問題、社会格差、人権問題など、地球規模の課題解決に向けて、企業が積極的に関与することは、もはや特別なことではなく、事業活動を行う上での新たなスタンダードとなりつつあります。

このような時代背景の中、企業が自社の理念や価値観、そして社会に対する意志を明確に示し、ステークホルダーからの共感と信頼を得ることが、これまで以上に重要になっています。そして、その企業の「意志」を効果的に伝え、良好なブランドイメージを構築する上で、デザインは非常に強力なツールとなります。

デザインと聞くと、見た目の美しさや装飾的な要素を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本質的なデザインの力は、それだけではありません。企業の理念やビジョンを可視化し、製品やサービス、コミュニケーション活動を通じて、一貫したメッセージを発信すること。それこそが、現代におけるデザインの重要な役割です。

特に、リソースが限られる中小零細企業にとって、SDGsへの取り組みやブランドイメージの構築は、大企業だけの話だと思われるかもしれません。しかし、むしろ中小零細企業だからこそ、独自の強みや地域社会との繋がりを活かし、デザインを通じてその意志を発信することで、大きな競争優位性を築くことが可能なのです。

本記事では、SDGs時代の企業経営において、デザインがいかにブランドイメージ戦略の核となり得るのか、そして中小零細企業がデザインの力を最大限に活用するためのヒントについて、プロの視点から解説していきます。

SDGsとは:未来への羅針盤

まず、SDGsについて簡単におさらいしておきましょう。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

  • 17のゴール:貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、水・衛生、エネルギー、経済成長、産業・技術革新、不平等、都市、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源、平和、パートナーシップ
  • 169のターゲット:各ゴールを達成するための具体的な目標
  • 普遍性:先進国・途上国を問わず、すべての国と地域が取り組むべき目標

これら17のゴールは、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。

企業にとって、SDGsへの取り組みは、単なる慈善活動や社会貢献活動ではありません。企業の持続的な成長に不可欠な経営戦略そのものとして捉えるべき時代になっています。なぜなら、現代の消費者は、製品やサービスの品質や価格だけでなく、それらを提供する企業の社会的・環境的な側面にも注目するようになっているからです。環境に配慮しているか、人権を尊重しているか、地域社会に貢献しているかといった点が、購買の意思決定に大きな影響を与えるようになっています。

また、投資家も企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを重視する傾向が強まっています。長期的な視点で企業の持続可能性を評価し、投資判断を行うESG投資は、世界的に拡大しています。さらに、優秀な人材を確保するという観点からも、SDGsへの貢献は重要です。特に若い世代は、社会課題への関心が高く、自らの仕事を通じて社会に貢献したいと考える人が増えています。企業の理念やSDGsへの取り組みに共感できるかどうかが、就職先を選ぶ上で重要な要素となっているのです。

中小零細企業にとっても、SDGsへの取り組みは決して他人事ではありません。むしろ、地域社会との距離が近く、経営者の想いを反映しやすい中小零細企業だからこそ、独自の形でSDGsに貢献し、それを強みとすることができます。

  • 新たな事業機会の創出:社会課題解決に繋がる製品・サービスの開発
  • コスト削減:省エネルギー化や廃棄物削減による効率化
  • ブランドイメージ向上:社会貢献企業としての評価向上
  • 従業員エンゲージメント向上:自社の仕事への誇りとモチベーション向上
  • 資金調達の円滑化:ESG投資や融資制度の活用
  • 地域社会との連携強化:地域からの信頼と協力の獲得

このように、SDGsへの取り組みは、中小零細企業にとっても多くのメリットをもたらし、持続的な成長の基盤を築く上で不可欠な要素と言えるでしょう。

ブランドイメージ:見えない資産の力

次に、ブランドイメージについて考えてみましょう。ブランドイメージとは、消費者が特定の企業やその製品・サービスに対して抱く、印象や感情、連想の総体のことを指します。それは、ロゴマークやキャッチフレーズといった目に見える要素だけでなく、企業の歴史、理念、活動、顧客体験、評判など、様々な要素が複合的に作用して形成される、いわば「見えない資産」です。

