現代のビジネスにおいて、ウェブサイトは単なる企業紹介ツールではありません。新規顧客獲得、ブランディング、人材採用など、多岐にわたる目的を達成するための重要なマーケティングチャネルです。特に中小零細企業の皆様にとっては、限られたリソースの中で最大限の効果を発揮する必要があり、ウェブサイトの重要性はますます高まっています。

しかし、ただ美しいデザインのウェブサイトを持っているだけでは、その潜在能力を十分に引き出すことはできません。せっかく作ったウェブサイトも、ターゲットとするユーザーに見つけてもらえなければ意味がないのです。そこで重要になるのが「SEO(検索エンジン最適化)」です。SEOとは、Googleなどの検索エンジンで特定のキーワードが検索された際に、自社のウェブサイトを検索結果の上位に表示させるための一連の施策を指します。

多くの場合、「デザイン」と「SEO」は別々のものとして考えられがちです。デザイナーは見た目の美しさや使いやすさを追求し、SEO担当者はキーワード選定やコンテンツ作成、被リンク獲得などに注力する、といった具合です。しかし、実はこの2つは密接に連携しており、優れたウェブデザインはSEOにおいても非常に重要な役割を果たします。

検索エンジン、特にGoogleは、ユーザーにとって価値のある情報を提供することを最優先に考えています。そのため、ウェブサイトの評価基準として「ユーザー体験(UX:User Experience)」をますます重視するようになりました。そして、ウェブサイトのデザインは、このユーザー体験に直接的な影響を与える要素の宝庫なのです。

この記事では、中小零細企業の経営者やマーケティング担当者の皆様に向けて、検索結果で上位表示されやすくなるために、ウェブデザインにおいてどのような点に注意すべきかを具体的に解説していきます。デザインの力でSEO効果を高め、ビジネスの成長につなげるヒントを見つけていただければ幸いです。

なぜウェブデザインがSEOに重要なのか?

かつてのSEOは、キーワードの詰め込みや被リンクの量など、テクニカルな要素が中心でした。しかし、検索エンジンのアルゴリズムは日々進化しており、現在では「ユーザーがそのウェブサイトをどのように利用しているか」を非常に重要視しています。

検索エンジンの評価基準の変化:ユーザー体験の重視

Googleは、ユーザーが検索結果から訪れたウェブサイトで、求めている情報をスムーズに見つけ、満足のいく体験を得られることを理想としています。そのため、以下のようなユーザー行動に関する指標をウェブサイト評価に取り入れていると考えられています。

  • 滞在時間:ユーザーがサイトにどれくらいの時間留まっているか
  • 直帰率:ユーザーが最初の1ページだけを見てサイトを離れてしまう割合
  • ページビュー数:一人のユーザーがサイト内で何ページ閲覧したか
  • コンバージョン率:問い合わせや購入など、サイトの目標達成に至った割合

これらの指標は、ウェブサイトのデザインや使いやすさに大きく左右されます。例えば、デザインが見にくい、ナビゲーションが分かりにくい、ページの読み込みが遅いといった問題があると、ユーザーはすぐにサイトを離れてしまい(直帰率の上昇、滞在時間の短縮)、検索エンジンからの評価も下がってしまう可能性があるのです。

デザイン要素がユーザー体験に与える影響

ウェブデザインは、単に見た目を整えるだけではありません。ユーザーが情報を探しやすく、快適に操作できるように設計することも重要な役割です。

  • ナビゲーションの分かりやすさ:ユーザーが目的の情報に迷わずたどり着けるか
  • コンテンツの可読性:文字の大きさや行間、配色などが適切で、内容が読みやすいか
  • ページの表示速度:ストレスなくスムーズにページが表示されるか
  • モバイル対応:スマートフォンやタブレットでも快適に閲覧・操作できるか
  • 操作性:ボタンの押しやすさ、フォームの入力しやすさなど

これらのデザイン要素が最適化されているウェブサイトは、ユーザーにとって使いやすく、満足度が高まります。その結果、滞在時間やページビュー数が増加し、直帰率が低下するなど、良好なユーザー行動につながり、SEO評価の向上も期待できるのです。

検索エンジンが評価するデザイン関連シグナル

Googleは、ウェブサイトのデザインに関連する具体的な技術要素も評価指標として公開しています。代表的なものとしては、以下の2つが挙げられます。

  • モバイルフレンドリー:スマートフォンでの閲覧に適したデザインになっているか:Googleはモバイルデバイスからの検索が多数を占める現状を踏まえ、「モバイルファーストインデックス」を採用しており、モバイル版サイトを基準に評価
  • ページエクスペリエンスシグナル(Core Web Vitalsなど):ウェブサイトの読み込み速度、インタラクティブ性、視覚的な安定性など、実際のユーザー体験を測定する指標群:これらはデザインの実装方法や技術的な最適化によって改善可能

