はじめに:なぜホームページ制作前の準備が重要なのか?
現代のビジネスにおいて、ホームページは企業の顔であり、顧客との重要な接点です。特に中小零細企業にとって、信頼性を高め、新たなビジネスチャンスを掴むための強力なツールとなり得ます。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、制作を依頼する前の「準備」が非常に重要になります。
「とりあえず作ればいい」「プロに任せれば大丈夫」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、事前の準備が不十分だと、完成したホームページが期待した成果を上げられなかったり、制作プロセスがスムーズに進まなかったり、追加費用が発生してしまったりする可能性があります。
逆に、しっかりと準備を行うことで、以下のようなメリットが期待できます。
- ホームページの目的が明確になり、成果につながりやすくなる
- 制作会社とのコミュニケーションが円滑になり、認識の齟齬を防げる
- 制作プロセスがスムーズに進み、納期遅延のリスクを減らせる
- 無駄な修正や追加費用を抑えられる
- 自社の強みや魅力を的確に伝えられるホームページになる
この記事では、ホームページ制作を初めて依頼する方や、以前の制作で課題を感じた中小零細企業の経営者・マーケティング担当者の方向けに、依頼前に準備しておくべきことを7つのステップに分けて、具体的かつ分かりやすく解説していきます。このガイドを参考に、効果的なホームページ制作の第一歩を踏み出しましょう。
準備ステップ1:ホームページの目的を明確にする
まず最初に考えるべきことは、「何のためにホームページを作るのか?」という目的の明確化です。目的が曖昧なまま制作を進めてしまうと、方向性が定まらず、誰にも響かないホームページになってしまう可能性があります。
なぜホームページが必要なのか?目的を具体的に洗い出す
漠然と「必要だから」ではなく、自社がホームページに期待する役割を具体的に考えてみましょう。考えられる目的の例としては、以下のようなものがあります。
- 会社の信頼性向上:事業内容や実績をしっかり伝え、取引先や顧客からの信頼を得る
- 認知度向上・ブランディング:自社の存在や強み、ブランドイメージを広く知らせる
- 新規顧客獲得:問い合わせや資料請求を増やし、見込み客を獲得する
- 商品・サービスの販売促進:オンラインでの購入や申し込みを促す
- 人材採用:求職者に向けて企業の魅力や募集要項を伝え、応募を増やす
- 既存顧客との関係強化:サポート情報や最新情報を提供し、顧客満足度を高める
- 情報発信の効率化:よくある質問への回答や資料提供を自動化し、業務負担を軽減する
これらの例を参考に、自社の現状の課題や目指す姿と照らし合わせ、最も重要な目的は何か、優先順位をつけてみましょう。目的は一つである必要はありませんが、多すぎると焦点がぼやけてしまうため、主要な目的を2つか3つ程度に絞り込むのがおすすめです。
ターゲットユーザーは誰か?