なぜ、このブランドイメージが企業にとって重要なのでしょうか。それは、顧客の心の中に築かれる信頼と共感の証であり、企業の競争優位性を左右する大きな力を持っているからです。

  • 購買意欲の向上:好意的なブランドイメージは、製品やサービスへの興味関心を高め、購買へと繋がりやすくなります。
  • 顧客ロイヤリティの醸成:信頼や愛着を感じるブランドに対して、顧客は繰り返し購入したり、他者に推奨したりするようになります。
  • 価格競争からの脱却:強いブランドイメージを持つ企業は、単なる価格競争に巻き込まれにくく、適正な価格で製品やサービスを提供できます。
  • 人材獲得への貢献:魅力的なブランドイメージは、優秀な人材を引きつけ、採用活動を有利に進めることができます。
  • 危機管理能力の向上:万が一、不祥事などが発生した場合でも、日頃から良好なブランドイメージを築いていれば、ダメージを最小限に抑え、回復を早めることができます。

特に中小零細企業にとっては、広告宣伝費などのリソースが限られている中で、強力なブランドイメージを構築することは、大手企業と伍していくための重要な戦略となります。独自の強みやストーリーを効果的に伝え、顧客との間に強い絆を築くことができれば、規模の大小に関わらず、市場で確固たる地位を確立することが可能です。

しかし、ブランドイメージは一朝一夕に構築できるものではありません。日々の企業活動、製品・サービスの品質、顧客とのコミュニケーションなど、あらゆる接点における体験の積み重ねによって、時間をかけて醸成されていくものです。そして、一度損なわれた信頼を回復することは、非常に困難です。だからこそ、企業は長期的な視点に立ち、一貫性のあるメッセージを発信し続けることで、着実にブランドイメージを築き上げていく必要があります。

デザインの力:意志をカタチに、想いを届ける

ここで、本記事のテーマである「デザイン」が登場します。SDGsへの取り組みやブランドイメージの構築において、デザインはどのような役割を果たすのでしょうか。

デザインと聞くと、多くの人はまず「見た目の美しさ」や「格好良さ」を連想するかもしれません。もちろん、審美性はデザインの重要な要素の一つです。しかし、デザインの本質はそれだけにとどまりません。デザインとは、企業の理念やビジョン、価値観といった「意志」や「想い」を、具体的な「カタチ」に落とし込み、ターゲットに効果的に伝えるためのコミュニケーションツールなのです。

私たちの身の回りには、様々なデザインが存在します。

  • ロゴマークやシンボル:企業の顔となり、アイデンティティを視覚的に表現
  • ウェブサイト:情報提供の場であると同時に、企業の姿勢や世界観を伝えるメディア
  • 製品パッケージ:製品の魅力を伝え、購買意欲を刺激する
  • 広告・パンフレット:メッセージを効果的に伝え、ターゲットの心を動かす
  • 店舗やオフィス空間:ブランドの世界観を体感させ、顧客や従業員の体験価値を高める
  • 名刺や封筒:細部にまでこだわることで、信頼性やプロフェッショナリズムを演出

これらあらゆる顧客接点(タッチポイント)において、デザインは企業の「声」となり、メッセージを発信しています。そして、それらのデザインが一貫したトーン&マナーで展開されることで、企業のブランドイメージはより強固なものとなります。

優れたデザインは、単に情報を伝えるだけでなく、ストーリーを語り、人々の感情に訴えかけ、共感を生み出す力を持っています。「この会社は、環境のことを真剣に考えているな」「この製品には、作り手のこだわりが感じられる」「このサービスは、使う人のことをよく考えて作られているな」といった感覚は、多くの場合、言葉による説明以上に、デザインから伝わってくるものです。デザインは、企業の姿勢や真剣さを、雄弁に物語るのです。