このように、ウェブデザインは、ユーザー体験の向上を通じて間接的にSEOに貢献するだけでなく、検索エンジンが直接評価する技術的なシグナルにも関わっています。つまり、SEOを意識したウェブデザインは、現代のウェブサイト運営において必須の要素と言えるのです。

検索結果で上位表示されやすくなるデザイン上のポイント

それでは、具体的にどのようなデザイン上のポイントに注意すれば、SEO効果を高めることができるのでしょうか。ここでは、特に重要となる7つのポイントを解説します。

1. モバイルファーストデザイン:スマホ時代の必須要件

今や、インターネット利用の主役はパソコンからスマートフォンへと移りました。多くの業種で、ウェブサイトへのアクセスの過半数がモバイルデバイスからとなっています。この流れを受け、Googleはウェブサイトの評価基準をパソコン版サイトからモバイル版サイトへと移行する「モバイルファーストインデックス」を導入しました。

これは、モバイル版サイトのコンテンツや構造、表示速度などが、検索順位を決定する上で最も重要視されることを意味します。たとえパソコン版のデザインが素晴らしくても、モバイル版サイトが見にくかったり、使いにくかったりすれば、SEO評価は大きく下がってしまう可能性があるのです。

レスポンシブデザインの重要性

モバイルファーストに対応するための最も一般的な方法は「レスポンシブデザイン」を採用することです。レスポンシブデザインとは、ユーザーが閲覧しているデバイスの画面サイズに応じて、ウェブサイトのレイアウトやデザインが自動的に最適化される仕組みです。

  • 1つのHTMLで管理可能:パソコン用、スマホ用と別々にファイルを作成・管理する必要がなく、更新の手間やミスを軽減
  • URLが統一される:デバイスごとにURLが異なる場合に起こりうる評価の分散を防止
  • Google推奨:Google自身がモバイルフレンドリーなサイト構築方法として推奨

レスポンシブデザインを導入することで、あらゆるデバイスのユーザーに快適な閲覧体験を提供でき、モバイルファーストインデックスにも効果的に対応できます。

モバイルでの見やすさ・操作性のポイント

レスポンシブデザインを採用するだけでなく、モバイルデバイス特有の利用シーンを考慮したデザイン設計が重要です。

  • タップターゲットの大きさ:ボタンやリンクなどが小さすぎると、指でタップしにくく誤操作の原因になる:十分な大きさと間隔を確保
  • フォントサイズ:小さすぎる文字は読みにくいため、適切なサイズ設定が必要:最低でも14px〜16px程度を目安に
  • コンテンツの簡潔化:モバイル画面はパソコンに比べて表示領域が限られるため、情報を詰め込みすぎず、優先順位の高いものから分かりやすく表示
  • 入力フォームの最適化:キーボードの種類(電話番号ならテンキーなど)を適切に設定し、入力の手間を軽減
  • 片手操作への配慮:メニューボタンや重要なCTAボタンなどを、画面下部など親指でタップしやすい位置に配置することも有効

モバイルユーザーがストレスなくサイトを利用できるように細部まで配慮することが、ユーザー満足度向上、ひいてはSEO評価向上につながります。

2. サイト構造とナビゲーション:迷わせない道案内

ウェブサイトの構造(サイトストラクチャ)とナビゲーションは、ユーザーと検索エンジンの両方にとって、サイトの内容を理解しやすくするための重要な要素です。どんなに優れたコンテンツがあっても、構造が複雑で分かりにくければ、ユーザーは目的の情報にたどり着けず離脱してしまいますし、検索エンジンもサイト全体を効率的にクロール(巡回・情報収集)できません。

論理的でシンプルな階層構造

理想的なサイト構造は、トップページを頂点とした階層構造です。関連性の高い情報をグループ化し、ユーザーが論理的に情報をたどれるように設計します。

  • 階層の深さ:できるだけ浅い階層(トップページから2〜3クリック程度)で目的のページに到達できるように配慮
  • カテゴリ分け:提供する情報やサービス内容に応じて、分かりやすく、かつ網羅的にカテゴリ分け
  • URL構造:サイト構造に合わせて、URLも論理的で分かりやすいものにする(例:/service/web-design/)

複雑すぎる階層構造は、ユーザーを混乱させるだけでなく、検索エンジンのクローラーがサイトの奥深くにあるページを発見しにくくなる原因にもなります。

直感的なグローバルナビゲーション

グローバルナビゲーション(サイトの全ページに共通して表示される主要メニュー)は、ユーザーがサイト内のどこにいても主要なコンテンツへアクセスできるようにするための道しるべです。