次に、「誰に」情報を届けたいのか、ホームページを見てほしいターゲットユーザー像を明確にします。ターゲットが不明確だと、コンテンツの内容やデザインの方向性が定まりません。
- 年齢層:20代:30代:40代など
- 性別:男性:女性:問わない
- 職業・役職:経営者:会社員(部署や役職):個人事業主:主婦など
- 居住地域:特定の地域:全国:海外
- 興味・関心:どのような分野に関心があるか
- 抱えている課題や悩み:どのような問題を解決したいと考えているか
- 情報収集の方法:Web検索:SNS:口コミ:業界誌など
このように具体的な人物像(ペルソナ)を設定することで、ターゲットユーザーが本当に求めている情報や、心に響くメッセージを考えやすくなります。BtoB企業であれば、ターゲット企業の業種、規模、担当者の役職や部署、決裁権の有無なども考慮に入れると良いでしょう。
ホームページで達成したい具体的な目標(KPI)を設定する
目的とターゲットが決まったら、その達成度を測るための具体的な目標(KPI:Key Performance Indicator)を設定します。目標は、測定可能で具体的な数値に落とし込むことが重要です。
- 月間の問い合わせ件数:〇〇件
- 資料請求数:〇〇件
- 特定ページのアクセス数:〇〇PV
- オンラインストアでの売上:〇〇円
- 採用応募数:〇〇人
- メールマガジン登録者数:〇〇人
目標を設定することで、ホームページ公開後の効果測定が可能になり、改善点を見つけやすくなります。また、制作会社に対しても、目指すべきゴールを明確に伝えることができます。目標設定の際には、「SMARTの法則」を意識すると良いでしょう。
- Specific(具体的):誰が・何を・どのように
- Measurable(測定可能):数値で測れるか
- Achievable(達成可能):現実的に達成できる目標か
- Relevant(関連性):目的と関連しているか
- Time-bound(期限):いつまでに達成するか
準備ステップ2:ターゲットユーザーを深く理解する
ステップ1で設定したターゲットユーザーについて、さらに深く掘り下げて理解を深めることが重要です。ターゲットユーザーのニーズや行動を理解することで、より効果的なコンテンツやデザインを企画することができます。
ペルソナ設定をより詳細に行う
ステップ1で考えたターゲットユーザー像を、さらに具体的に肉付けしていきます。単なる属性だけでなく、その人物のライフスタイル、価値観、情報収集時の行動パターンなどを想像してみましょう。
- 一日の過ごし方:どのようなスケジュールで動いているか
- 情報収集のタイミングや場所:通勤中:休憩時間:自宅など
- 利用するデバイス:PC:スマートフォン:タブレット
- 意思決定のプロセス:情報をどのように比較検討し、最終的な判断に至るか
- 重視するポイント:価格:品質:信頼性:利便性:デザイン性など
可能であれば、実際の顧客やターゲットに近い人物にインタビューを行うなどして、リアルな声を集めることも有効です。ペルソナを詳細に設定することで、チーム内や制作会社との間でターゲットユーザー像の共通認識を持つことができます。
ターゲットユーザーが求める情報・価値は何か?
設定したペルソナが、自社のホームページに何を期待して訪れるのかを考えます。彼らが抱える課題や疑問に対して、どのような情報や価値を提供すれば満足してもらえるでしょうか。
- 課題解決につながる情報:具体的な解決策:ノウハウ:事例
- 意思決定に役立つ情報:製品・サービスの詳細な仕様:価格:他社との比較:導入効果
- 信頼性を担保する情報:会社概要:実績:お客様の声:専門家の推薦
- 共感を呼ぶ情報:企業の理念:開発ストーリー:スタッフの想い
- 利便性を高める情報:分かりやすい操作性:問い合わせやすさ:資料のダウンロードしやすさ
ターゲットユーザーの視点に立ち、「この情報があれば嬉しい」「ここが分かりにくい」といった点を想像しながら、提供すべきコンテンツの内容を検討します。
競合サイトの分析
ターゲットユーザーが、自社の商品やサービスを検討する際に、他にどのような企業のホームページを見ている可能性があるか、競合となるサイトを調査・分析します。
- 競合企業の特定:直接的な競合だけでなく、間接的な競合もリストアップ
