伝わらない…その原因は「言葉」と「絵」の不協和音かも?

企業の顔とも言えるWebサイトやパンフレット、広告。一生懸命考えたキャッチコピー、時間と費用をかけて作ったデザイン。それなのに、なぜかお客様に響かない、意図したメッセージが伝わらない…。そんな悩みを抱えていらっしゃる中小零細企業の経営者様、マーケティング担当者様、ホームページ運用責任者様は少なくないのではないでしょうか。

「伝えたいことはたくさんあるはずなのに」「もっと魅力的な商品・サービスのはずなのに」と感じるその背景には、「言葉(キャッチコピー、文章)」と「絵(デザイン、ビジュアル)」がうまく連携できていない、場合によっては互いの足を引っ張り合っている、というケースが潜んでいるかもしれません。

どちらも単体では魅力的でも、組み合わせたときにチグハグな印象を与えてしまっては、せっかくの努力が水の泡です。まるで、方向性の違う二人が無理やり手をつないで歩いているような、ぎこちなさが生まれてしまうのです。

この記事では、なぜ言葉とデザインの調和が重要なのか、そして、どうすれば両者が互いを引き立て合い、企業のメッセージを最大限に伝える「最適解」を見つけられるのか、そのヒントを探っていきます。プロのマーケター、そしてコピーライターの視点から、言葉と絵の効果的な連携について考えていきましょう。

なぜ言葉とデザインの調和が重要なのか?:メッセージを届けるための絶対条件

まず、なぜキャッチコピーとデザイン、つまり「言葉」と「絵」の調和がそれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、人が情報を受け取るプロセスと、ブランドイメージ構築の仕組みに深く関わっています。

第一印象はデザイン、理解はコピーで深まる

人は情報に触れたとき、まず視覚的な要素、つまりデザインに目を奪われます。いわゆる「第一印象」です。美しい、洗練されている、楽しそう、信頼できそう…といった感覚的な判断は、ほんの数秒、あるいはコンマ数秒で行われると言われています。ここで「自分には関係ない」「怪しい」「分かりにくい」といったネガティブな印象を持たれてしまうと、その先にあるどんなに素晴らしい言葉(コピー)も読んでもらえません。

しかし、デザインだけで全てを伝えることは困難です。デザインで興味を引きつけ、注意を惹きつけた後、その企業や商品・サービスが具体的に何を提供してくれるのか、どんな価値があるのかを理解してもらうためには、的確な「言葉」が不可欠になります。デザインが「扉」だとすれば、コピーは「部屋の中の案内役」と言えるでしょう。扉だけ立派でも、中の案内がなければ、お客様は迷ってしまいます。

メッセージの明確化と一貫性:言葉とデザインのベクトルを合わせる

企業が伝えたいメッセージは、一つとは限りません。しかし、その核となるコンセプトや価値観は、明確であるべきです。言葉が示す方向性と、デザインが醸し出す雰囲気が一致して初めて、そのメッセージはブレなく、強く、明確にターゲットに届きます。

例えば、「長年の経験と実績に裏打ちされた、信頼性の高いサービス」を訴求したいのに、デザインが奇抜でポップすぎたり、キャッチコピーが軽々しい口調だったりしたらどうでしょう?受け手は混乱し、「本当に信頼できるのだろうか?」と疑問を抱いてしまうかもしれません。逆に、「若い世代に向けた、革新的でフレンドリーな商品」なのに、デザインが古臭く、堅苦しい専門用語ばかりのコピーが並んでいたら、ターゲット層は自分向けの商品だとは感じないでしょう。

  • 高級感を打ち出すコピー:チープで安っぽいデザインはNG
  • 親しみやすさをアピールするコピー:堅苦しく、とっつきにくいデザインはNG
  • スピード感を強調するコピー:動きのない、静的なデザインはNG
  • 安心感を伝えたいコピー:不安を煽るような色使いや不安定なレイアウトはNG

このように、言葉とデザインの間に「ズレ」が生じると、メッセージの信頼性が揺らぎ、本来伝えたかった価値が半減、あるいは誤って伝わってしまう危険性があるのです。

ブランドイメージの構築:一貫性が信頼と共感を育む

企業のブランドイメージは、一朝一夕に作られるものではありません。Webサイト、広告、パンフレット、SNS、店舗…あらゆる顧客接点において、一貫したメッセージ(言葉)と表現(デザイン)を継続的に発信し続けることで、少しずつ形作られていきます。