  • 主要コンテンツへのリンク:ユーザーが最も必要とするであろう重要なページ(サービス一覧、会社概要、お問い合わせなど)へのリンクを設置
  • 分かりやすいラベル:メニューの名称は、誰が見ても内容を推測できるような、一般的で分かりやすい言葉を選択
  • 一貫性:サイト内のどのページにいても、同じ位置に同じデザインで表示し、ユーザーの混乱を防止
  • 項目数:メニュー項目が多すぎると、かえって分かりにくくなるため、7つ程度に絞り込むのが理想的

ハンバーガーメニュー(三本線のアイコン)は、モバイル表示でスペースを節約するために有効ですが、パソコン表示では主要メニューを常に表示しておく方がユーザーにとって親切な場合もあります。ターゲットユーザーやサイトの特性に合わせて最適な形式を選びましょう。

パンくずリストの設置

パンくずリストは、ユーザーがサイト内の現在地を把握し、上位の階層へ簡単に戻れるようにするためのナビゲーションです。通常、ページの上部に「トップページ > カテゴリ名 > ページ名」のような形式で表示されます。

  • ユーザーの現在地把握:自分がサイトのどの階層にいるのかが一目で理解可能
  • サイト内回遊の促進:上位階層へ簡単に移動できるため、他の関連ページ閲覧を促進
  • 検索エンジンへの構造伝達:サイトの階層構造を検索エンジンに伝える役割
  • 検索結果への表示:Googleの検索結果にパンくずリストが表示されることがあり、クリック率向上も期待

特にコンテンツ量の多いサイトでは、パンくずリストの設置はユーザビリティ向上とSEOの両面で効果的です。

内部リンクの最適化

内部リンクとは、自社サイト内のページ同士をつなぐリンクのことです。関連性の高いページ同士を適切にリンクで結びつけることで、以下のようなメリットがあります。

  • ユーザーの回遊性向上:関連情報へスムーズに移動でき、サイト全体の理解を促進
  • 検索エンジンのクロール促進:クローラーがサイト内の様々なページを発見しやすくなる
  • 重要なページの評価向上:多くの内部リンクが集まるページは、サイト内で重要度が高いと判断されやすい
  • アンカーテキストによる文脈伝達:リンクを設定する際のテキスト(アンカーテキスト)にキーワードを含めることで、リンク先のページ内容を検索エンジンに伝達可能

コンテンツ本文中に関連記事へのリンクを貼ったり、各ページのフッターに関連ページリストを表示したりするなど、戦略的に内部リンクを設計することが重要です。ただし、過剰な内部リンクや関連性の低いリンクは逆効果になる可能性もあるため注意が必要です。

3. ページ表示速度の最適化:待たせないおもてなし

ウェブサイトの表示速度は、ユーザー体験に直接影響を与える最も重要な要素の一つです。ページの読み込みが遅いと、ユーザーは待ちきれずに離脱してしまい、せっかくの訪問機会を逃すことになります。Googleもページ表示速度をランキング要因として採用しており(Core Web Vitalsの一部)、SEOにおいても無視できないポイントです。

デザインがいかに優れていても、表示が遅ければ台無しです。特に画像や動画、複雑な装飾などを多用するウェブサイトは、表示速度が遅くなりやすいため注意が必要です。

画像ファイルの最適化

ウェブページのデータ量の多くを占めるのが画像ファイルです。画像を最適化するだけでも、表示速度は大幅に改善される可能性があります。

  • 適切なファイル形式の選択:
    • 写真など色数の多い画像:JPEG形式(圧縮率を調整可能)
    • ロゴやイラストなど色数の少ない画像、透過が必要な画像:PNG形式
    • アニメーション:GIF形式(ただしファイルサイズが大きくなりがちなので注意)
    • 次世代フォーマット:WebP(ウェッピー)やAVIFは、画質を維持したままJPEGやPNGよりもファイルサイズを小さくできる場合が多い:対応ブラウザを確認の上、導入を検討
  • 画像圧縮:専用ツールやプラグインを使って、画質を損なわない範囲でファイルサイズを圧縮
  • 適切なサイズの指定:表示されるサイズよりもはるかに大きな元画像をそのまま読み込ませず、HTMLやCSSで指定する表示サイズに合わせて画像をリサイズ
  • 遅延読み込み(Lazy Loading):ページ表示時に画面内に見えていない画像を後から読み込む技術:初期表示速度を改善
CSS、JavaScriptの最適化

CSS(Cascading Style Sheets、カスケーディングスタイルシート)やJavaScript(ジャバスクリプト)は、ウェブサイトのデザインや動きを制御するために不可欠ですが、記述方法によってはページの読み込みを遅くする原因になります。