- サイト構成の比較:どのようなページがあり、どのような情報が掲載されているか
- コンテンツの比較:強みとしている情報:ターゲットへの訴求方法
- デザインの比較:デザインテイスト:色使い:写真の質
- 機能性の比較:問い合わせフォームの使いやすさ:サイト内検索:資料ダウンロード
- SEO対策の状況:どのようなキーワードで上位表示されているか
競合サイトを分析することで、自社の強みや差別化ポイントを明確にし、自社サイトで何をアピールすべきかのヒントを得ることができます。ただし、単に真似をするのではなく、あくまで参考として、自社ならではの価値を提供する方法を考えましょう。
準備ステップ3:ホームページに必要なコンテンツを洗い出す
ホームページの目的とターゲットユーザー像が明確になったら、次は具体的にどのような情報を掲載するか、コンテンツを洗い出していきます。コンテンツはホームページの核となる部分であり、その質と量が成果を大きく左右します。
目的達成とターゲットニーズに基づいたコンテンツ企画
ステップ1で設定した「目的」と、ステップ2で深掘りした「ターゲットユーザーの求める情報」を基に、必要なコンテンツをリストアップします。単に情報を羅列するのではなく、ユーザーがサイト内をスムーズに回遊し、最終的に目的(問い合わせ、資料請求、購入など)に到達できるようなストーリーを意識して構成を考えます。
必須コンテンツ例
多くの企業ホームページで共通して必要とされる基本的なコンテンツです。
- 会社概要:社名:所在地:設立年月日:代表者名:資本金:沿革:事業内容の概要
- 事業内容/サービス紹介:提供しているサービスや製品の詳細:特徴:強み:価格(可能な範囲で)
- 実績紹介/導入事例:これまでの実績:具体的な導入事例(顧客名、課題、導入後の効果など)
- お客様の声:実際に利用した顧客からの評価や感想
- お知らせ/ブログ:最新情報:ニュースリリース:業界動向:ノウハウなど(情報発信とSEO対策)
- お問い合わせフォーム:連絡先(電話番号、メールアドレス):問い合わせ用のフォーム
- プライバシーポリシー:個人情報の取り扱い方針
- サイトマップ:サイト全体の構成がわかる一覧ページ
あると良いコンテンツ例
必須ではありませんが、企業の信頼性向上やブランディング、ユーザーの利便性向上に役立つコンテンツです。
- 代表挨拶/経営理念:経営者の想いや企業の価値観を伝える
- スタッフ紹介:社員の顔が見えることで親近感や安心感を与える
- 採用情報:求職者向けの募集要項や企業の魅力
- よくある質問(FAQ):ユーザーが疑問に思いがちな点を事前に解消
- 資料ダウンロード:サービスの詳細資料:ホワイトペーパー:導入事例集など
- 用語集:専門用語を分かりやすく解説
- アクセス:実店舗やオフィスへの地図:交通案内
- パートナー/取引先紹介:信頼性のアピール
コンテンツマップ(サイトマップ)の作成
洗い出したコンテンツを整理し、サイト全体の構造を図式化したもの(サイトマップ)を作成します。トップページから各コンテンツへ、またコンテンツ同士がどのようにリンクされるのか、ユーザーの動線を考慮しながら構成を考えます。
- 階層構造:情報を整理し、分かりやすいカテゴリーに分類
- ナビゲーション:ユーザーが迷わずに目的の情報にたどり着けるか(グローバルナビゲーション、フッターナビゲーションなど)
- 内部リンク:関連性の高いページ同士をつなぎ、回遊性を高める
サイトマップを作成することで、必要なページが網羅されているか、情報の階層構造が適切かなどを確認でき、制作会社との打ち合わせもスムーズに進みます。手書きの簡単なものでも構いませんので、一度作成してみることをお勧めします。
準備ステップ4:各コンテンツの原稿や素材を準備する
サイトマップで必要なコンテンツが決まったら、それぞれのページに掲載する具体的な文章(テキスト)や画像、動画などの素材を準備します。これらの素材準備は、ホームページ制作において最も時間と労力がかかる部分の一つであり、早めに着手することが重要です。
文章(テキスト)の準備
各ページの目的やターゲットユーザーに合わせて、掲載する文章を作成します。
- 誰が書くか?:
- 自社で作成:最も自社の強みや想いを込められるが、時間とスキルが必要