言葉とデザインのトーン&マナー(トンマナ)が統一されていると、顧客は「あの会社らしいな」と感じ、安心感や親近感を覚えます。この「らしさ」の積み重ねが、他社との差別化につながり、顧客のロイヤリティ(愛着や信頼)を高めていくのです。逆に、媒体ごとに言っていることや見た目の印象がコロコロ変わると、「一体どんな会社なんだろう?」「軸がブレているのでは?」という不信感につながりかねません。

言葉とデザインの調和は、単に見た目の美しさや分かりやすさだけでなく、企業の信頼性やブランド価値そのものを左右する、非常に重要な要素なのです。

「喧嘩」はなぜ起こるのか?:言葉と絵がすれ違う原因

では、なぜ言葉とデザインが「喧嘩」してしまう、つまり、ちぐはぐになってしまうのでしょうか。その原因は、制作のプロセスや、関係者の意識の中に潜んでいることが多いようです。

原因1:役割分担の弊害と連携不足

多くの場合、コピーライティングとデザインは、それぞれ専門の担当者や外部パートナーによって進められます。コピーライターは言葉を練り上げ、デザイナーはビジュアルを作り込む。それ自体は専門性を活かす上で自然な流れですが、問題は、その間での連携が不足している場合に起こります。

  • コンセプト共有の不足:プロジェクトの目的、ターゲット、伝えたい核となるメッセージについて、関係者間での認識がズレている。デザイナーは「かっこよさ」を追求し、コピーライターは「分かりやすさ」を追求するなど、目指す方向が異なっている。
  • 作業の分断:「コピーは後で入れるから、先にデザインだけ作っておいて」「デザインはまだ決まらないけど、とりあえずコピー案をいくつか」といったように、完全に別々の工程として進めてしまう。
  • コミュニケーション不足:互いの意図や考えを十分に伝え合わず、確認やフィードバックの機会が少ない。「デザイナーが良い感じにしてくれるだろう」「コピーライターがうまいこと書いてくれるだろう」という期待だけで進んでしまう。

このように、共通のゴールを見据えずに、それぞれの担当者が自分の領域だけで作業を進めてしまうと、最終的に組み合わせたときに、意図しないズレや違和感が生じやすくなります。

原因2:思い込みと固定観念

「デザインはあくまで飾り、重要なのは中身(文章)だ」「キャッチコピーなんて適当でいい、見た目が良ければ売れる」といった、どちらか一方を軽視するような思い込みも、言葉とデザインの不協和音を生む原因となります。

また、経営者や担当者自身の個人的な好みや、過去の成功体験に固執してしまうケースも少なくありません。「以前このコピーでうまくいったから」「社長がこの色が好きだから」といった理由だけで、本来の目的やターゲットの視点からズレた判断をしてしまうことがあります。

さらに、「この業界ではこういうデザインが普通だから」「競合他社もこういうコピーを使っているから」と、業界の慣習や常識にとらわれすぎて、自社の個性や強みを表現しきれていない、あるいは、時代に合わない表現になってしまっている可能性もあります。

原因3:時間と予算の制約

特に中小零細企業においては、時間や予算が限られている中で制作を進めなければならない場面が多いでしょう。

  • タイトなスケジュール:コンセプトの検討や、コピーとデザインのすり合わせに十分な時間をかけられないまま、見切り発車で進めてしまう。
  • コスト削減の弊害:予算を抑えるために、コピーかデザインのどちらか、あるいは両方の質を妥協してしまう。「デザインは無料テンプレートで済ませよう」「コピーは社内の人間が適当に考えよう」といった判断が、結果的にチープな印象やメッセージの伝わりにくさを招くことがあります。
  • 修正・改善の機会不足:一度完成したものに対して、「時間がないから」「追加費用がかかるから」と、違和感に気づいても修正せずにそのまま公開・使用してしまう。

もちろん、限られたリソースの中で最善を尽くすことは重要ですが、時間やコストを理由に、言葉とデザインの連携という本質的な部分を疎かにしてしまうと、結局は効果の低い、もったいない制作物になってしまう可能性があるのです。