  • ファイルの圧縮(Minify):CSSやJavaScriptファイルから不要なスペース、改行、コメントなどを削除し、ファイルサイズを縮小
  • ファイルの結合:複数のCSSファイルやJavaScriptファイルを一つにまとめることで、サーバーへのリクエスト回数を削減
  • 不要なコードの削除:使われていないCSSルールやJavaScriptの関数などを削除
  • 読み込み位置の最適化:JavaScriptは<head>タグ内ではなく、<body>タグの閉じタグ直前に記述するか、defer属性やasync属性を利用して、ページのレンダリングを妨げないように読み込み

これらの最適化は専門的な知識が必要な場合もありますが、WordPressなどのCMSを利用している場合は、プラグインで比較的簡単に対応できることもあります。

サーバー応答時間の改善

ウェブサイトのファイルが置かれているサーバーの応答速度も、ページ表示速度に影響します。

  • ホスティングプランの見直し:アクセス数に対してサーバーのスペックが不足している場合は、より高性能なプランへの移行を検討:特に共用サーバーからVPSや専用サーバーへの移行など
  • サーバーの地理的位置:ターゲットユーザーが多くいる地域に近いサーバーを選ぶ(国内向けサイトなら国内サーバー)
  • CDN(コンテンツデリバリネットワーク)の活用:世界各地に分散されたサーバーにサイトのキャッシュ(コピー)を配置し、ユーザーに最も近いサーバーからコンテンツを配信することで表示を高速化
ブラウザキャッシュの活用

ブラウザキャッシュは、一度訪れたウェブサイトのデータ(画像、CSS、JavaScriptなど)をユーザーのパソコンやスマートフォンに一時的に保存しておく仕組みです。再度同じサイトを訪れた際に、保存されたデータを読み込むため、表示速度が速くなります。
サーバー側でキャッシュの有効期限などを適切に設定することで、この機能を有効活用できます。

これらの施策を複合的に行うことで、ページ表示速度は着実に改善されます。Googleが提供する「PageSpeed Insights」などのツールを使って、自社サイトの表示速度を定期的にチェックし、改善点を見つけることが重要です。

4. コンテンツの見やすさと可読性:伝わるデザイン

ウェブサイトの主役は、なんと言ってもコンテンツです。ユーザーは情報を求めてサイトを訪れます。その情報がどんなに価値のあるものであっても、読みにくければユーザーは内容を理解する前に離脱してしまうでしょう。コンテンツの見やすさ、可読性は、ユーザーに情報を正確に伝え、満足度を高める上で非常に重要であり、結果的に滞在時間の延長や直帰率の改善といったSEO効果にもつながります。

デザインにおいては、単に装飾するだけでなく、「いかにコンテンツを読みやすく、理解しやすくするか」という視点が不可欠です。

適切なフォント選び

フォントの種類やサイズ、行間などは、文章の読みやすさに直接影響します。

  • フォントサイズ:本文の文字サイズは、パソコンでは16px程度、モバイルでは14px〜16px程度を目安に:ターゲットユーザーの年齢層なども考慮して調整
  • フォントの種類:ゴシック体と明朝体では与える印象や読みやすさが異なる:サイトの雰囲気やターゲットに合わせて選ぶ:奇抜すぎるフォントは避け、読みやすい標準的なフォント(游ゴシック、メイリオ、ヒラギノ角ゴなど)を基本とする
  • 行間(line-height):行間が詰まりすぎていると読みにくく、空きすぎても間延びした印象になる:文字サイズの1.5〜2.0倍程度を目安に、適切に設定
  • 一行の文字数:一行あたりの文字数が多すぎると視線の移動が大きくなり読みにくい:一般的に40文字前後が見やすいとされる:適切なカラム幅を設定

Webフォントを使用するとデザイン性の高い表現が可能になりますが、読み込みに時間がかかる場合があるため、パフォーマンスとのバランスを考慮する必要があります。

見出し(<h3>, <h4>など)の適切な使用による階層化

長い文章を読む際、見出しは内容の区切りとなり、文章全体の構造を理解する手助けとなります。HTMLの見出しタグ(<h1>〜<h6>)を適切に使うことは、ユーザーにとっての読みやすさ向上だけでなく、検索エンジンにコンテンツの構造を正確に伝える上でも重要です。

  • 階層構造の明確化:<h1>(ページタイトル)、<h2>(大見出し)、<h3>(中見出し)のように、内容の重要度や親子関係に合わせてタグを使い分ける
  • 視覚的なメリハリ:見出しは本文よりも大きなフォントサイズにするなど、視覚的に区別できるようにデザイン
  • キーワードの活用:見出しに関連性の高いキーワードを自然な形で含めることで、SEO効果も期待できる(ただし、詰め込みすぎは避ける)