- 制作会社に依頼:プロの視点で作成してもらえるが、別途費用が発生、事前の情報提供が重要
- 外部ライターに依頼:専門的な知識が必要な場合や、客観的な視点が欲しい場合に有効
- 文章作成のポイント:
- ターゲットに響く言葉を選ぶ:専門用語を避け、分かりやすい表現を心がける
- 結論から書く(PREP法):Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(結論)
- 見出しや箇条書きを活用:情報を整理し、読みやすくする
- 誤字脱字がないか確認:信頼性を損なわないよう校正を徹底する
- SEOを意識する:ターゲットユーザーが検索しそうなキーワードを自然に盛り込む
- 企業のトーン&マナーを統一:誠実さ:親しみやすさ:専門性など、企業イメージに合った文体で記述
特に、会社概要、事業内容、強み、実績などは、自社の核となる情報ですので、時間をかけて丁寧に作成しましょう。制作会社に依頼する場合でも、ベースとなる情報や伝えたいポイントは事前にまとめておく必要があります。
画像・動画素材の準備
文章だけでは伝わりにくい情報や、サイトの雰囲気を左右するのが画像や動画です。質の高い素材を用意することで、ホームページの魅力が格段に向上します。
- 写真:
- 自社で撮影:オフィス風景:スタッフ:製品:施工事例など、オリジナリティを出せる
- ストックフォトサービスを利用:高品質な写真を手軽に入手できるが、他社と被る可能性あり
- プロカメラマンに依頼:最も高品質な写真が期待できるが、費用がかかる
- イラスト・図解:
- 複雑な情報やサービスの流れを分かりやすく伝えるのに有効
- デザイン会社やイラストレーターに依頼、または作成ツールを利用
- 動画:
- 製品紹介:お客様の声:会社紹介など、多くの情報を短時間で伝えられる
- 自社で撮影・編集、または専門業者に依頼
- 素材選定の注意点:
- 著作権・肖像権:フリー素材であっても利用規約を確認、人物写真の使用には許可が必要
- 画質:Webサイトに適した解像度・ファイルサイズにする(高画質すぎると表示速度が遅くなる)
- サイトイメージとの統一感:デザインのテイストや色調に合った素材を選ぶ
- ファイル形式:JPEG:PNG:GIFなど、用途に応じて適切な形式を選ぶ
使用したい写真やイラストの候補を事前にリストアップし、必要な場合は撮影や手配を進めましょう。
ロゴデータ
企業のシンボルであるロゴは、ホームページに必須の要素です。
- 形式:背景が透明なPNG形式や、拡大縮小しても劣化しないSVG形式(可能であれば両方)
- バリエーション:カラー版:モノクロ版:横組み:縦組みなど、いくつかのパターンがあると使いやすい
ロゴデータが見当たらない場合は、作成したデザイナーや印刷会社に問い合わせるか、必要であればトレース(既存のロゴを元にデータ化)や再デザインを検討します。
その他(既存資料)
会社案内パンフレット、製品カタログ、提案資料、社内報など、既存の資料の中にホームページで活用できるテキストや画像が含まれている場合があります。これらの資料も整理しておくと、コンテンツ作成の参考になったり、素材として流用できたりします。
準備ステップ5:デザインの方向性をイメージする
コンテンツと並んでホームページの印象を大きく左右するのがデザインです。どのようなデザインにしたいのか、事前に方向性をイメージしておくことで、制作会社との認識のずれを防ぎ、スムーズにデザイン制作を進めることができます。デザイナーに丸投げするのではなく、自社の希望を伝える準備をしましょう。
自社のブランドイメージや伝えたい雰囲気
ホームページを通じて、ユーザーにどのような印象を持ってもらいたいか、ブランドイメージや伝えたい雰囲気を言語化してみましょう。
- キーワード例:信頼感:誠実さ:先進性:親しみやすさ:高級感:温かみ:スタイリッシュ:シンプル:楽しさ:専門性
- コーポレートカラー:企業のロゴやパンフレットなどで使用している基本の色
- ターゲット層:ターゲットユーザーが好むであろうデザインテイスト
例えば、法律事務所であれば「信頼感」「誠実さ」、クリエイティブ系の企業であれば「先進性」「スタイリッシュ」、地域密着型の店舗であれば「親しみやすさ」「温かみ」といったキーワードが考えられます。これらのキーワードをいくつか挙げておくと、デザインの方向性を具体的に伝えやすくなります。