例えば、ある企業が「環境への配慮」を重要な価値観として掲げているとします。その想いを伝えるために、ウェブサイトのデザインに自然をモチーフとしたアースカラーを取り入れたり、製品パッケージにリサイクル可能な素材を使用したり、オフィス空間にグリーンを多く配置したりする。こうした具体的なデザインの実践を通じて、企業は自らの意志を視覚的に、そして体験的に示すことができます。言葉だけで「環境に配慮しています」と宣言するよりも、はるかに説得力があり、人々の心に響くメッセージとなるでしょう。

このように、デザインは企業の意志を可視化し、ブランドイメージを形成する上で、欠かすことのできない重要な要素なのです。

SDGs時代のブランド戦略:デザインで未来を描く

それでは、SDGsという新たな価値基準が重視される時代において、企業はどのようにデザインを活用し、ブランドイメージ戦略を展開していくべきでしょうか。ポイントは、企業のSDGsへの取り組みを、デザインを通じて「誠実に」「分かりやすく」「魅力的に」伝えることです。

取り組みの「見える化」:透明性と信頼の構築

まず重要なのは、自社のSDGsへの取り組み内容や成果を、ステークホルダーに対して透明性を持って開示することです。その際、デザインは情報を整理し、分かりやすく伝える上で大きな力を発揮します。

  • ウェブサイトにおける専用ページの設置:SDGsへの貢献目標や具体的な活動内容、進捗状況などを、体系的に、かつ視覚的に分かりやすく掲載する
  • サステナビリティレポートや統合報告書のデザイン:専門的な内容を、インフォグラフィックや図表を効果的に用い、読みやすく、理解しやすいように工夫する
  • 活動報告のニュースレターやSNS発信:写真や動画を効果的に活用し、現場の様子や関係者の声を伝えることで、リアリティと共感を呼ぶ

ただ情報を羅列するのではなく、デザインの力でストーリー性を加え、企業の真摯な姿勢が伝わるように表現することが重要です。例えば、グラフ一つをとっても、色使いやレイアウトを工夫することで、メッセージの伝わり方は大きく変わります。専門用語を避け、平易な言葉で説明することも大切です。こうした丁寧なコミュニケーションデザインが、企業の透明性を高め、ステークホルダーからの信頼獲得に繋がります。

製品・サービスにおけるデザイン:サステナビリティの実践

企業のSDGsへの意志を示す上で、最も説得力を持つのは、やはり製品やサービスそのものです。製品・サービスのデザインを通じて、サステナビリティへの配慮を具体的に示すことができれば、それは強力なブランドメッセージとなります。

  • 素材選定:環境負荷の少ない再生素材や天然素材、地元産の素材などを積極的に採用する
  • パッケージデザイン:過剰包装を避け、リサイクル可能な素材や植物由来のインクを使用する。パッケージ自体に、素材の由来やリサイクル方法などの情報を分かりやすく表示する
  • 製品設計:耐久性が高く、修理しやすい設計にする。リサイクルやリユース、アップサイクルを前提としたデザインを取り入れる
  • ライフサイクルアセスメント(LCA)の考慮:製品の企画・開発段階から、原材料調達、製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの環境負荷を評価し、低減を図る

例えば、地方のある食品メーカーの物語を想像してみましょう。そのメーカーは、これまで市場に出回らず廃棄されていた規格外の野菜や果物を活用したジャムやソースを開発しました。そして、その製品パッケージには、農家の想いや食品ロス削減への取り組みを伝えるストーリーを、温かみのあるイラストレーションと共にデザインしました。さらに、瓶のリサイクルを促すメッセージも添えられています。この商品は、単に美味しいだけでなく、その背景にあるストーリーとサステナブルな姿勢に共感した消費者から支持を集め、ヒット商品となりました。これは、製品デザインとストーリーテリングが、企業のSDGsへの意志を体現し、ブランド価値を高めた好例と言えるでしょう。