見出しを適切に設定することで、ユーザーは流し読みでもコンテンツの概要を把握しやすくなり、目的の情報を見つけやすくなります。

箇条書きなどを活用した情報の整理

文章が単調に続くと、ユーザーは読むのに疲れてしまいます。箇条書き(<ul>, <ol>タグ)、引用(<blockquote>タグ)、表(<table>タグ)などを効果的に活用することで、情報を整理し、視覚的な変化を与え、読者の理解を助けることができます。

  • 箇条書き:複数の項目を列挙する場合や、手順を示す場合に有効:情報を簡潔に整理
  • 引用:他の文献や発言などを引用する際に使用:本文と区別することで分かりやすさを向上
  • 表:数値データなどを比較・整理して示す場合に有効

これらの要素を適切に使い分けることで、単調になりがちなテキストコンテンツにリズムが生まれ、格段に読みやすくなります。

十分な余白(ホワイトスペース)の確保

余白(ホワイトスペース)は、単なる「空きスペース」ではありません。コンテンツやデザイン要素間の区切りとなり、視線を誘導し、情報を整理する上で重要な役割を果たします。

  • 要素のグルーピング:関連する要素同士を近づけ、関連性の低い要素との間に余白を設けることで、情報のまとまりを明確化
  • 視線の誘導:余白を効果的に使うことで、ユーザーの視線を重要な要素(CTAボタンなど)へ自然に誘導
  • 圧迫感の軽減:適度な余白は、ページ全体の圧迫感をなくし、ゆったりとした落ち着いた印象を与える:コンテンツへの集中を促進

情報を詰め込みすぎず、意識的に余白を設けることが、洗練された印象と読みやすさの両立につながります。

コントラスト比の確保(アクセシビリティ)

背景色と文字色のコントラスト(明暗差)が低いと、文字が非常に読みにくくなります。これは、視力の弱い方や高齢者だけでなく、一般のユーザーにとってもストレスの原因となります。ウェブアクセシビリティのガイドライン(WCAG)では、十分なコントラスト比を確保することが推奨されています。

  • 十分なコントラスト比:WCAGでは、通常のテキストで4.5:1以上、大きなテキスト(18pt以上または14pt以上の太字)で3:1以上のコントラスト比を推奨
  • ツールの活用:コントラスト比をチェックできるオンラインツールなどを活用し、基準を満たしているか確認

コントラストに配慮したデザインは、より多くのユーザーにとって利用しやすいサイトとなり、結果的にユーザー満足度の向上に貢献します。

5. 画像SEO:見られる画像、伝わる情報

ウェブサイトにおける画像は、テキストだけでは伝えきれない情報を視覚的に補い、ユーザーの理解を助け、サイト全体の魅力を高める重要な要素です。そして、画像はGoogle画像検索などからの流入経路にもなり得るため、SEOの観点からも最適化が欠かせません。

適切なファイル名の設定

画像をアップロードする際、デジタルカメラやスマートフォンで撮影したそのままのファイル名(例:IMG_001.jpg)になっていないでしょうか?ファイル名は、画像の内容を示す重要な手がかりとなります。

  • 具体的で分かりやすい名前:画像の内容を表す、具体的で分かりやすい英数字のファイル名にする(例:seo-friendly-web-design.jpg )
  • キーワードの活用:関連するキーワードをファイル名に含めることも有効(ただし、無理に詰め込まない)
  • ハイフンで単語を区切る:複数の単語をつなげる場合は、アンダースコア (_) ではなくハイフン (-) で区切るのが一般的
  • 日本語は避ける:サーバー環境によっては文字化けの原因になる可能性があるため、ファイル名は半角英数字を推奨
alt属性(代替テキスト)の重要性と設定方法

alt属性(代替テキスト)は、何らかの理由で画像が表示されなかった場合に、代わりに表示されるテキストです。また、視覚障がいのある方が利用するスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)が、画像の内容を理解するためにも使われます。検索エンジンもalt属性の情報を読み取り、画像の内容を把握します。

  • 画像の内容を正確に記述:その画像が何を表しているのかを、具体的かつ簡潔に記述
  • キーワードを自然に含める:関連キーワードを不自然にならない程度に含めることで、SEO効果が期待できる
  • 装飾目的の画像は空にする:ページの装飾やレイアウト調整のためだけに使われている画像(スペーサー画像など)には、alt属性は設定しない(alt=”” のように空にする)
  • 全ての画像に設定:意味を持つ全ての画像(<img>タグ)にalt属性を設定することが推奨される

例: <img src=”seo-friendly-web-design.jpg” alt=”SEOを意識したウェブデザインのポイントを示すイラスト”>

alt属性を適切に設定することは、アクセシビリティ向上と画像SEOの両面で非常に重要です。

画像キャプションの活用

キャプションは、画像の下などに表示される説明文のことです。alt属性が検索エンジンやスクリーンリーダー向けの情報であるのに対し、キャプションは主にサイト訪問者に向けて、画像の内容を補足説明する役割を果たします。