これらの原因は、一つだけでなく複合的に絡み合っている場合も多くあります。自社の制作プロセスや意思決定の在り方を見つめ直し、どこに問題があるのかを把握することが、改善への第一歩となります。

言葉と絵の「最適解」を見つけるヒント:調和を生み出すための思考法

言葉とデザインの「喧嘩」を避け、互いを引き立て合う「最適解」を見つけるためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、そのための具体的なヒントをいくつかご紹介します。

ヒント1:コンセプトの明確化と共有

全てのクリエイティブ活動の出発点であり、最も重要なのが「コンセプト」です。誰に(ターゲット)、何を伝え(メッセージ)、どのような印象を与えたいのか(トーン&マナー)。これを曖昧なまま進めてしまうと、必ずどこかで方向性がブレてしまいます。

  • 関係者全員での合意形成:経営者、担当者、そして制作に関わるデザイナーやコピーライター(外部パートナー含む)など、関係者全員が早い段階で集まり、プロジェクトの目的やターゲット像、伝えたい核となる価値について徹底的に議論し、共通認識を持つことが不可欠です。
  • コンセプトシートやペルソナ設定の活用:議論した内容を「コンセプトシート」のような形にまとめ、いつでも立ち返れるようにしておくと良いでしょう。ターゲット顧客の具体的な人物像(ペルソナ)を設定することも、メッセージや表現を考える上で非常に役立ちます。
  • 「なぜ?」を突き詰める:「この商品を売りたい」だけでなく、「なぜこの商品をターゲットに届けたいのか」「それによってターゲットにどうなってほしいのか」といった背景や想いまで掘り下げて共有することで、より深く、一貫性のあるコンセプトが生まれます。

明確化され、共有されたコンセプトは、言葉とデザイン双方にとっての「羅針盤」となります。判断に迷ったとき、意見が分かれたとき、常にこの羅針盤に立ち返ることで、ブレることなくゴールを目指すことができます。

ヒント2:相互理解と尊重

コピーライターとデザイナーは、それぞれの専門分野のプロフェッショナルです。しかし、良いクリエイティブを生み出すためには、自分の領域だけに閉じこもるのではなく、互いの仕事に対する理解と尊重が欠かせません。

  • 相手の意図を汲み取る努力:デザイナーは「このコピーが伝えたいニュアンスは何か?」を考え、コピーライターは「このデザインが表現しようとしている世界観は何か?」を理解しようと努める姿勢が大切です。
  • 活発な意見交換:「このコピーなら、こういうデザインの方がより伝わるのでは?」「このデザインの雰囲気に合わせて、コピーのトーンを少し調整できませんか?」といった、建設的な意見交換を積極的に行いましょう。
  • 補完し合う意識:言葉だけでは伝えきれない感情や雰囲気をデザインで表現し、デザインだけでは分かりにくい具体的な情報やメッセージを言葉で補う。このように、互いの強みを活かし、弱点を補い合うという意識を持つことで、より豊かで効果的な表現が可能になります。

お互いの専門性をリスペクトしつつ、遠慮なく意見をぶつけ合える関係性を築くことが、言葉とデザインの相乗効果を生み出す鍵となります。

ヒント3:ターゲット視点の徹底

どんなに素晴らしいコピーやデザインも、それがターゲットに響かなければ意味がありません。制作プロセスにおいては、常に「ターゲットはこの表現をどう受け止めるだろうか?」という視点を持ち続けることが重要です。

  • ターゲットの言葉で語る:社内だけで通用する専門用語や、業界特有の言い回しではなく、ターゲットが普段使っている言葉や、理解しやすい表現を心がけましょう。
  • ターゲットの感性に響くビジュアル:ターゲットの年齢層、性別、ライフスタイル、価値観などを考慮し、共感を呼ぶ、あるいは興味を引くようなデザインテイスト、色使い、写真・イラストを選びましょう。
  • 客観的なフィードバックの活用:作り手の思い込みだけで判断せず、社内の他の部署の人や、可能であればターゲットに近い層の人々に意見を聞いてみることも有効です。「分かりにくい」「イメージと違う」「魅力的に感じない」といった率直なフィードバックは、改善のための貴重なヒントとなります。