コミュニケーションデザイン:共感を広げる

企業のSDGsへの取り組みを広く伝え、社会的な共感を広げていくためには、効果的なコミュニケーションデザインが不可欠です。

  • 広告・プロモーション:SDGsへの貢献を、単なるアピールではなく、企業の真摯な姿勢として伝える表現を心がける。ターゲットの価値観やライフスタイルに寄り添い、共感を呼ぶメッセージとビジュアルを開発する
  • SNSでの発信:企業の取り組みを、親しみやすく、分かりやすい言葉とビジュアルで発信する。双方向のコミュニケーションを通じて、フォロワーとのエンゲージメントを高める
  • イベント・展示会:ブースデザインや配布物を通じて、企業のSDGsへの取り組みを体験的に伝える。来場者との対話を通じて、理解と共感を深める
  • インターナルブランディング:従業員に対して、自社のSDGsへの取り組みの意義や目的を共有し、理解と共感を促すための社内報やポスター、研修資料などをデザインする。従業員一人ひとりが自社の活動に誇りを持ち、主体的に関与できるような環境づくりを支援する

SDGsへの取り組みを、企業からの一方的なメッセージとして伝えるのではなく、社会全体の課題として捉え、生活者や他の企業と共に解決していく姿勢を示すことが重要です。「自分たちの活動が、より良い未来に繋がっている」というポジティブなメッセージを、デザインを通じて発信することで、人々はSDGsへの取り組みを「自分ごと」として捉え、共感し、応援してくれるようになるでしょう。

中小零細企業のデザイン活用術:一歩先のブランドへ

ここまで、SDGs時代のブランドイメージ戦略におけるデザインの重要性について述べてきました。しかし、特に中小零細企業の経営者や担当者の方からは、「デザインの重要性は理解できるが、具体的に何から始めれば良いのか分からない」「限られた予算やリソースの中で、効果的なデザイン投資を行うにはどうすれば良いのか」といった声が聞かれるかもしれません。

ここでは、中小零細企業がデザインを効果的に活用し、ブランドイメージを高めるための実践的なポイントをいくつかご紹介します。

核となる価値観の明確化

デザイン戦略を進める上で、まず最初に取り組むべき最も重要なことは、自社が本当に大切にしていること、社会に対してどのような価値を提供したいのか、という「核となる価値観」を明確にすることです。

  • 自社の存在意義(パーパス)は何か?
  • どのような未来を実現したいのか(ビジョン)?
  • 事業活動を通じて、どのSDGsゴールに貢献できるか?
  • 他社にはない、自社ならではの強みやストーリーは何か?

これらの問いに対して、経営者だけでなく、従業員も交えて議論し、自社の「軸」となる理念や想いを言語化することが、デザインの方向性を決定する上での羅針盤となります。この核となる価値観が曖昧なままデザインを進めてしまうと、一貫性のない、メッセージ性の弱いものになってしまいます。

ターゲットの理解と共感

次に重要なのは、「誰に、何を伝えたいのか」を明確にすることです。自社の製品やサービスを届けたい顧客は誰なのか、そのターゲットはどのような価値観を持ち、何に関心を持っているのかを深く理解する必要があります。

  • ターゲット顧客のペルソナ設定:年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観などを具体的に描き出す
  • ターゲットのニーズや課題の把握:どのようなことに困っていて、何を求めているのかを理解する
  • 共感ポイントの探求:自社の価値観やSDGsへの取り組みと、ターゲットの関心事が重なる部分を見つける

顧客視点に立ち、ターゲットが共感できるメッセージやストーリーを、どのようなデザインで表現すれば最も効果的に伝わるのかを考える「デザイン思考」が求められます。アンケート調査やインタビューなどを実施し、ターゲットの生の声に耳を傾けることも有効です。

一貫性のあるデザイン展開

明確化された核となる価値観と、ターゲットへの理解に基づき、具体的なデザイン開発を進めていきます。その際、最も重要なのは「一貫性」です。

  • デザインコンセプトの策定:核となる価値観を、色、形、フォント、写真、イラストレーションなどの具体的なデザイン要素に落とし込む
  • ブランドガイドラインの作成:ロゴの使用ルール、カラースキーム、指定フォント、写真のトーン&マナーなどを定め、デザインの一貫性を保つための指針とする
  • あらゆるタッチポイントでの統一:ウェブサイト、パンフレット、名刺、製品パッケージ、広告、SNS、店舗など、顧客が触れる全ての接点で、統一されたデザインを展開する

