本質を見つけよう
レイアウトデザインは、グラフィックデザインの基本的なスキルであり、文章や図版類が主要なデザイン要素となるデザインにおいて重要な役割を果たします。
レイアウトデザインに関する書籍や講座は数多くありますが、その多くは、レイアウトソフトの技巧的な使い方を説明したのもや既存レイアウトのパターンについて数十種類の事例を通して感覚的な印象を解説するものであり、実践的にレイアウトを組み立てるノウハウを体系的に学べるものは少ないような気がします。
なぜ「実践的レイアウトデザイン」があまり語られてこなかったのでしょうか。その理由は、大きく分けて2つあると思っています。
1つは、アーティストや感覚派と呼ばれる天才肌のデザイナーが、感性や感覚の鋭さから後付けの理論をかざす必要がなかったためです。彼らは、感覚や直感でレイアウトを組み立てることができ、理論化する必要がなかったのでしょう。また、売れっ子で時間がなく、伝承どころではなかったのかもしれません。
もう1つは、論理的に自身のデザインスタイルを築いてきたデザイナーが、商売敵のデザイナーや広告代理店にわざわざ手の内を見せるまでもなく、墓まで自身の胸に仕舞い込んでいたためです。彼らは、自身のデザインスタイルを競合他社に知られることを避け、秘伝として守りたかったのかもしれません。
また、多くのデザイン学校やデザインの現場でも、「実践的レイアウトデザイン」の具体的な方法論の核心は見出せないまま、感性や感覚といった言葉の陰に追いやられたテーマにならざるを得なかったのではないでしょうか。
感性や感覚は、確かにレイアウトデザインにおいて重要な要素ですが、天性の才能を持ち合わせていない人々にとって、感性や感覚を磨くためには、まずは基本的な原理原則やレイアウト手法を身につけることが大切です。
実践的レイアウトデザイン
では、「実践的レイアウトデザイン」の核心とは、一体どのようなものなのでしょうか。それは、以下の3つの要素に集約されると考えられます。
情報の整理
レイアウトデザインの第一歩は、情報の整理です。伝えたい内容を明確にし、その内容を効果的に伝えるために必要な情報を整理します。情報の整理ができていないと、情報の重要度に応じた階層化や表現パターンが確立しないままの構成となり、レイアウトが雑になり、伝えたい内容が伝わりにくくなります。
視線誘導
視線誘導とは、ユーザーの視線を意図した方向に導くことです。レイアウトデザインにおいては、視線誘導によってユーザーの注意を引き、伝えたい内容を強調したり、階層化することができます。視線誘導には、レイアウトの構成や配色、フォントなど、さまざまな要素を組み合わせて効果的に行う必要があります。
テンションとバランス
デザイン要素同士のテンションとバランスとは、各種デザイン要素がレイアウト上でお互いの緊張感を保持して調和している状態のことです。レイアウトするうえで、デザイン要素がバランスよく配置されていないと、情報の重要度や階層化が崩れ、レイアウトが不安定になり、見づらくなってしまいます。バランスをとるためには、デザイン要素のサイズや色、配置など、さまざまな要素を検討する必要があります。
これらの要素を組み合わせることで、効果的なレイアウトデザインを実現することができます。
具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 情報の整理整頓
- 伝えたい内容を明確にする
- ターゲットユーザーを明確にする
- 情報の優先順位をつける
- 視線誘導
- レイアウトの構成を工夫する
- 配色を効果的に使う
- フォントを効果的に使う
- デザイン要素同士のテンションとバランス
- 要素のサイズを調整する
- 要素の色を調整する
- 要素の配置を調整する
優れたデザインを手本に
また、実践的なレイアウト・デザインを身につけるためには、さまざまなデザインを観察・分析することも大切です。優れたデザインには、必ず共通する要素があります。それらの要素を分析することで、自身のデザインスキルを向上させることができます。
近年では、動画解説やSNSの普及により、誰でも簡単にデザイン制作に取り組める環境が整ってきています。一方で、感性や感覚だけでデザイン制作に取り組むのは、天性の才能の持ち主以外の人々には限界があります。
基本的な原則や手法、そして実践的なノウハウを身につけることで、より効果的なデザインを制作できるようになるでしょう。