  • 補足情報の提供:画像だけでは伝わりにくい文脈や詳細情報を補完
  • エンゲージメント向上:興味深いキャプションは、ユーザーの関心を引きつけ、コンテンツへの理解を促進

全ての画像にキャプションが必要なわけではありませんが、グラフの説明や写真の状況説明など、補足が必要な場合に活用すると効果的です。

構造化データ(画像ライセンスなど)の活用検討

構造化データは、検索エンジンがページの内容をより深く理解できるように、特定の情報を標準化された形式でマークアップする手法です。画像に関しても、構造化データを用いることで、検索結果での表示をリッチにする(例:レシピサイトの画像に調理時間を表示するなど)効果が期待できます。

また、画像ライセンスに関する構造化データを使えば、Google画像検索結果でライセンス情報が表示されるようになり、画像の権利保護や適切な利用促進につながる可能性があります。必要に応じて導入を検討しましょう。

これらの画像SEOを意識したデザイン・実装を行うことで、画像検索からのアクセス流入増加や、コンテンツ全体のSEO評価向上に貢献できます。

6. UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上:満足度を高めるデザイン

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがウェブサイトを通じて得られる体験全体のことを指します。これには、使いやすさ(ユーザビリティ)はもちろん、見た目の美しさ、情報の分かりやすさ、目的達成のしやすさ、さらには利用時の感情的な満足度なども含まれます。

優れたUXを提供することは、ユーザーの満足度を高め、リピート訪問やコンバージョン(目標達成)につながるだけでなく、滞在時間や直帰率といった指標を通じて、間接的にSEO評価にも好影響を与えます。デザインは、このUXを大きく左右する要素です。

明確なCTA(Call to Action:行動喚起)ボタンのデザイン

CTAボタンは、ユーザーに取ってほしい行動(例:「お問い合わせ」「資料請求」「購入する」など)を促すための重要な要素です。デザインにおいては、ユーザーが一目でそれがボタンだと認識でき、クリックしたくなるように工夫する必要があります。

  • 目立つ色とデザイン:サイト全体の配色の中で埋もれず、適度に目立つ色を使用:ボタンらしい立体感や形状を持たせる
  • 分かりやすい文言(ラベル):ボタンをクリックすると何が起こるのかが明確に分かる、具体的で行動を促す言葉を選ぶ(例:「資料請求」ではなく「無料で資料請求する」)
  • 適切な配置:ユーザーが行動を起こしたいと思うであろう、コンテンツの流れに沿った適切な位置に配置:ページ下部だけでなく、必要に応じてページ上部や途中にも設置
  • 十分な大きさ:特にモバイルでは、タップしやすい十分な大きさを確保

効果的なCTAボタンは、ウェブサイトの目標達成率(コンバージョン率)を大きく向上させます。

フォームの最適化

お問い合わせフォームや資料請求フォームなどは、ユーザーとの重要な接点ですが、入力が面倒だったり、分かりにくかったりすると、ユーザーは途中で入力を諦めてしまいます(フォーム離脱)。フォームのデザインを最適化し、ユーザーの入力負担を軽減することが重要です。

  • 入力項目は最小限に:本当に必要な項目だけに絞り込み
  • 入力形式の分かりやすさ:プレースホルダー(入力例)を表示したり、必須項目を明確に示したりする
  • エラー表示の親切さ:入力エラーが発生した場合、どの項目がどのように間違っているのかを具体的に分かりやすく表示:エラー箇所まで自動でスクロールするなどの配慮も有効
  • モバイルでの入力しやすさ:電話番号ならテンキー、メールアドレスならメール用キーボードが自動で表示されるようにtype属性を適切に設定
  • プライバシーポリシーへの同意:チェックボックスなどで明確に同意を得るプロセスを設置

ストレスなく入力できるフォームは、コンバージョン率改善に直結します。

インタラクティブ要素の適切な使用

アニメーションやマウスオーバー時のエフェクトなどのインタラクティブな要素は、ユーザーの注意を引きつけ、サイトに楽しさや驚きを与えることができます。しかし、過度な使用は逆効果です。

  • 目的を持った使用:なぜその動きが必要なのか、ユーザー体験向上にどう貢献するのかを明確に:単なる装飾目的での多用は回避
  • パフォーマンスへの影響:複雑なアニメーションはページの表示速度を低下させる可能性があるため、軽快に動作するか十分に検証
  • ユーザー操作の妨げにならないか:意図しないタイミングでアニメーションが始まったり、コンテンツを読む邪魔になったりしないように配慮