参考にしたいサイトの収集
デザインのイメージを具体的に伝える最も効果的な方法は、参考にしたいと思う他のWebサイトをいくつか見つけることです。
- 最低3サイト程度:多すぎても焦点がぼやけるため、厳選する
- 好きな点とその理由を明確に:
- 全体的な雰囲気:配色:レイアウト:写真の使い方:文字の読みやすさなど、具体的にどこが良いと感じるか
- 部分的な要素:「このサイトのヘッダー部分のデザインが好き」「このサイトのボタンの動きが良い」など、ピンポイントでもOK
- 同業他社だけでなく、異業種のサイトでも構わない:「このカフェのサイトの雰囲気が好き」「このアパレルサイトの写真の使い方がおしゃれ」など、自由な発想で探してみましょう。
参考にしたいサイトのURLと、そのサイトのどこがどのように良いと感じるのかをメモしておき、制作会社との打ち合わせ時に提示できるように準備します。
避けたいデザインのイメージ
好きなデザインだけでなく、「こういうデザインにはしたくない」というイメージがあれば、それも伝えておくと良いでしょう。
- 苦手な色使い:派手すぎる:地味すぎるなど
- 見にくいレイアウト:情報が整理されていない:文字が小さいなど
- 古臭いデザイン:時代遅れに感じる要素
具体的なサイト例を挙げて、「このサイトのような雰囲気は避けたい」と伝えるのも有効です。
コーポレートカラーやフォントの指定
もし企業として定めているコーポレートカラー(ブランドカラー)や、使用するフォント(書体)に規定があれば、事前に伝えておく必要があります。
- コーポレートカラー:RGB値やHEXコード(例:#FFFFFF)などのカラーコードを伝える
- フォント:フォント名を伝える(Webフォントとして利用可能かどうかも確認)
特に指定がない場合は、制作会社に提案してもらうことも可能です。その場合でも、ステップ1で考えたブランドイメージや雰囲気を伝えることで、より的確な提案を受けやすくなります。
デザインは主観的な要素も大きいですが、このように事前にイメージを整理し、具体的な参考例を用意しておくことで、抽象的な要望ではなく、的確な指示として制作会社に伝えることができます。
準備ステップ6:予算とスケジュールを決める
ホームページ制作を依頼する上で、予算とスケジュールは避けて通れない重要な要素です。事前にこれらを明確にしておくことで、現実的な計画を立て、制作会社との交渉や選定をスムーズに進めることができます。
ホームページ制作にかかる費用の内訳
ホームページ制作には、様々な費用が発生します。どのような項目に費用がかかるのかを理解しておくことが、適切な予算設定の第一歩です。主な費用の内訳は以下の通りです。
- 企画・ディレクション費:目的設定:要件定義:サイト構成案作成:プロジェクト管理など
- デザイン費:トップページ:下層ページのデザイン作成
- コーディング費:デザインを基にHTML:CSS:JavaScriptなどでWebページを構築する作業
- システム開発費:CMS(WordPressなど)の導入・カスタマイズ:お問い合わせフォーム設置:その他特殊な機能の実装
- コンテンツ作成費:文章(ライティング)作成:写真撮影:イラスト作成:動画制作など(自社で用意する場合は不要)
- サーバー・ドメイン費:ホームページのデータを保管するサーバーのレンタル費用:ホームページのアドレス(ドメイン)の取得・維持費用(月額または年額)
- 保守管理費:公開後のサーバー・ドメイン管理:CMSやプラグインのアップデート:軽微な修正対応:バックアップなど(月額または年額)
これらの費目は、制作するホームページの規模、機能、デザインの複雑さ、コンテンツの量、制作会社のスキルや体制などによって大きく変動します。
予算感の設定
費用の内訳を理解した上で、今回のホームページ制作にどれくらいの予算をかけられるかを決めます。
- 相場の理解:Webで検索したり、複数の制作会社から見積もりを取ったりして、おおよ目の相場感を掴む
- 目的と予算のバランス:設定したホームページの目的に対して、どの程度の投資が妥当か検討
- こだわりたい部分と妥協できる部分:デザイン:機能:コンテンツなど、どこに重点的に予算を配分するか
