ブランディングって、ただロゴを作ったり色を決めるだけではないですよね。ブランドの「物語」をどうやって伝えるのか、その心をつかむ力が大切な要素だと考えます。

その中でも「ビジュアルストーリーテリング」は特別な役割を担っていると思います。言葉だけではなく、目で見て感じるデザインや画像が、人の感情にグッと響く瞬間ってあるのでは。

今回は、ブランディングにおけるビジュアルストーリーテリングの力を掘り下げてみます。

どのように活かすか、具体例も交えてお届けします。一緒にその魅力を探っていきましょう!

はじめに:ビジュアルストーリーテリングって何?

ビジュアルストーリーテリングは、簡単に言うと「ビジュアルで物語を語る」こと。写真、イラスト、動画、ロゴ、色使い、レイアウト、など、言葉を超えた要素でブランドのメッセージや価値観を伝えるアプローチです。
たとえば、Nike のスウッシュマークを見ただけで「挑戦」や「勝利」を思い描く人もいますし、Coca-Cola の赤白デザインは「楽しさ」や「共有」を連想する人がいます。
人は情報の80%を視覚情報から得ていると言われていますから、ブランディングにおいても視覚から得られる情報は大切な要素となるはずです。

1. ビジュアルストーリーテリングがブランディングに欠かせない理由

理由1:感情に直接訴える

人は感情で動く生き物。言葉で「私たちは信頼できる会社です」と言うより、すでに実績のある第三者からの推薦をはじめ、落ち着いた青系の配色によるロゴや実際にそこで働く人々の作業風景などの写真の方が「信頼」を感じさせる効果が高いと思われます。
心理学でも、視覚は感情処理の脳(扁桃体)に直結していると言われています。ビジュアルストーリーテリングは、感情のスイッチを入れる力があるのかもしれません。

  • 例)Patagonia のウェブサイト。壮大な自然の写真が「環境への愛」を語っているように感じます。言葉より先に直感的に心に届いているような気がします
理由2:記憶に残りやすい

文字情報よりビジュアルの方が脳に残る。例えば、Apple のシルバーのリンゴマークは、シンプルだけど一度見たら忘れないですよね。ビジュアルストーリーテリングは、ブランドを「覚えてもらう」ための強力なツール。くどい説明より、1枚の画像で印象づけられるかもしれません。

  • 数字で見る:人はテキストの10%しか覚えてないけど、画像なら65%を3日後も記憶してるとのこと(分子発生生物学者 Dr. John Medina)
理由3:言葉の壁を越える

グローバルなブランドなら特に大事。ビジュアルは言語を超えて伝わるから多様な人に届く。例えば、Starbucks のロゴは、言葉なしの「人魚セイレン」を世界中に伝えてます。ギリシャ神話で伝えられるセイレンのストーリーを視覚で語ると、国境を越えた共感が生まれるのかもしれません。

理由4:個性を際立たせる

競争の中で埋もれないためには「らしさ」が大事。ビジュアルストーリーテリングは、ブランドの個性や価値観をデザインで表現する手段です。たとえば、Red Bull のエネルギッシュな映像は「チャレンジャー、冒険と限界突破」を体現していて、他と明確に差がついてると感じます。

  • 例)Innocent Drinks のシンプルで可愛いイラストは「純粋で楽しい」雰囲気を伝えると思います

2. ビジュアルストーリーテリングがもたらすブランディングの効果

効果1:信頼感と親しみの構築

一貫したビジュアルが「このブランド知ってる」と安心感を与えてくれます。例えば、McDonald’s の黄金アーチは、どこで見かけても「気軽に入れる場所」と感じます。ストーリーを視覚で繰り返すことで、ユーザーの心に根付いているのだと思います。

  • 例)Dropbox の柔らかいイラスト群は、技術的なサービスに「親しみ」をプラス
効果2:行動を促す力

ビジュアルは、意識のあるなしにかかわらず感情を動かして購買やシェアにつながる効果があるのだと思います。例えば、Airbnb の温もりを感じさせる旅行写真は、「ここに行きたい!」と気持ちを掻き立ててくれる効果があるのかもしれません。ストーリーが明確だと、ユーザーが次の一歩を踏み出しやすくなるのでしょうか。

効果3:ブランドの一貫性を強化

ロゴからウェブ、広告までビジュアルが揃ってると、ブランドが「ブレない」印象に。Coca-Cola の赤白は、パッケージから CM まで一貫していて、どこで見ても「あっ、コーラだ」と分かります。一貫性が信頼と認知を生むのだと思います。