「自分たちが伝えたいこと」と「ターゲットが知りたいこと・感じたいこと」のギャップを埋める努力が、真に伝わるコミュニケーションには不可欠です。

ヒント4:シンプルさの追求

現代は情報過多の時代です。人々は日々、膨大な量の情報に接しており、一つ一つの情報にかけられる時間は限られています。だからこそ、伝えたいメッセージは欲張らず、最も重要な核心部分に絞り込む勇気が必要です。

  • ワンメッセージ・ワンビジュアルの原則:一つの広告やページで伝えたいことは、できるだけ一つに絞る。それに合わせて、キーとなるビジュアルもシンプルに、メッセージを効果的に補強するものを選びます。
  • 要素の詰め込みすぎに注意:コピーもデザインも、情報を詰め込みすぎると、結局何が言いたいのか分からなくなってしまいます。余白を活かしたデザインや、簡潔で分かりやすい言葉を選ぶことを意識しましょう。
  • 「引き算」の思考:「これも伝えたい、あれも載せたい」と要素を足していくのではなく、「本当に必要なものは何か?」を見極め、それ以外の要素を削ぎ落としていく「引き算」の考え方を取り入れることで、メッセージはよりシャープに、力強くなります。

シンプルであることは、分かりやすさ、伝わりやすさに直結します。複雑な情報を整理し、本質を抽出する作業が、言葉とデザイン双方に求められます。

ヒント5:一貫性の維持

Webサイト、パンフレット、名刺、広告、SNSアカウント…企業が持つ様々なコミュニケーションツールにおいて、言葉遣いやデザインのトーン&マナー(トンマナ)が一貫していることは、信頼感とブランドイメージの構築に不可欠です。

  • トンマナの統一:例えば、Webサイトでは親しみやすい口調なのに、パンフレットでは非常に堅苦しい言葉遣いだったり、広告ではポップなデザインなのに、名刺は非常にコンサバティブなデザインだったりすると、顧客は混乱してしまいます。目指すべきブランドイメージに基づき、言葉のトーン(丁寧、フレンドリー、専門的など)やデザインのスタイル(色使い、フォント、レイアウトの規則など)を統一しましょう。
  • ブランドガイドラインの策定と運用:特に複数の担当者や外部パートナーが関わる場合は、ブランドロゴの使用ルール、カラースキーム、フォント指定、コピーライティングの指針などをまとめた「ブランドガイドライン」を作成し、関係者全員で共有・遵守することが非常に有効です。これにより、誰が担当しても一定の品質と一貫性を保つことができます。

媒体が変わっても「あの会社らしさ」が感じられる。そんな一貫性のあるコミュニケーションが、顧客の中に揺るぎないブランドイメージを築き上げていくのです。

これらのヒントを参考に、自社のコミュニケーションにおける「言葉」と「絵」の関係性を見直し、より効果的な表現を目指してみてはいかがでしょうか。

実践!言葉とデザインを融合させるプロセス:アイデアをカタチにする流れ

コンセプトを明確にし、ターゲット視点を持つことの重要性を理解した上で、実際に言葉(コピー)とデザインをどのように連携させながら制作を進めていけばよいのでしょうか。ここでは、理想的なプロセスの一例をステップごとにご紹介します。

ステップ1:オリエンテーションとヒアリング

全ての始まりは、プロジェクトの目的と要件を正確に把握することです。

  • 目的とゴールの確認:この制作物(Webサイト、パンフレットなど)を通じて、何を達成したいのか?(例:問い合わせを増やしたい、ブランド認知度を高めたい、商品の魅力を伝えたい)
  • ターゲットの明確化:誰に届けたいのか?その人たちはどんなニーズや課題を持っているのか?
  • 現状の課題と強みの整理:現在抱えているコミュニケーション上の課題は何か?競合と比較した際の自社の強みや独自性は何か?
  • 予算と納期の確認:かけられる費用と、いつまでに完成させたいか。
  • 関係者(特にデザイナーとコピーライター)の同席:可能であれば、この最初のヒアリング段階から、デザイナーとコピーライターが同席することが理想です。クライアント(発注者)の言葉を直接聞き、それぞれの専門的な視点から質問を投げかけることで、より深く、多角的に情報を収集できます。
  • 企業の想いのヒアリング:効率的な情報収集だけでなく、企業の背景にあるストーリーや、商品・サービスにかける情熱といった「想い」の部分を共有することも、コンセプトメイキングにおいて非常に重要です。