適切に使用すればUX向上に貢献しますが、やりすぎは禁物です。

404エラーページのカスタマイズ

ユーザーが存在しないURLにアクセスした場合や、リンク切れなどでページが見つからない場合に表示されるのが404エラーページです。デフォルトの味気ないエラーページが表示されると、ユーザーはがっかりしてサイトを離れてしまう可能性が高まります。

  • サイトのデザインに合わせる:サイト全体のデザインと統一感を持たせ、エラーページであることが分かりやすく、かつ安心感を与えるデザインに
  • 親切なメッセージ:単に「ページが見つかりません」と表示するだけでなく、謝罪の言葉や原因の可能性(URLの打ち間違い、ページ移動など)を伝達
  • 他のページへの誘導:トップページへのリンク、サイト内検索フォーム、主要カテゴリへのリンクなどを設置し、ユーザーが他のページへ移動できるように案内

カスタム404ページを用意しておくことで、エラー発生時にもユーザーの離脱を防ぎ、サイト内にとどまってもらう機会を作ることができます。

これらのUX向上のためのデザインは、ユーザーに「このサイトは使いやすい」「また来たい」と思わせるための重要な施策です。ユーザー満足度の高いサイトは、結果として検索エンジンからも高く評価される傾向にあります。

7. 技術的なSEO要素とデザインの連携

SEOには、デザイン面だけでなく、HTMLの記述方法やサーバー設定など、技術的な側面も多く含まれます。これらの技術的要素の中にも、デザインと密接に関わるものが存在します。デザイナーやフロントエンドエンジニアがこれらの要素を理解し、適切に実装することで、よりSEO効果の高いウェブサイトを構築できます。

構造化データマークアップ(スキーママークアップ)とデザイン

構造化データは、検索エンジンがページの内容(例えば、それが商品情報なのか、イベント情報なのか、レシピなのかなど)をより正確に理解するためのマークアップ手法です。適切に実装することで、検索結果に「リッチリザルト」として付加情報(価格、評価、開催日時など)が表示される可能性があり、クリック率の向上が期待できます。

デザイン段階で、どのような情報を構造化データとしてマークアップするかを想定しておくことが重要です。例えば、商品ページであれば価格や在庫情報、レビュー評価などを、イベントページであれば日時や場所などを、デザイン要素として含め、それに対応する構造化データをHTMLに記述します。

  • マークアップ対象の選定:サイトのコンテンツに合わせて、有効な構造化データのタイプ(スキーマ)を選ぶ(例:Product, Event, Recipe, Article, LocalBusiness など)
  • 正確な情報記述:構造化データには、ページに表示されている内容と一致する正確な情報を記述
  • ツールの活用:Googleの「リッチリザルトテスト」ツールなどで、マークアップが正しく実装されているか確認
HTTPS化(常時SSL)の重要性

HTTPS(常時SSL)は、ウェブサイトとユーザーのブラウザ間の通信を暗号化する技術です。これにより、個人情報やログイン情報などのデータ漏洩を防ぎ、サイトのセキュリティを高めることができます。GoogleはHTTPS化をランキングシグナルとして使用しており、現在ではSEOの必須要件となっています。

デザイン制作の初期段階から、サイト全体をHTTPSで運用することを前提としておく必要があります。

  • SSLサーバー証明書の取得・設定:ホスティングサービスなどで適切なSSL証明書を取得し、サーバーに設定
  • HTTPからHTTPSへのリダイレクト:HTTPでアクセスがあった場合に、自動的にHTTPSのURLに転送されるように設定
  • 内部リンクやリソースのURL修正:サイト内のリンクや画像、CSS、JavaScriptなどの読み込みURLがHTTPのままになっている(混在コンテンツ)と、警告が表示されたり、正しく機能しなかったりするため、全てHTTPSに修正

ブラウザのアドレスバーに「保護されていない通信」といった警告が表示されるサイトは、ユーザーに不安を与え、信頼性を損なう可能性があります。

XMLサイトマップの生成と送信

XMLサイトマップは、サイト内にどのようなページが存在するかを検索エンジンに伝えるためのファイルです。特に、新しいサイトやページ数が多いサイト、内部リンクが少ないサイトなどでは、検索エンジンが効率的にページを発見・クロールするために役立ちます。

ウェブサイトのデザインや構造が確定したら、XMLサイトマップを生成し、Google Search Consoleなどを通じて検索エンジンに送信します。多くのCMSでは、プラグインなどで自動生成・更新する機能があります。

robots.txtの適切な設定

robots.txtは、検索エンジンのクローラーに対して、サイト内のどのファイルやディレクトリにアクセスを許可するか、または制限するかを指示するためのファイルです。