3. ビジュアルストーリーテリングをブランディングに活かす方法

それでは、ビジュアルストーリーテリングをブランディングにどうやって取り入れるのでしょうか。具体的なアイデアと実践法を挙げてみます。

3.1 ブランドの「核」をビジュアルに落とし込む
  • 価値観を定義:まず「このブランドは何を大切にしてる?」を考える。たとえば、「自由」「信頼」「楽しさ」等のキーワード
  • シンボル化:それを形に。例えば、「自由」なら鳥や風、「信頼」なら盾や木
  • 実践例:Patagonia は「自然保護」を山や川の写真で表現。ブランドの核がビジュアルにしっかり反映されている
3.2 色でストーリーを語る
  • 感情を操る:青は信頼、赤は情熱、緑は癒し。ブランドのトーンに合った色を選ぶ
  • 一貫性:メインカラーを決めて、ウェブやパッケージで統一。たとえば、Tiffany の青は「高級感と特別感」をどこでも伝える
  • 実践例:エコブランドなら、緑とアースカラーのグラデーションで「自然とのつながり」を感じます
3.3 画像や動画で物語を展開

リアルな瞬間:商品を使う人の写真や、裏側のストーリーを動画で。例えば、Warby Parker の「Warby Parker メガネの作り方」は親近感や安心感を抱きます。

  • 感情を映す:笑顔、涙、冒険──ユーザーが共感するシーンを切り取る
  • 実践例:GoPro のアクション映像は「挑戦と興奮」をそのまま視覚で伝えています
3.4 タイポグラフィで個性を
  • フォント選び:太いサンセリフで力強さ、筆記体で優雅さ。たとえば、Disney のロゴは遊び心と魔法を感じさせてくれます
  • レイアウト:文字の配置で動きや静けさを。ミニマルなら余白をたっぷり、ダイナミックなら斜めに
  • 実践例:アートギャラリーなら、細いフォントで「洗練」を、子供向けなら丸い文字で「楽しさ」を
3.5 ロゴでストーリーを凝縮
  • シンプルに意味を:Nike のスウッシュは「動きと勝利」を1本の線で。複雑すぎないのが大事
  • 隠し要素:FedEx の矢印みたいに、さりげなくストーリーを忍ばせる
  • 実践例:カフェならカップと湯気を組み合わせて「温かさとくつろぎ」を

4. ビジュアルストーリーテリングを実践するステップ

ステップ1:ブランドのストーリーを明確に

「何を伝えたいか」をチームや自分ではっきりさせる。「このブランドは〇〇を通じて〇〇を提供する」って一文に。

  • 例)「私たちは自然素材で日常に癒しを届ける」→ 緑と柔らかい雰囲気の写真で表現
ステップ2:ターゲットを理解

誰に届けるかでビジュアルが変わる。若い世代ならポップに、高齢者なら落ち着いたトーンに。

  • 例)学生向けならビビッドカラーと動きある動画で
ステップ3:ビジュアルガイドを作る

色、フォント、画像のテイストを決めた「スタイルガイド」を。ブレない軸があれば、ストーリーが散らからない。

  • 例)メイン青、サブグレー、サンセリフフォント、自然写真のみ
ステップ4:試して反応を見る

プロトタイプ(ウェブやポスター)を作って、ターゲットに「これどう思う?」と聞いてみる。感情に響くか確認。

  • 例)SNSでテスト投稿して、いいねやコメントで反応をチェック

5. 成功事例から学ぶ

事例1:Nike

「Just Do It」とスウッシュの組み合わせは、「挑戦」のストーリーをビジュアルで完璧に。CM の力強い映像も、その延長線上で一貫している。

事例2:Airbnb

旅行者のリアルな写真と「Belong Anywhere」のメッセージが、ビジュアルで「つながりと冒険」を伝える。

事例3:Patagonia

自然保護のストーリーを、壮大な風景写真とミニマルなデザインで。環境への愛が一目で分かる。

6. 課題と解決策

  • 課題:ビジュアルが強すぎてメッセージが埋もれる
  • 解決:シンプルさを保ち、1つのストーリーに絞る
  • 課題:予算や時間が足りない
  • 解決:無料素材(Unsplash 等)や簡単なツール(Canva 等)から始める

最後に:ビジュアルでブランドを生き生きと

ビジュアルストーリーテリングは、ブランディングで感情を動かし、記憶に残り、個性を際立たせる力。色や画像、ロゴ、などで物語を語れば、ユーザーの心にブランドが刻まれるかもしれません。次にブランディングを考えるときには、この力を意識してみてください。


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