この段階で、プロジェクトの全体像と、目指すべき方向性について、関係者全員が共通の認識を持つことが重要です。

ステップ2:コンセプトメイキング

ヒアリングで得た情報をもとに、制作物の核となる「コンセプト」を固めていきます。

  • 方向性の決定:「信頼感」「革新性」「親しみやすさ」「高級感」など、どのようなイメージを軸にするか、全体の方向性を定めます。
  • キーワードとキービジュアルのアイデア出し:コンセプトを象徴するキーワードや、中心となるビジュアル(写真、イラスト、グラフィックなど)のアイデアを、言葉とデザインの両面から出し合います。ブレインストーミング形式で、自由な発想を歓迎しましょう。
  • ターゲットに響く「切り口」の発見:ターゲットの心に刺さる、最も効果的なメッセージの伝え方(切り口)を探ります。単に機能やスペックを説明するだけでなく、ターゲットの感情に訴えかけたり、共感を呼んだりするようなストーリーを考えます。
  • コンセプトの言語化・視覚化:決定したコンセプトを、簡潔な言葉(キャッチフレーズの原型など)や、参考となるビジュアルイメージ(ムードボードなど)で具体化し、関係者間で再度共有・確認します。

このコンセプトメイキングは、言葉とデザインが協働する最初の重要なステップです。デザイナーは言葉のアイデアからインスピレーションを得て、コピーライターはビジュアルのイメージから言葉を紡ぎ出す、といった相互作用が期待できます。

ステップ3:コピーライティングとデザインの同時進行(並行作業)

明確になったコンセプトに基づき、具体的なコピーとデザインの制作に入りますが、ここでのポイントは「同時進行」と「連携」です。

  • ラフ段階からのすり合わせ:コピーライターがいきなり完成原稿を目指すのではなく、まず骨子となる構成案や見出し案を作成し、デザイナーはワイヤーフレーム(Webサイトの骨組み)やラフスケッチを作成します。この初期段階で、互いの方向性を確認し、イメージをすり合わせることが重要です。
  • 定期的な進捗確認とフィードバック:週に一度など、定期的にコピーとデザインの進捗状況を確認し合う場を設けます。「このコピーの文字数だと、デザイン的にどう収めるか?」「このデザインの雰囲気だと、コピーのトーンはもう少し柔らかい方が良いのでは?」といった具体的な相談やフィードバックを行います。
  • 柔軟な調整:コピーに合わせてデザインを調整したり、逆にデザインの表現力を活かすためにコピーを修正したりと、お互いの状況に合わせて柔軟に対応します。どちらかが完全に固定されてしまうと、連携は難しくなります。
  • ツールの活用:必要に応じて、オンラインのコラボレーションツールなどを活用し、リアルタイムで情報共有やコメントのやり取りができる環境を整えるのも有効です。

このステップでは、完全な分業ではなく、常にコミュニケーションを取りながら、互いの作業内容を意識し、影響を与え合いながら進めていくことが、最終的な調和を生み出す鍵となります。

ステップ4:統合とブラッシュアップ

コピーとデザインがある程度形になってきたら、それらを実際に組み合わせてみて、全体のバランスを確認し、最終的な仕上げを行います。

  • 組み合わせによる効果の検証:デザインにコピーを流し込み、あるいはコピーに合わせてデザイン要素を配置してみて、メッセージが最も効果的に伝わるか、コンセプトが体現されているか、ターゲットに響く表現になっているかを客観的に評価します。
  • 細部の調整:文字の大きさや行間、色使い、写真のトリミングや配置、言葉の言い回しや句読点の使い方など、細部に至るまで丁寧に調整し、完成度を高めていきます。
  • 客観的な視点でのレビュー:作り手だけでは気づかない点がないか、改めて第三者の視点(社内の別担当者など)でレビューしてもらうことも有効です。