- 初期費用とランニングコスト:制作時の初期費用だけでなく、サーバー・ドメイン費や保守管理費といった継続的にかかる費用も考慮に入れる
予算が限られている場合は、最初から全ての機能を盛り込むのではなく、段階的に機能を追加していく(フェーズドアプローチ)という考え方もあります。制作会社に予算を伝える際は、「〇〇円くらいで考えているが、どこまで実現可能か」といった形で相談してみると良いでしょう。明確な予算を伝えることで、制作会社もその範囲内で最適な提案をしやすくなります。
公開希望時期と逆算したスケジュール
いつまでにホームページを公開したいのか、希望の納期を設定します。そして、その納期から逆算して、各工程にどれくらいの期間が必要か、大まかなスケジュールを立てます。
- 制作期間の目安:小規模なサイトで1~2ヶ月:中規模サイトで2~4ヶ月:大規模サイトや複雑な機能を持つサイトでは半年以上かかる場合もある(これはあくまで目安であり、制作内容や制作会社の状況によって変動します)
- 各工程の期間:要件定義:デザイン:コーディング:コンテンツ準備:テスト:修正など
- 自社での準備期間:コンテンツの原稿や素材の準備、社内確認や承認に必要な時間も考慮に入れる
- バッファ(余裕)を持たせる:予期せぬトラブルや修正に対応できるよう、スケジュールには余裕を持たせることが重要
希望納期が非常に短い場合は、実現可能な制作内容が限られたり、特急料金が発生したりする可能性もあります。現実的なスケジュールを設定し、制作会社と共有することが大切です。
社内での意思決定プロセスや担当者の確保
ホームページ制作は、社内の様々な部署や担当者が関わるプロジェクトになることがあります。
- 担当者の決定:制作会社とのやり取りや、社内調整を行うメインの担当者を決める
- 意思決定フローの確認:デザインやコンテンツの確認・承認を誰が行うのか、そのプロセスにかかる時間を把握しておく
- 関係部署との連携:営業部:広報部:開発部など、関連する部署への情報共有や協力体制を整える
社内での意思決定が滞ると、制作スケジュールに遅れが生じる原因となります。事前にプロセスを明確にし、担当者の役割分担を決めておくことで、スムーズな進行が期待できます。
準備ステップ7:制作会社選定の準備
ここまでの準備が整ったら、いよいよホームページ制作を依頼する会社を選定する段階に入ります。良いパートナーとなる制作会社を見つけるために、事前に選定基準を明確にし、必要な情報を整理しておきましょう。
制作会社の種類
ホームページ制作会社には、様々な規模や特徴を持つ会社があります。
- 大手制作会社:大規模サイトや複雑なシステム開発に対応可能:実績豊富で信頼性が高い:ただし費用は高めになる傾向
- 中小制作会社:幅広い案件に対応:大手より費用を抑えられる場合がある:得意分野や専門性が会社によって異なる
- フリーランス(個人事業主):費用を抑えやすい:特定のスキルに特化している場合がある:コミュニケーションが密に取りやすい反面、対応できる範囲やスピードに限界がある場合も
- デザイン会社/システム開発会社:デザイン性重視、またはシステム開発重視など、特定の分野に強みを持つ
自社のホームページの規模、目的、予算、重視するポイント(デザイン性、機能性、費用など)に合わせて、どのタイプの制作会社が適しているかを考えます。
制作会社選びのポイント
数多くある制作会社の中から、自社に合った会社を選ぶためのチェックポイントです。
- 制作実績:
- 自社が作りたいサイトに近い実績があるか
- デザインのテイストやクオリティが自社のイメージに合っているか
- 同業種や同規模の企業の制作実績があるか
- 得意分野・専門性:デザイン:SEO対策:システム開発:マーケティング支援など、自社が求める分野に強みを持っているか
- コミュニケーション:
- 問い合わせや相談への対応が丁寧で迅速か
- 専門用語を使わず、分かりやすく説明してくれるか
- こちらの要望をしっかりとヒアリングしてくれるか
- 担当者のスキル・経験:プロジェクトを円滑に進めるための知識や経験が豊富か
- 費用対効果:見積もり金額が適正か:提案内容と費用が見合っているか
- サポート体制:公開後の保守・運用サポートの内容:トラブル発生時の対応