ロゴだけが洗練されていても、ウェブサイトのデザインが古かったり、パンフレットの雰囲気が異なっていたりすると、ブランドイメージは散漫になり、信頼感を損なう可能性があります。細部にまで気を配り、一貫したデザインを展開することで、プロフェッショナルな印象を与え、ブランドへの信頼感を着実に高めていくことができます。

専門家(デザイナー)との連携

デザインは、単に見た目を整えるだけでなく、企業の戦略や想いを形にする専門的な知識とスキルが必要です。特に、ブランドイメージの構築やSDGsへの取り組みを効果的に伝えるためには、経験豊富なデザイナーのサポートが不可欠です。

  • パートナー選びの重要性:単に安価なだけでなく、自社の理念や価値観を深く理解し、共にブランドを創り上げてくれる熱意のあるデザイナーやデザイン会社を選ぶ
  • デザイナーへの的確なオリエンテーション:自社の核となる価値観、ターゲット、デザインで実現したい目的などを、明確に伝える
  • 継続的なコミュニケーション:デザイン制作プロセスにおいて、密接なコミュニケーションを取り、フィードバックを重ねながら、共にゴールを目指す

優れたデザイナーは、単なる「制作者」ではなく、企業の経営課題やブランド戦略について共に考え、解決策を提案してくれる「パートナー」となり得ます。中小零細企業にとって、信頼できるデザイナーとの出会いは、企業の未来を大きく左右する可能性を秘めているのです。初期投資は必要ですが、長期的な視点で見れば、プロフェッショナルなデザインへの投資は、必ずやそれ以上の価値を生み出すでしょう。

デザインが変えた未来:成功事例に学ぶ

理論だけでなく、実際の事例を見ることで、デザインが持つ力への理解はさらに深まるでしょう。ここでは、デザインを活用してブランドイメージを高め、SDGs時代の課題に対応した中小企業の架空の成功事例をいくつかご紹介します。

事例1:地域密着型工務店の挑戦

ある地方都市で長年営業してきた工務店A社は、近年、大手ハウスメーカーとの価格競争の激化や、若手職人の人材不足という課題に直面していました。そこでA社は、自社の強みである地域材の活用と、環境に配慮した高断熱・高気密な家づくりを前面に打ち出す戦略に転換しました。

まず、ウェブサイトとパンフレットのデザインを全面的にリニューアル。温かみのある木材の質感や、地域の豊かな自然を感じさせる写真、職人の丁寧な手仕事が伝わるようなデザインを採用しました。単に施工事例を紹介するだけでなく、社長の家づくりへの想いや、地域材を使うことの意義、環境への貢献といったストーリーを丁寧に語るコンテンツを充実させました。また、ロゴマークも刷新し、地域への愛着と信頼感を表現するものにしました。

結果、A社の高付加価値な家づくりと、環境・地域社会への貢献姿勢がブランドイメージとして浸透。価格競争から一歩抜け出し、質の高い家を求める顧客からの問い合わせが増加しました。さらに、A社の理念に共感した若い世代からの求人応募も増え、人材確保にも繋がりました。デザインを通じて企業の意志を明確に発信したことが、事業の好転に繋がったのです。

事例2:老舗和菓子店の再生

創業100年を迎える老舗和菓子店B社は、伝統の味を守り続ける一方で、顧客層の高齢化や、やや古風なイメージからの脱却が課題でした。そこでB社は、SDGsの目標の一つである「食品ロス削減」に着目。地元農家と連携し、形が不揃いなために市場に出回らない規格外の果物を使った新しい和菓子(フルーツ大福や羊羹など)を開発しました。