ここでは、部分最適ではなく、全体最適の視点で、言葉とデザインが一体となったときの相乗効果を最大化することを目指します。

ステップ5:最終確認と展開

完成した制作物に対して、最終的なチェックを行い、承認プロセスを経て、公開・納品となります。

  • 校正・校閲:誤字脱字、文章の矛盾、デザイン上の不備(画像の解像度、リンク切れなど)がないか、細心の注意を払って確認します。
  • 関係者全員での最終承認:発注者であるクライアントを含め、関係者全員が最終的な成果物を確認し、承認を得ます。
  • 他媒体への展開(必要に応じて):Webサイト用に作成したコピーやデザイン要素を、パンフレットや広告、SNSなど他の媒体へ展開する場合は、それぞれの媒体特性に合わせて最適化する必要があります。ここでも、一貫性を保ちつつ、各媒体に合わせた調整が求められます。

この一連のプロセスを通じて、言葉とデザインがしっかりと連携し、互いを高め合うことで、企業のメッセージを的確かつ魅力的に伝える、質の高いコミュニケーションツールが完成します。

中小零細企業が陥りやすい罠と対策:成功への道を切り拓くために

言葉とデザインの連携が重要であることは理解できても、日々の業務に追われる中小零細企業にとっては、理想通りに進めるのが難しい場面もあるかもしれません。ここでは、特に陥りやすい「罠」と、それに対する具体的な対策について考えてみましょう。

罠1:社長(あるいは特定の上司)の鶴の一声で方向性がブレる

中小企業では、経営者の意向がダイレクトに反映されやすいという側面があります。それはスピード感につながるメリットもありますが、時に、初期段階で合意したはずのコンセプトやターゲットからズレた、個人的な好みによる指示が突然入ることで、制作現場が混乱し、言葉とデザインの方向性がバラバラになってしまうことがあります。

対策:

  • 初期段階での徹底的な合意形成と記録:キックオフミーティングなどで、プロジェクトの目的、ターゲット、コンセプトについて、経営者を含む関係者全員でしっかりと議論し、合意した内容を議事録やコンセプトシートとして明確に残しておきます。「あの時、こう決まりましたよね」と立ち返れる根拠を作ることが重要です。
  • 客観的なデータや根拠の提示:なぜこのコンセプトなのか、なぜこのターゲットなのか、なぜこの表現(コピーやデザイン)なのかについて、市場調査のデータや競合の状況、ターゲット層の分析結果など、客観的な根拠を示して説明責任を果たすことで、個人的な好みによる横やりを防ぎやすくなります。
  • 意思決定プロセスの明確化:誰が最終的な決定権を持つのか、どのようなプロセスで承認を得るのかを事前に明確にしておくことも、無用な混乱を避けるために有効です。

罠2:担当者が一人で抱え込み、孤軍奮闘してしまう

マーケティングや広報の専門部署がない、あるいは担当者が少ない中小企業では、Webサイトの更新からパンフレット作成、SNS運用まで、一人の担当者が多くの業務を抱えているケースが少なくありません。そのため、外部のデザイナーやコピーライターとの連携に十分な時間を割けなかったり、客観的な視点を取り入れる機会がなかったりして、結果的に独りよがりなクリエイティブになってしまうことがあります。

対策:

  • 外部パートナーの積極的な活用:全てを自社で賄おうとせず、デザインやコピーライティングなど、専門的なスキルが必要な部分は、信頼できる外部のプロフェッショナルに積極的に依頼することを検討しましょう。その際、単に作業を依頼するだけでなく、良き相談相手として、企画段階から関わってもらうことも有効です。
  • 社内協力体制の構築:たとえ担当者が一人でも、社内の他のメンバー(営業担当者、技術者など)に意見を求めたり、レビューを依頼したりすることで、多様な視点を取り入れることができます。プロジェクトの目的や進捗状況を社内で共有し、協力者を増やす努力も大切です。
  • 情報共有の仕組み化:外部パートナーとのやり取りも含め、プロジェクトに関する情報を関係者間でスムーズに共有できる仕組み(共有フォルダの活用、定期的な報告会の実施など)を作りましょう。担当者一人に情報が集中する状況を避けることが重要です。