  • クロール不要なページの除外:会員専用ページ、検索結果ページ、パラメータ付きURLなど、検索結果に表示させる必要のないページへのクロールを制限し、重要なページへクロールを集中
  • CSSやJavaScriptファイルのクロール許可:以前はこれらのファイルをブロックすることも推奨されましたが、現在Googleはページをレンダリングするためにこれらのファイルにアクセスする必要があるため、ブロックしないように設定

誤った設定は、重要なページがインデックスされないなどの問題を引き起こす可能性があるため、慎重に設定する必要があります。

これらの技術的な要素は、デザイナーが直接実装する範囲を超える場合もありますが、ウェブサイト制作プロジェクト全体として、これらの要素が適切に扱われているかを確認し、必要に応じて開発者と連携することが、SEO効果を最大化する上で重要になります。

デザイン制作会社選びのポイント:SEOに強いパートナーを見つけるために

ここまで解説してきたように、SEO効果を高めるためには、デザインと技術の両面からのアプローチが不可欠です。自社内に専門知識を持つ人材がいない場合、外部のデザイン制作会社に依頼することを検討される中小零細企業様も多いかと思います。

しかし、単に見た目が美しいウェブサイトを作るだけの制作会社では、SEOの観点からは不十分かもしれません。ここでは、SEOを意識したウェブデザインを実現するために、どのような視点で制作会社を選べばよいかのポイントをご紹介します。(特定の会社を推奨するものではありません)

  • SEOの知識・実績があるか:
    • 制作実績の中に、SEOで成果を上げている事例の有無
    • モバイルファースト、ページ速度最適化、構造化データなど、最新のSEOトレンドを理解し、対応可能か
    • デザインだけでなく、SEOに関する具体的な提案の有無
  • デザインだけでなく、マーケティング視点を持っているか:
    • ターゲットユーザーは誰か、ウェブサイトで何を達成したいのか(KGI/KPI)といった、ビジネス目的の理解度
    • ユーザー行動を分析し、改善提案ができるか(アクセス解析の知識)
    • コンバージョンにつながる導線設計やCTAの提案能力
  • コミュニケーションが円滑か:
    • 専門用語ばかりでなく、分かりやすい言葉での説明力
    • 要望や疑問に対する傾聴姿勢と的確な回答
    • 報告・連絡・相談のスムーズさ
  • 制作後のサポート体制:
    • ウェブサイトは公開して終わりではなく、継続的な更新や改善が必要:公開後の保守・運用サポートの有無
    • アクセス状況レポートや改善提案など、効果測定と改善サイクルの支援
    • SEOアルゴリズム変動など、外部環境変化への対応サポート期待度

制作会社のウェブサイトや実績、担当者との打ち合わせを通じて、これらの点を確認することが重要です。単に価格だけで選ぶのではなく、自社のビジネス目標達成に向けて、長期的に協力していけるパートナーを見つけるという視点で選定することをおすすめします。

まとめ:ユーザーと検索エンジンに愛されるウェブサイトを目指して

本記事では、「SEOを意識したウェブデザイン」をテーマに、検索結果で上位表示されやすくなるためのデザイン上のポイントを解説してきました。

ウェブデザインとSEOは、もはや切り離して考えることのできない、密接に関連し合う要素です。検索エンジンがユーザー体験を重視するようになった今、ユーザーにとって見やすく、使いやすく、満足度の高いウェブサイトをデザインすることが、結果的にSEO評価の向上にもつながります。

モバイルファースト、サイト構造、ページ速度、可読性、画像SEO、UX向上、技術的要素との連携といったポイントを押さえたデザインは、ユーザーに快適な体験を提供し、サイトへの信頼感を高めます。そして、それは滞在時間の延長、直帰率の低下、コンバージョン率の向上といった具体的な成果となって現れ、検索エンジンからの評価を高める力となるのです。

もちろん、SEOはデザインだけで完結するものではなく、質の高いコンテンツ作成や適切なキーワード戦略、被リンク獲得など、様々な施策との組み合わせによって効果を発揮します。しかし、その土台となるウェブサイトのデザインがしっかりしていなければ、他の施策の効果も半減してしまう可能性があります。

ウェブサイトは一度作ったら終わりではありません。ユーザーのニーズや検索エンジンのアルゴリズムは常に変化しています。公開後もアクセス状況を分析し、ユーザーの声に耳を傾けながら、継続的にデザインやコンテンツを改善していくことが重要です。

もし、自社での対応が難しいと感じる場合や、より専門的な知見を取り入れたい場合は、SEOに強く、マーケティング視点を持ったデザイン制作会社に相談することも有効な手段です。

この記事が、中小零細企業の皆様にとって、ウェブサイトのデザインを見直し、ビジネスをさらに成長させるための一助となれば幸いです。ユーザーからも検索エンジンからも愛される、価値あるウェブサイトを目指していきましょう。


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