この新商品の展開にあたり、パッケージデザインを一新。伝統的な和の要素は残しつつも、モダンで洗練されたデザインを採用し、若い世代にも手に取ってもらいやすいように工夫しました。パッケージには、商品の背景にあるストーリー(農家との連携、食品ロス削減への想い)を伝える小さなカードを添えました。また、InstagramなどのSNSを活用し、美しい商品写真と共に、開発秘話やサステナブルな取り組みについて積極的に発信しました。

その結果、新商品は若い世代を中心に大きな反響を呼び、新たな顧客層の獲得に成功しました。B社のサステナブルな取り組みはメディアにも取り上げられ、老舗でありながら時代に合わせて進化する企業として、ブランドイメージが大きく向上しました。伝統と革新をデザインで見事に融合させた事例と言えます。

事例3:IT系スタートアップのブランディング

社会課題解決型のサービスを提供するIT系スタートアップC社は、革新的な技術を持つ一方で、設立間もないために社会的信頼性の獲得や、競合他社との差別化が課題でした。そこでC社は、自社の技術がどのように社会に貢献できるのか、というビジョンを明確にし、それを軸としたブランディング戦略を展開しました。

まず、ロゴマークとコーポレートサイトのデザインを、先進性と同時に誠実さや信頼感が伝わるように設計。サービス紹介資料や投資家向けのプレゼンテーション資料も、専門的な内容を分かりやすく、かつ魅力的に伝えるデザインにこだわりました。特に、自社のサービスがSDGsのどの目標達成に貢献するのかを具体的に示し、社会的なインパクトを視覚的に訴求することを重視しました。

その結果、C社のビジョンと技術力、そして社会貢献への姿勢が投資家やパートナー候補企業から高く評価され、資金調達や事業提携がスムーズに進展しました。また、企業のパーパスに共感した優秀なエンジニアやビジネスパーソンからの応募が増え、採用活動においても大きな成果を上げています。スタートアップにとって、初期段階からデザインを戦略的に活用し、企業の意志と信頼性を的確に伝えることの重要性を示す事例です。

これらの事例は架空のものですが、デザインが企業の課題解決や成長にどのように貢献できるか、具体的なイメージを持っていただけたのではないでしょうか。

デザインという名の未来への投資

本記事では、「デザインで語る企業の意志。SDGs時代のブランドイメージ戦略」というテーマで、現代におけるデザインの重要性と、その活用方法について解説してきました。

もはや企業は、利益追求だけでなく、社会全体の持続可能性に貢献することが求められる時代です。SDGsという世界共通の目標が示すように、環境や社会に配慮した経営は、企業の存続と成長に不可欠な要素となっています。

このような時代において、デザインは単なる表面的な装飾ではありません。企業の理念や価値観、社会への貢献意欲といった「意志」を可視化し、ステークホルダーとの間に共感と信頼を築くための、極めて重要な経営資源です。ロゴ、ウェブサイト、製品、サービス、コミュニケーション活動… あらゆる企業活動のデザインを通じて、自社の姿勢を一貫して示していくことが、これからのブランドイメージ戦略の核となります。

特に、地域社会に根ざし、経営者の想いを反映しやすい中小零細企業にとって、デザインは大きな可能性を秘めています。自社の独自の強みやストーリー、そしてSDGsへの貢献意欲を、デザインを通じて効果的に発信することで、大手企業にも負けない競争優位性を確立し、未来を切り拓く鍵となり得るのです。

デザインへの投資は、目に見える成果、例えば売上向上や顧客獲得だけでなく、従業員のモチベーション向上や誇りの醸成、組織文化の活性化といった、目に見えないけれど重要な価値をもたらします。社員が自社の理念や活動に共感し、誇りを持って働くようになれば、企業は内側からさらに強くなっていきます。

未来を見据えたデザインへの投資は、短期的なコストではなく、企業の持続的な成長を加速させるための戦略的な「投資」です。ぜひ、この機会に、自社の「意志」がデザインを通じて正しく、そして魅力的に伝わっているか、見つめ直してみてはいかがでしょうか。

この記事が、皆様の会社のブランド戦略、そしてデザイン活用のヒントとなれば幸いです。


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