罠3:コスト意識が強すぎて、安さだけで依頼先を選んでしまう

限られた予算の中でやりくりしなければならない中小企業にとって、コストは重要な選定基準です。しかし、「とにかく安く」という意識が強すぎると、品質やコミュニケーション面で問題のある依頼先を選んでしまい、結果的に「安かろう悪かろう」になってしまうリスクがあります。言葉とデザインの連携には、丁寧なコミュニケーションと一定の工数が必要であり、極端に安い価格にはそれなりの理由があると考えられます。

対策:

  • 価格以外の評価軸を持つ:見積もり金額だけでなく、依頼先の過去の実績(ポートフォリオ)、得意な分野、担当者のコミュニケーション能力、提案力などを総合的に評価しましょう。自社の業界や課題に対する理解度も重要なポイントです。
  • コミュニケーションや連携を重視する姿勢の確認:ヒアリングや打ち合わせの際に、こちらの意図をしっかりと汲み取ろうとしてくれるか、コンセプトの共有や連携プロセスを重視する姿勢があるかを確認しましょう。単に言われたものを作るだけでなく、より良いものを一緒に作っていこうというパートナーシップが築けるかどうかが重要です。
  • 費用対効果で判断する:目先の安さだけでなく、その制作物がもたらすであろう効果(問い合わせ増、売上向上、ブランドイメージ向上など)を考慮し、長期的な視点で費用対効果を判断することが大切です。

罠4:制作して満足してしまい、効果測定や改善を行わない

時間と労力をかけてWebサイトやパンフレットを作ると、それで一段落、と安心してしまいがちです。しかし、作っただけで成果が出るわけではありません。実際に公開・配布した後、それがターゲットにどのように受け止められ、どのような効果を生んでいるのかを検証し、改善につなげていくプロセスがなければ、本当の意味での成功とは言えません。

対策:

  • 測定可能な目標(KPI)の設定:制作前に、「Webサイトからの問い合わせ数を〇件にする」「特定のページのアクセス数を〇%増やす」など、具体的な目標を設定しておきましょう。
  • 効果測定ツールの活用:Webサイトであれば、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを使って、どのページが見られているか、どこからアクセスが多いか、どのキーワードで検索されているかなどを分析します。広告であれば、反響率(問い合わせ数やクリック率など)を測定します。
  • 定期的な見直しと改善:測定結果をもとに、「このキャッチコピーは響いていないようだ」「このデザインは分かりにくいのかもしれない」といった仮説を立て、改善策を実行します。ABテストなどを行い、どちらの表現がより効果的かを検証することも有効です。「作りっぱなし」にせず、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回していく意識が重要です。

これらの「罠」は、意識して対策を講じることで、避けることが可能です。自社の状況に合わせて、できることから少しずつ改善に取り組んでみてください。

言葉と絵の相乗効果で、企業の想いを届けよう

キャッチコピー(言葉)とデザイン(絵)は、企業のメッセージを伝える上で、車の両輪のような存在です。どちらか一方が欠けていたり、あるいは互いに違う方向を向いていたりしては、目的地(=ターゲットへのメッセージ伝達、成果の達成)に効率よく、スムーズに到達することはできません。

両者がしっかりと連携し、互いの強みを引き出し合うことで、初めてメッセージは明確に、力強く、そして魅力的にターゲットへと届き、心を動かすことができるのです。そのためには、

  • 明確なコンセプトの共有
  • 関係者間の相互理解と尊重
  • 徹底したターゲット視点
  • シンプルさの追求
  • 一貫性の維持

といった要素が不可欠であり、それらを実現するための制作プロセスにおける連携が鍵となります。

「なんとなくかっこいいデザイン」「なんとなく響きの良いコピー」を目指すのではなく、「なぜこの言葉なのか」「なぜこのデザインなのか」という問いを常に持ち、その根拠となるコンセプトやターゲット理解に基づいた「最適解」を追求する姿勢が、最終的な成果につながります。

この記事が、皆様の会社のコミュニケーション活動において、言葉とデザインの関係性を見つめ直し、より効果的な表現を生み出すためのヒントとなれば幸いです。もし、「自社の場合はどうすれば…」「専門家の意見を聞きたい」と感じられたなら、ぜひ一度、コピーライティングとデザイン、両方の視点を持った専門家にご相談されることをお勧めします。きっと、新たな発見や改善の糸口が見つかるはずです。


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