- 会社の信頼性:設立年数:所在地:企業理念なども参考に
単に費用が安いというだけで選ぶのではなく、これらのポイントを総合的に評価して、長期的に付き合える信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
情報収集の方法
制作会社の情報を集める方法はいくつかあります。
- Web検索:「ホームページ制作 〇〇(地域名)」「Web制作会社 〇〇(業種)」「WordPress制作 実績」などのキーワードで検索
- 紹介:知人や取引先など、実際にホームページ制作を依頼したことのある人から紹介してもらう
- 比較サイト・ポータルサイト:複数の制作会社を比較検討できるサイトを利用する
- セミナー・イベント:Web制作関連のセミナーや展示会に参加して情報を得る
いくつかの方法で候補となる制作会社をリストアップし、それぞれのWebサイトで実績やサービス内容を確認します。
問い合わせ・見積もり依頼の準備(RFP:提案依頼書の作成)
候補となる制作会社に問い合わせや見積もりを依頼する際には、これまでに準備してきた情報を整理して伝える必要があります。特に、複数の会社に同じ条件で提案を依頼したい場合には、「RFP(Request for Proposal:提案依頼書)」を作成すると効果的です。
- RFPに含める項目例:
- 会社概要:自社の基本情報
- ホームページ制作の目的・目標(KPI):ステップ1で明確化した内容
- ターゲットユーザー像(ペルソナ):ステップ2で深掘りした内容
- 必要なコンテンツ・サイトマップ案:ステップ3で洗い出した内容
- 希望するデザインの方向性・参考サイト:ステップ5でイメージした内容
- 予算・希望納期:ステップ6で決定した内容
- 現在の課題・要望:その他、伝えておきたい事項
- サーバー・ドメインの状況:新規取得か、既存のものを使用するか
- 保守・運用の希望範囲
- 選定基準・スケジュール
RFPを作成することで、制作会社は依頼内容を正確に理解し、的確な提案と見積もりを提出しやすくなります。また、各社からの提案を比較検討する際にも、公平な評価が可能になります。必ずしも完璧なRFPを作成する必要はありませんが、これらの項目を整理して伝えることを意識しましょう。
まとめ:準備を制するものがホームページ制作を制す
ここまで、ホームページ制作を依頼する前に準備すべき7つのステップについて解説してきました。
- ホームページの目的を明確にする
- ターゲットユーザーを深く理解する
- ホームページに必要なコンテンツを洗い出す
- 各コンテンツの原稿や素材を準備する
- デザインの方向性をイメージする
- 予算とスケジュールを決める
- 制作会社選定の準備をする
これらの準備は、一見すると手間がかかるように感じるかもしれません。しかし、この事前の準備こそが、ホームページ制作を成功させるための最も重要な鍵となります。目的が明確で、ターゲットに響くコンテンツが用意され、デザインの方向性が定まっていれば、制作会社とのコミュニケーションは格段にスムーズになり、理想に近いホームページを効率的に制作することが可能になります。
逆に、準備が不十分なまま制作を進めてしまうと、「思っていたものと違う」「何がしたいのか分からないサイトになった」「追加費用がかさんだ」「スケジュールが大幅に遅れた」といった失敗につながりかねません。
今回ご紹介した準備リストは、あくまで基本的なガイドラインです。自社の状況に合わせて、さらに深掘りしたり、項目を追加したりする必要があるかもしれません。大切なのは、「誰に」「何を伝え」「どうなってほしいのか」を徹底的に考え抜くことです。
しっかりと準備を行うことで、単に見栄えが良いだけのホームページではなく、ビジネスの成果に貢献する、真に価値のあるホームページを構築することができるはずです。
この記事が、これからホームページ制作を検討されている中小零細企業の経営者様、ご担当者様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。万全の準備を整え、自信を持って制作会社への相談という次のステップに進んでください。
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